ナノセルロースニュース2023年3月

目次

ワシントン州立大学の学生がコンブチャからハンドバックを作る(2023年3月27日)

ワシントン州立大学(WSU)の大学院生が、コンブチャで成長するフィルムからバッグを作りました。これはバクテリアナノセルロース(BNC)を使用して皮革の持続可能な代替品を開発した研究です。

ワシントン州立大学のメディア、WSUインサイダーに3月22日に掲載された記事によりますと、WSUの大学院生Rowena Gonzalez は、コンブチャで成長する発酵フィルムからバッグを作りました。

アパレル業界は世界で2番目に大きな水質汚染源です。これを持続可能な業界にするために、WSU のアパレル・マーチャンダイジング・デザイン・テキスタイル (AMDT) 部門では、コンブチャがつくるフィルムに着目しました。

コンブチャを無菌環境で約 4 週間発酵させ、厚い表面フィルムを確実に発達させます。次に出来上がったフィルムをすくい取り、乾燥しました。さらにゼラチン状のセルロースの塊を処理するため、フィルムを木製プレスに入れてできるだけ多くの水分を絞り出し、さらに 1 週間乾燥させました。そして素材の表面にグリセリンを塗布して柔らかくしなやかに保ち、革のような製品を生み出し、最終的に魅力的なバッグになりました.

完成品は革のバッグによく似ていますが、欠点があります。水にさらされると、膨張したり、元の状態に戻ったりする可能性があります。現在、さまざまなコンブチャをテストし、材料が濡れるのを防ぐことができるコーティングを模索しています。

詳細はWSUのウェブサイトをご覧ください。

スウェーデンのチャルマース工科大学、CNCで染料廃水の汚染物質を除去(2023年3月24日)

スウェーデンのチャルマース工科大学(Chalmers University of Technology)の研究者は、繊維染料などの汚染物質から水を浄化するために、セルロースナノクリスタル(CNC)をベースにした粉末状の新しいバイオベースの材料を開発しました。汚染された水がCNC粉末を含むフィルターを通過すると、汚染物質が吸収され、処理システムに入る太陽光によって汚染物質が迅速かつ効率的に分解されます。実験室でのテストでは、染料汚染物質の少なくとも80%が新しい方法と材料で除去されることが示されています。

3月22日から24日かけて、ヨーロッパの複数の科学技術サイトが伝えたところによると、スウェーデンのチャルマーズ工科大学の研究者は、セルロースベースの材料を使用して、汚染された水を簡単に浄化できる新しい方法を開発しました。この発見は、水処理技術が不十分な国に影響を与え、繊維産業からの有毒な染料の排出という広範な問題に対処する可能性があります.

きれいな水は私たちの健康と生活環境の前提条件ですが、すべての人に与えられるわけではありません。世界保健機関 (WHO) によると、現在 20 億人を超える人々が、きれいな水へのアクセスが制限されているか、まったく利用できない状態で生活しています。

同大学の有機化学の准教授である Gunnar Westman が率いる研究チームは、セルロースと木材ベースの製品の新しい用途にの研究を進めるWallenberg Wood Science Center の一部です。

論文誌 Industrial & Engineering Chemistry Researchに最近掲載された研究で、研究者たちは開発した方法と材料を使用して、廃水から有毒な染料をろ過する方法を示しています。この研究は、インドのマラヴィヤ国立技術研究所ジャイプールと共同で実施されました。ジャイプールでは、繊維産業の廃水中の染料汚染物質が広範囲に及ぶ問題になっています。

この処理は圧力も熱も必要とせず、プロセスを触媒するために太陽光を使用します。Gunnar Westman は、この方法を米粒の入ったグラスにラズベリージュースを注ぐことになぞらえ、米粒がジュースを吸収して水を再び透明にすると言います。

この方法はインドで実証される予定で、現在、準備が進められているようです。

またこの方法は、染料以外の水汚染物質の処理にも使えることがわかっています。研究チームは、鉱業、皮革、金属産業からの廃水で一般的な有毒な六価クロムの汚染物質が、同様のタイプのセルロースベースの材料でうまく除去できることを示しました. このグループはまた、研究分野が残留抗生物質の精製にどのように貢献できるかを探っています。

なお研究の詳細は、Industrial & Engineering Chemistry Researchという論文誌に掲載された ”Cellulose Nanocrystals Derived from Microcrystalline Cellulose for Selective Removal of Janus Green Azo Dye” という論文をご覧ください。

日本製紙パピリアと静岡新聞SBS公認Vtuberがハンドクリームを共同開発(2023年3月24日)

日本製紙パピリアと静岡新聞SBS公認Vtuber 木乃華サクヤが、日本製紙パピリアが展開するBIOFEAT.シリーズのスピンオフ商品「Kekkoi(けっこい)ハンドクリーム」を共同開発し、3月22日から日本製紙パピリアのECサイトで発売を開始しました。

3月22日付の日本製紙パピリアのニュースリリースによりますと、商品名はBIOFEAT.(バイオフィート)Kekkoiハンドクリームで、価格は30gで1,500円(税込)とのことです。べたつかないさらっとしたうるおい感が特長で、柚子の香りです。なお「こっこい」とは、静岡弁で綺麗、可愛いという意味なのだそうです。

なお静岡新聞/SBS(静岡放送)が関わっていることもあり、3月23日付けのあなたの静岡新聞(静岡新聞電子版)には、紹介記事が掲載されています。こちらには、植物由来で高い保水力が特長のセルロースナノファイバー(CNF)を含有し、べたつかず潤い感を維持できる。肌を白く見せるメーキャップ効果も期待でき、香料にユズの天然精油を使用した、との記載があります。

ナノセルロース・ドットコム コメント

メーカーのニュースリリースでは、CNFを含有していることには一切触れていませんが、静岡新聞の記事にはCNFが使われていることがわざわざ書かれています。メーカーよりも静岡新聞の方が、CNFが使われていること、強調したいということなのでしょうか。

静岡県富士工業技術支援センター、射出成型機を導入(2023年3月22日)

静岡県工業技術研究所に属する富士工業技術センターでは、セルロースナノファイバー(CNF)利用製品の開発を進める地域企業を支援していますが、CNFと混合した樹脂の成型品をつくるための装置として、射出成型機を導入したことが、静岡新聞で報道されました。

3月21日に公開されたあなたの静岡新聞(同紙電子版)によりますと、静岡県はCNFを用いた製品開発支援の一環で、県富士工業技術支援センターに射出成形機1台を整備し、CNF混合樹脂の強度や射出成形に適した温度などを確かめる実験用機材として企業に貸し出すことになったとのことです。射出成型機はシリンダーに原料を投入して熱で溶かし、金型に流し込んで成形するもので、0~400℃まで微妙な温度調節が可能です。試作用に「ダンベル型」や「短冊型」など三つの金型を用意し、CNFと樹脂の配合割合や射出圧力などを変えながら、用途に見合った製法を研究開発するのに役立てるそうです。

掲載された写真によると、射出成型機は芝浦機械(静岡県沼津市、旧東芝機械)製のようです。

詳細はあなたの静岡新聞の記事をお読みください。

バクテリアナノセルロースが人気の素材である理由(2023年3月20日)

インドのメディアに、バクテリアナノセルロース(BNC)の解説記事が掲載されていました。現状と今後の展望についてよくまとまっているので、紹介します。なお原文ではBacterial Cellulose(BC)と記載されていますが、他の記事に合わせてBacterial Nanocellulose(BNC)に変更しています。また理解しやすくするために、意訳しています。原文へのリンクは、記事の最後に記載しています。

セルロースというと一般的には植物由来の繊維を連想しますが、セルロースはバクテリアによって生産することができます。植物由来のセルロースはどこにでもありますが、リグニン、ワックス、ヘミセルロースが混入するという問題があります。これに対してバクテリアが生産するBNCはリグニンやワックスなどの不純物を含まず、保水力や強度があります。革のような外観と特性を持つ BNCは、世界中で人気を集めています。

BNCは何十年も前から知られていましたが、優れた機能性と外観を備え、動物に害を与えずに作られた素材を求めているため、BNCに関する研究はここ数年で活発化しています。

BNCは鞄などを作る際に、皮革の代替品であるビーガンレザーとして使うことができます。ビーガンレザーは欧米で人気で、ドイツのScobyTec とブラジルのIntervém Design は、BNCを使っ製品を製造しています。

BNCは、バイオメディカル分野でも使われています。BNCは、アルギン酸ナトリウム、キトサン、ポリエチレングリコール、ゼラチンなどのゲル化材料とともに、抗生物質などの生物活性化合物の担体としても使えます。またBNCは創傷被覆材の材料としても有望です。WHO によると、術後の手術部位感染症は、低所得国および中所得国の患者の 11% に影響を与えています。BNC および BNC 由来の材料は、純粋で環境に安全な機能性材料の開発に不可欠です。

現在のところ、BNCの生産コストは、商業的に採用されるにあたっての障害となっています。コストを下げる方法の 1 つは、収量を増やすことで、生産性の高いバクテリアの株を特定することを意味します。BNCを生成するために最もよく使用される細菌は、Komagataeibacter とよばれる菌です。
The National Research Centre, EgyptのSaleh博士の研究チームは、Lactiplantibacillus plantarum と呼ばれる生産性の高い株を腐った果実から分離しています。

今後期待される新たな適用分野は、人工生体材料です。BNCは細菌の培養で生成されるため、細菌を操作することによって望ましい特性を付与することが可能です。研究は現在、酢酸菌と共培養できる酵母などの他の生物の遺伝子操作に焦点を当てています。ロンドンのインペリアル・カレッジの科学者たちは、Komagataeibacter rhaeticus の遺伝子操作に成功しました。

黒色染料は、世界で最も消費されている染料の一つであり、持続可能な染色方法を使用して再現するのが最も難しい染料のです。科学者たちは、暗いメラニン色素であるユーメラニンをKomagataeibacter rhaeticus で生合成する実験を行ってきました。実験は成功したようです。このようにBNCは今後、工業製品として成長する可能性があります。

原文はこちらからご覧ください。

針葉樹由来のナノセルロースから人工軟骨を作る研究(2023年3月20日)

英国のスウォンジー大学では、針葉樹パルプ由来のナノセルロースとヒアルロン酸から成る成分を3Dプリントすることで、人工的に鼻を作る研究に取り組んでいることが、英大手メディア デイリーメール電子版に掲載されました。

3月19日に掲載された内容は次の通りです。

事故や癌で鼻を失った人々の鼻を再生するために、現在は患者の肋骨から軟骨を取り出し、新しい鼻の上部構造を作成するために使います。そのためには最大 3 つの下部肋骨の取り出すという、複雑な操作が必要です。しかししかし肋骨の軟骨は自然な鼻を構成する軟骨よりも柔軟性が低くもろいことから、必ずしもうまくいきませんでした。

この問題を解決するために、英国のスウォンジー大学の専門家は、患者の顔に合わせて必要な正確な形状を得るために 3D プリントできる人工軟骨を作成しました。これはナノセルロースハイドロゲルとヒアルロン酸で構成されています。ナノセルロースハイドロゲルは、針葉樹パルプが原料です。また多くのスキンクリームやフェイシャルフィラーに含まれるヒアルロン酸は、バクテリアから生成されます。どちらもビーガンです。生物学的触媒が混合物に加えられるため、3D プリント後にエポキシ樹脂とほぼ同じ方法で硬化します。

得られた軟骨は、天然の軟骨の10 倍の柔軟性があり、患者の顔にフィットするために必要な正確な形状を得るために 3D プリントすることができます。

しかしこれは最終製品ではありません。今後は、患者自身の軟骨細胞を採取して実験室で増殖させ、人工軟骨に定着させてから移植することが考えられています。この技術は、損傷した耳を再建するためにも使用できます。

詳細はデイリーメールの記事をご覧ください。

パナソニック、セルロースファイバー成形材料のサンプル販売開始(2023年3月17日)

パナソニックプロダクションエンジニアリングは、植物由来のセルロースファイバーを70%の高濃度で樹脂(ポリプロピレン)複合した成形材料 kinari70 のサンプル販売を4月から行うことを発表しました。

パナソニックのプレスリリース(3月16日付)によりますと、パナソニックプロダクションエンジニアリング株式会社は、パナソニックホールディングス株式会社マニュファクチャリングイノベーション本部が開発した、植物由来のセルロースファイバーを70%の高濃度で樹脂(ポリプロピレン)と複合した成形材料kinari70(形状はペレット)のサンプル販売を2023年4月より開始します。

パナソニックでは、天然由来のセルロースファイバーを活用した材料開発を行い、2019年にはセルロースファイバーを55%以上樹脂に混ぜ込む加工技術により、褐色化しやすいセルロースファイバーを白色材料として複合することに成功し、さらに2021年2月にはセルロースファイバーを70%の高濃度で樹脂に混ぜ込んだ成形材料の開発に成功しています。

セルロースファイバーを55%複合した成形材料(製品名:kinari55-PP)は、2022年12月より量産販売を開始していましたが、これに続いて、セルロースファイバーを70%複合した多くの成形材料についても、サンプル販売を開始するものです。

高濃度セルロースファイバー成形材料の特長である高強度とデザイン性を活かし、家電筐体や車載部品、並びにハウジング内装部材、また衣料品や日用品、食品容器など様々な業界に対し、環境への貢献と新たな商品価値の創出を両立する展開を進めていくとのことです。

詳細は、同社のプレスリリースをご覧ください。

ナノセルロース・ドットコム コメント

プレスリリースでは触れられていませんが、この材料は、セルロースナノファイバー(CNF)をプラスチックに混ぜた複合材料を開発し、家電製品に適用するための環境省の委託業務(平成27年度~平成29年度 セルロースナノファイバー製品製造工程におけるCO2排出削減に関する技術開発)で得られた成果を活用したものです。
結局、CNFを使った複合材料は実用化せず、CNFよりも繊維径が太く、製造コストが低いセルロースファイバーを使った成形材料が実用化されました。海外でもセルロースとプラスチックの複合材料を開発・実用化する動きはありますが、CNFではなくセルロースファイバーを使っているケースが多いので、その流れに沿ったものです。またこの材料は半分以上がセルロースからできているため、廃棄する際に、プラスチックごみではなく、紙ごみとして廃棄できるというメリットもあります。

関連記事

セルロースナノファイバーを玄々化学工業が木材用塗料に配合(2020.7.31) 木材用塗料メーカーの玄々化学工業株式会社は、セルロースナノファイバー(CNF)を塗料に配合させる技術を確立し、今後、市場展開を図るという情報が、株式会社コーテ[…]

CNFを靴底に使ったスニーカーの新モデル発売(2023年3月17日)

株式会社スピングルカンパニーは、アメリカで廃棄予定だったユーズドデニムを一度解体、洗浄し、パッチワークにしたアップサイクル素材をアッパーに使用したサステイナブルなスニーカー4品番を、3月25日から発売することを発表しました。このスニーカーには、セルロースナノファイバー(CNF)をゴムに練りこむことで、摩耗性が40%低減したアウトソール(靴底)が採用されています。

同社が3月16日にプレスリリース配信サービスPR TIMESで発表した内容になりますと、この商品はアメリカで廃棄予定のユーズドデニムを日本国内で洗浄、分解、パッチワークしたアップサイクル素材をアッパーに採用し、色褪せやアタリ、汚れやほつれなど、新品にはない風合いを出しています。
またCNFをアウトソールのゴムに練り込んだ、サステイナブルな「RUBEAR CNFソール」を採用しています。その結果、従来の「SPINGLE MOVE」のアウトソールと比べて摩耗性を約40%低減しています。
メーカー希望小売価格は23,100円(税込み)です。

詳しくはPR Timeの記事をご覧ください。

ハンガリーでバクテリアナノセルロースから合成皮革製品の製造(2023年3月17日)

ハンガリーで2020年に設立されたSmobya は、コンブチャから発生する廃棄物からビーガンレザーの代替品を製造しています。細菌が合成するバクテリアナノセルロース(BNC)が原料です。

ヨーロッパの科学技術情報サイト LABIOTECH.eu に、7 biotechs in Hungary you should know about(知っておくべきハンガリーのバイオ企業7社)という記事が3月15日に掲載されました。その7社の一つとして、これから説明するSmobyaが紹介されています。

2020 年に設立されたSmobya (スモビア)、ハンガリーを拠点とするバイオテクノロジーの新興企業であり、斬新な方法でビーガンレザーの代替品を開発することで、ファッション業界に革命を起こすことを目指しています。この企業では、特定の菌株の発酵によって生産されるセルロースから作られたバイオベースの素材である Smoby を作成しました。

Smoby は石油製品を一切使用せず、完全にバイオで組み立てられています。丈夫で耐久性のある合成皮革製品は、持続可能な衣料品業界に波及効果をもたらす可能性があります。特に、企業がエストニアでリモートで事業を行うことを可能にする e-residency プログラムの一環として、新興企業がエストニアのバイオテクノロジーシーンに足を踏み入れています。

現在、Smobya は、人気のあるプロバイオティクスが豊富な飲み物であるコンブチャから発生する廃棄物から製品を開発しています。革の魅力を持ちながら環境への悪影響を伴わない素材は、お茶の表面で増殖するバクテリアのナノセルロースから作られています。

詳細は LABIOTECH.eu の記事をご覧ください。

インド工科大学、バガス由来のCNCからセンサー材料となる素材を開発(2023年3月15日)

IIT Roorkee(インド工科大学Roorkee校)のPradip K Maji教授の研究チームは、サトウキビ由来の農業廃棄物であるバガスから、セルロースナノクリスタル(CNC)を作り、これを透明なフィルムにしました。このフィルムは構造色ベースの刺激応答センサーとして使えるほか、インテリジェントなパッケージングにも影響を与えます。

インドの科学情報サイトIndia Education Diary.com が3月14日に掲載した記事によりますと、研究チームではサトウキビから作ったバガスを酸加水分解し、CNCを得ました。得られたCNC懸濁液には毒性はなく、原料は容易に入手可能です。そしてCNC懸濁液は驚くべき複屈折特性を示す液晶材料として機能するように濃縮され、乾燥されます。

こうして得られたフィルムは、構造色ベースの刺激応答センサーであり、インテリジェントなパッケージングに使うことができます。
積層フィルムの色は、特定の色の可視光と選択的に相互作用する特定の分子の自己組織化であるキラルネマティック液晶に由来します。これらのセンシングチップは、特定の刺激に対して反射色の劇的な変化を示します。
さらにこのフィルムは、大腸菌に対して中程度の抗菌活性を備えたおり、良好な視覚的色感知特性を示すとのことです。

詳細はIndia Education Diary.comの記事をご覧ください。

TAPPI Nano 2023のプログラムが公開、日本人の発表がゼロに(2023年3月13日)

世界最大規模のナノセルロース関連の国際会議2023 International Conference on Nanotechnology for Renewable Materials (TAPPI Nano)が、6月12日~16日にカナダのバンクーバーで開催されます。この会議は米国の紙パルプ技術協会(TAPPI)の主催で2006年から開催されており、今回で17回目となります(2021年はCovid-19のために中止)。
先日公開されたプログラムを見たところ、日本人による講演・口頭発表はゼロでした。ポスター発表は主に学生が対象なので、日本人による研究報告・技術報告は実質なくなってしまいました。

なお、技術分野別、国別、組織別にプログラムを分析し、別の記事にまとめていますので、ご覧ください。

関連記事

世界最大規模のナノセルロース関連の国際会議 2023 International Conference on Nanotechnology for Renewable Materials (TAPPI Nano)が、6月12日~16日にカナ[…]

ナノセルロース・ドットコム コメント

2019年には、日本のナノセルロースブームを背景に、アジアで初めてこの国際会議が開催され、日本人による講演・発表件数が、史上最多となりました。また会議の参加費が1人約10万円と高額にもかかわらず、日本人の参加者が多かったため、会議史上最多の参加者数を記録しました。その後、Covid-19の影響があったとはいえ、たった4年後に日本人の発表件数がゼロになるとは、まったく予想していませんでした。日本での会議開催に関わった者として、残念であり、驚きです。この国際会議は欧米が主導権を握るコミュニティですが、そこに全くコミットせずに、外国との競争に勝てるのでしょうか。ちなみに、中国、韓国からは数件ずつ、発表があります。

丸住製紙のCNFに抗菌性があることを北見工大との共同研究で確認(2023年3月10日)

丸住製紙と北見工業大学は、丸住製紙が独自の化学変性技術を用いて開発したセルロースナノファイバー(CNF)(商品名:ステラファイン®)に抗菌性があることを、3月9日に発表しました。

プレスリリースの内容によると、ステラファイン水分散体・乾燥体のサンプルを用い、CNF 濃度下限は1%で寒天培地を用いた抗菌試験を実施したところ、ステラファイン乾燥体を乗せた箇所には菌が繁殖しなかったというものです。

詳細は同社のプレスリリースをご覧ください。

ナノセルロース・ドットコム コメント

抗菌性を確かめた方法と結果については、上記の内容しか書かれおらず、どのような菌に対して、どのような条件の下で抗菌性があるのか、CNFの乾燥体を乗せた場所だけ、なぜ菌が生えなかったのかなど、よくわかりません。同社としては、知財化をふまえて、情報を開示しなかったのかもしれません。同社のCNFはセルロース繊維の表面をスルホン化することによって解繊しているので、CNF表面のスルホ基(-SO3H)が原因で、菌の増殖が抑えられた可能性があります。

ナノセルロースを使ったくもり止めクロスが日本でも発売に(2023年3月9日)

丹波貿易株式会社は、ナノセルロースを使ったくもり止めクロスを中国から輸入し販売することを、発表しました。

プレスリリース・ニュースリリース配信サービスのPR TIMESが3月8日に配信した内容によりますと、1回拭くだけで48時間曇り防止効果があり、繰り返し使用することができるメガネ用・車用くもり止めクロスを、同社が応援購入サービスサイトMakuakeで同日から先行販売するとのことです。

防曇布はナノセルロースなどの防曇成分を含む乾燥布で、材質が柔らかく、拭く時にレンズに傷がつきにくく、強力な防曇効果があります。使用方法は、メガネ用の場合、最初にレンズ面の汚れを拭き取り、次に息でレンズを曇らして、曇りが消える前に曇り止めクロスで拭きます。これでレンズの内側と外側に曇り止めのコーティングが施されます。1回サッと拭くだけで48時間以上防曇効果が持続し、クロスは500回以上繰り返し可能です。

製造は、中国浙江省のZhejiang Yuewei Advanced Materials Co.,Ltdです。詳細はPR TIMESの記事をご覧ください。

ナノセルロース・ドットコム コメント

プレスリリースにはナノセルースと記載されていますが、Zhejiang Yuewei Advanced Materials Co.,Ltdが製造しているのは、セルロースナノクリスタル(CNC)を使ったくもり止めです。
この製品はもともと、アメリカのマサチューセッツ大学の大学院生であったYinyong Liらが開発・製品化し、TREATY LLCからFogKickerという商品名で販売されました。商品は液体で、少量をガラス面などにスプレーしたのち、柔らかい布で拭くことで全体に塗布します。
その後、中国へ戻ったYinyong Liらが設立したのが、Zhejiang Yuewei Advanced Materials です。今回、中国から輸入・販売される商品は、あらかじめ布に塗布しているので、液状のものと比べて、効果に差があるのかないのか、わかりません。
Yinyong Li らの帰国後、TREATY LLCは製造販売を中止していたようですが、現在はKyttarinic Technologiesという企業がFogKickerの製造・販売を続けているようです。なお、開発当初のFogkickerには、カナダのCelluForceが製造したCNCが使われていました。

CNFとナノオイルを組み合わせた保湿成分が入ったヘアミストを開発(2022年3月7日)

株式会社MARVELOUS、日本製紙株式会社、株式会社アピッシュの3社は、MARVELOUSの発酵ナノオイルと、日本製紙のセルロースナノファイバー(CNF)を組み合わせた保湿成分を配合したヘアミストを共同開発し、株式会社アピッシュが販売することを発表しました。

日本製紙の同日付のニュースリリースによりますと、本商品に使用された保湿成分はキューティクルコルセットという名前で、MARVELOUSの特許技術である発酵ナノオイルを原料として、日本製紙のCNFセレンピア®を組み合わせて2022年に開発されたものです。発酵ナノオイルにより栄養分と水分を閉じ込めた密度の高い髪に導く効果があり、CNFを使用することで保湿性が向上し、髪の毛の静電気量の低下が確認されています。

このヘアミストを使うことで、カラーやパーマでダメージを受けたキューティクルを補修し、髪の毛の根元から毛先までハリを与えシルクのようなツヤめく髪になります。またドライヤーやヘアアイロンの熱により毛髪成分と結合し、相性も大変良いものとなっています。さらにホームケアのトリートメント前に使うことで、トリートメントの浸透を助けます。ヘアオイルやヘアミルクとの相性も良好になるとのことです。

ココロガミ ボタニカル ヘアミストという商品名のヘアミストは、3月10日からアピッシュの店頭やECサイトで、150ml入り、1本2,640円(税込み)で販売されるそうです。

詳細は日本製紙のニュースリリースをご覧ください。

ナノセルロース・ドットコム コメント

ニュースリリースには、使用されるCNFの種類について書かれていませんが、化粧品の成分表示に「セルロースガム(保湿剤)」と記載されることから、カルボキシメチル化CNF(CM化CNF)と推測されます。

韓国企業、ベトナムでナノセルロースの生産に向けた研究協力に調印(2023年3月1日)

韓国企業NATURE AND PEOPLE & Cellufab社とベトナムの公的機関・企業は、ベトナム東北部のTuyen Quang(トゥエンクアン)で、ナノセルロースの生産技術の研究協力の覚書に調印しました。まずは今年9月まで、ナノセルロースの現地生産の可能性について検討が行われます。

Vetnum plusほか、複数のベトナムのメディアの報道によると、ベトナムのTuyen Quang Investment Promotion Centre(トゥエンクアン州投資促進センター)、Woodland Vietnam Joint Stock Company、Thanh Hung Investment and Construction Companyと、韓国のNATURE AND PEOPLE & Cellufabは、2月28日に、ベトナムの山岳地帯に位置するTuyen Quang(トゥエンクアン州の州都)において、ナノセルロースの生産技術の研究協力の覚書に調印しました。

この地域には原材料が豊富であり、ナノセルロースを生産することで地域の経済発展と、雇用創出に貢献する可能性があります。

トゥエンクアン州投資促進センターが中心となって進められる研究プロジェクトの第 1 段階は2023 年 9 月下旬までに完了する予定です。第1段階が成功裏に完了したのちに、現地にナノセルロース工場が建設されることになります。

CNFメーカーFiberleanが新しいWebsiteを開設(2023年3月1日)

英国に拠点を置くMicro-fibrillated cellulose(MCF:微小繊維化セルロース)のメーカーFiberlean Technologiesは、2月24日に新しいWebsiteを開設したことを発表しました。MFCはパルプを原料として機械解繊で製造されており、セルロースナノファイバー(CNF)と実質的に同じものです。

もともと同社は、工業用鉱物を生産するフランスのImerys S.Aと同じくスイスのOmya AGのジョイントベンチャーで、セルロース繊維に製紙用添加剤である炭酸カルシウムやカオリン混ぜて解繊する方法で、製紙産業向けにナノセルロースと添加剤の混合物を供給していました。

現在同社が供給している製品は、次の3種類です。

Fiberlean MFC Flex®  :鉱物と混合したMFC
Fiberlean MFC Fly® :100%バージンの繊維で作ったMFC
Fiberlean MFC reFlex® :再生繊維から作られたMFC

それぞれの製品ごとの用途や、製造技術についても詳しく説明があります。
詳細は同社のウェブサイトをご覧ください。