セルロースナノファイバーのケミカル産業・先端技術分野における実用化と製品例

セルロースナノファイバー(CNF)には、その特性を生かしたさまざまな用途が検討されています。

ケミカル産業、先端技術分野におけるCNFの用途と、日本国内での製品化の例を紹介します。

セルロースナノファイバーの塗料・コーティング・インク製造業での用途

ナノセルロースは、チキソ性、増粘制御性、分散性などの特性を活かして、塗料やインクに使われています。

塗料の塗装は、ローラーと刷毛を使ったローラー工法のほかに、スプレーガンを使用した吹き付け工法で施工される場合が多くなっています。

吹き付け工法は、圧縮した空気を利用して塗料をミスト状にして噴射するエアスプレー方式と、塗料に直接圧力をかけて噴射口から飛ばすエアレススプレー方式に分けられますが、エアレススプレー方式は塗料の無駄が少なく、粘度の高い塗料にも使用できるという特徴があります。

粘度の高い塗料にナノセルロースを添加してチキソ性を付与すると、吹き付けのときだけ塗料の粘度が下がるため、施工しやすくなるといわれています。

またローラー工法で使われる塗料も、施工する際は塗料をかき混ぜるため、一時的に粘度が下がりますが、塗布後は元の粘度に戻るため、ナノセルロースを含まない塗料と比べて、液垂れが少なくなることがわかっています。

国内ではナノセルロースを使った塗料は市販されていませんが、英国ではセルロースナノファイバーを添加した屋内用塗料が市販されています。

溶剤の使用量を減らせるため臭気が少なくなる、塗装後の小さなひび割れを防ぐことができる、酸化チタンによる白濁を減らすことができる、と紹介されており、粘度上昇に伴って塗料成分の分散性が改善されたためではないかと思われます。

インクへの使用では、ゲルインクボールペンにTEMPO酸化セルロースナノファイバーが使用されているのは、皆さんもご存じではないかと思います。

三菱鉛筆のuni-ball Signo 307に、世界で初めてセルロースナノファイバーか採用されました。ボールペンは書くときに筆圧がかかるためインクにかかる圧力が少し上がります。その結果インクの粘度が下がり、インクが出やすくなります。

一方で字を書かないときはインクにかかる圧力が下がるため、インクの粘度が上がり、無駄なインクの漏れを防ぎます。その結果、速書きでもかすれず、インク溜まりができにくいという特長が実現されました。

この商品は国内、海外で広く販売されています。

【国内での製品化例】

ユニボールシグノ307 (三菱鉛筆株式会社)

世界で初めてインクにセルロースナノファイバーを使用した製品です。TEMPO酸化セルロースナノファイバーはチキソ性が高いため、筆圧がかかる筆記時にはインクの粘度が下がり、速書きでも字がかすれない。またインクが紙面にしっかり乗り、ペン先にインクが残りにくいため、インク溜まりができにくいという特徴があります。

ゲルインクボールペン出典:三菱鉛筆HP
ソルダペースト(クリームはんだ) (松尾ハンダ)

電子部品を基板上の電子回路に接合する際に用いられるクリームはんだ(ソルダペースト)です。はんだは、すず、銀、銅の金属粉が主成分だが、セルロースナノファイバーを添加することで、金属粉の流動性及び揮発ガス吸着性能等が改善し、

  • ダレ低減による外観形状不良の改善
  • はんだ内部の金属結晶組織の微細化による接合強度向上
  • 流動性改善による内部欠陥(ボイド)低減

を実現しました。

出典:松尾ハンダHP
G-SLIDE WAX (スキー・スノーボード用ワックス) (成光プレシジョン)

セルロースナノファイバーを植物油脂中に分散させ、フィラーとして用いたスキー・スノーボード用ワックスです。従来のフッ素化合物や金属化合物のフィラーを植物性素材で置き換ていますえ。ベース用ホットWAX、滑走用ホットWAX、滑走用ペーストWAXの3種類があります。

スキー用ワックス02出典:成光プレシジョンHP

セルロースナノファイバーのトイレタリー産業における用途

化粧品、医薬部外品、洗剤では、増粘剤、分散安定剤、乳化剤としてセルロースナノファイバー(CNF)が使われることが想定されます。CNFにはこれらのニーズを満たす特性があります。ただ現状ではCNFが使われた製品は多くありません。その理由として考えられるのは、

  • 従来使われているものと効果に差がないこと
  • 従来使われているものに比べて価格が高いこと

だと思われます。「CNFを添加すると従来品よりは性能が上がるが、価格上昇分ほどのメリットがない」という声もよく聞きます。

上にあげた3つの製品の中で、最も値段が高いのは化粧品です。よって、化粧品への適用が最も早く進むことが考えられます。後で紹介しますが、国内で製品化されたものは化粧品か、比較的高価格帯の医薬部外品です。

ところでセルロースが化粧品成分として使用される場合は、セルロース、結晶セルロース、セルロースガムのいずれかの成分表示がされます。それぞれの成分の内容と配合目的をまとめて示します。

成分名 製造方法 性状 配合目的
セルロース パルプを粉砕して作る。 白色粉末。水に溶けない。結晶セルロースに比べて硬い感触。 ・圧縮固形化粧品の結合剤
・有効成分を吸着保持、汗・皮脂の吸着
・分散・懸濁安定剤
・増粘剤
・硬い球状ビーズのスクラブ剤
結晶セルロース セルロースを加水分解して結晶部分のみを抽出したもの。 白色粉末。水に溶けない。セルロースより柔らかな感触。 ・圧縮固形化粧品の結合剤
・有効成分を吸着保持、汗・皮脂の吸着
・可塑剤(チューブ押し出し時の成形保持)
・分散・懸濁安定剤
・増粘剤
・柔らかい球状ビーズのスクラブ剤
セルロースガム
(カルボキシメチルセルロースナトリウム)
アルカリを触媒としてセルロースとクロロ酢酸の反応で合成したもの。 白色ないしは淡黄色の粉末。水に溶ける。水溶液は高粘度。 化粧水、乳液、クリームなどの粘度調整剤、乳化安定剤
シャンプーの粘度調整剤、泡の安定化剤
ファンデーションや乳液の懸濁剤コンパクトパウダーの粘結剤

化粧品成分オンライン(https://cosmetic-ingredients.org/)を改変

セルロースナノファイバーはセルロースまたはセルロースガムと表示されていると思われますが、セルロースと比べてチキソ性が高いと考えられます。

またセルロースナノファイバーの中でも、TEMPO酸化セルロースナノファイバーのように繊維径が細かく均一になっているものは水分散体(ゲル)が透明で、さらにチキソ性が高いため、ゲルであるにも関わらずスプレーが可能となります。現在のところ、セルロースナノファイバーあるいはセルロースナノクリスタルが含まれていることを公表している化粧品はありません。

一方、カルボキシメチル化セルロースナノファイバー(CM化CNF)はカルボキシメチルセルロースと同じものとして扱われており、成分名はセルロースガムと表示されます。

CM化CNFは日本製紙がセレンピア®という商品名で積極的に営業展開しており、化粧品への使用例も公表されています。それによると、株式会社コーヨー化成が製造するローズフレグランスジェル3種、ローズボディ&ハンドクリーム3種、ローズスキンウォーター3種に保湿成分として添加されています。

またSURISURI ローション、SURISURI ローション モイストにもCM化CNFが配合されており、水溶性セルロースナノファイバーと、低分子化したスクワランが、角質の表面と角質層の上層部に、ネットワーク構造のバリア膜(ナノモイストバリア)を作る効果があるとのことです。

【国内の製品化例】

ローズフレグランスジェル、ローズボディ&ハンドクリーム、ローズスキンウォーター (コーヨー化成)

セルロースナノファイバーを保湿成分として配合した化粧品です。日本製紙のカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを使用しています。成分表示には「セルロースガム」と記載されています。

化粧品
SURISURIローション、エマルジョン(化粧水・乳液)

水溶性セルロースナノファイバーと低分子化したスクワランが、角質の表面と角質層の上層部にネットワーク構造のバリア膜を作ります。バリア膜は長時間肌に留まるため、角質層を保湿し続けることができます。日本製紙のカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを使用しており、成分表示は「セルロースガム」と記載されています。

化粧水
乳液

出典:ビューティアテンドHP

HELP×HELPフェイスマスク (ラシェール化粧品株式会社)

セルロースナノファイバーとオリーブ果実油を配合しています。成分表示は「結晶セルロース」と記載されています。

出典:ラシェール化粧品HP
HITEETH ALL IN ONE MOUTH GEL(歯磨きゲル)

特殊なイオン水を安定化させ、セルロースナノファイバーでゲル化した歯磨きゲルです。通常、歯磨き粉に使われる界面活性剤は使用していないのが特徴です。日本製紙のカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを使用しており、成分表示はセルロースガムと記載されています。

歯磨きゲル出典:ビューティアテンドHP

【海外での製品化例】

FOGKICKER® (Treaty Biotech)

セルロースナノファイバーではなく、セルロースナノクリスタル(CNC)が超親水性であることを利用した曇り止めです。アメリカのボストン大学で開発され、ベンチャー企業が製造・販売しています。ダイビングマスク用スプレー剤、ゴーグル用スプレー剤、鏡用塗布剤、などが発売されており、日本国内でも通販で購入可能です。

曇り止め出典:Treaty Biotech HP

セルロースナノファイバーの食品分野における用途(食品添加物)

食品添加物

バクテリア由来のセルロースナノファイバー(バクテリアセルロース)以外のセルロースナノファイバーを使用する場合、「食品添加物」として利用することになります。食品添加物は食品の製造過程または食品の加工・保存の目的で使用されるものです。

食品添加物のうち「指定添加物」は、食品衛生法第10条に基づき厚生労働大臣が使用してよいと定めた食品添加物です。一方、「既存添加物」は指定添加物以外でわが国において広く使用されており、長い食経験があるもので、例外的に使用、販売等が認められているものです。

現在、食品添加物として使用されているセルロースは、次の9種類です。

指定添加物

名称 用途 使用基準
102 カルボキシメチルセルロースカルシウム
Calcium Carboxymethylcellulose繊維素グリコール酸カルシウム
Calcium Cellulose Glycolate
糊料 使用量等の最大限度は2%。

カルボキシメチルセルロースカルシウム、 カルボキシメチルセルロースナトリウム、 デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム及びメチルセ ルロースの1種以上と併用する場合は、その使用量の和が2%以下。

103 カルボキシメチルセルロースナトリウム
Sodium Carboxymethylcellulose繊維素グリコール酸ナトリウム
Sodium Cellulose Glycolate
糊料
318 ヒドロキシプロピルセルロース
Hydroxypropyl Cellulose
製造用材 なし
320 ヒドロキシプロピルメチルセルロース
Hydroxypropyl Methylcellulose
製造用材 なし

既存添加物

名称 簡略名または類別名 説明と用途
250 微結晶セルロース
(別名:結晶セルロース)Microcryrstalline cellulose
セルロース パルプから得られた、結晶セルロースを主成分とするものをいう。乾燥物と含水物がある。用途は製造用剤。
251 微小繊維状セルロース
Microfibrillated cellulose
セルロース パルプ又は綿を微小繊維状にして得られた、セルロースを主成分とするものをいう。用途は増粘安定剤、製造用剤。
280 粉末セルロース
Powdered cellulose
セルロース パルプを分解して得られた、セルロースを主成分とするものをいう。ただし、「微結晶セルロース」を除く。用途は製造用剤。
281 粉末モミガラ
Powdered rice hulls
イネのもみ殻を、微粉砕して得られたものである。主成分はセルロースである。用途はガムベース。
353 リンターセルロース
Linter cellulose
セルロース ワタの実の単毛を、精製して得られたものである。主成分はセルロースである。用途は製造用剤。

国内で製造・販売されているセルロースナノファイバーで、食品添加物として使用されていることを公表されているものは、ダイセルミライズのセリッシュ®と、日本製紙のセレンピア®のみです。

【国内での製品化例】

セリッシュ® (食品グレード) (ダイセルミライズ)

食品添加物として認可されたセルロースナノファイバーで、既存添加物251の微小繊維状セルロースに該当します。パルプを原料にホモジナイザーで物理的に解繊して作られます。用途は増粘安定剤、製造用剤となります。使用基準等はありません。
増量性に優れたFD100F、保水性が高いFD100G、繊維のヨレが少ないFD200Lの3種類があります。保型性向上、離水防止を目的にシュークリーム、たまごフィリング(たまごサンドの中身)、辛子明太子に、増粘性向上を目的にソース、バッター液(揚げ物の衣の生地)、グミ菓子などに広く用いられています。

シュークリーム
明太子

出典:ダイセルミライズHP

なおセリッシュ®には、これ以外に、濾過グレード5種類、工業グレード2種類の商品がラインアップされています。

セレンピア® (日本製紙)

カルボキシメチル化セルロースナノファイバー(CM化CNF)です。これは指定添加物103のカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)として使用されているものですが、通常のCMC-Naとは異なり、ナノ化されています。使用量の最大限度が定められています。用途は糊料です。どら焼きの皮に使用することで、皮のしっとり感が長続きするようになったと、同社のホームページなどで公表されています。

どら焼き出典:田子の月HP

セルロースナノファイバーの建設・土木分野における用途

コンクリート

セルロースナノファイバーを建設・土木分野に適用した事例として、コンクリート、生コンクリート圧送用先行剤、漆喰(しっくい)の3つを紹介します。

コンクリートはセメントと砂、石、水を混ぜて作った建設材料で、化学的なプロセスを経て硬くなります。ナノセルロースは、コンクリートやセメントの添加剤としてさまざまな効果が期待されています。

効果の一つ目は、凝固する前のコンクリート配合物の材料分離やブリーディングの防止です。コンクリートを施工したとき、重い石や砂が沈み水が表面に浮き上がる現象をブリーディングといいますが、セルロースナノファイバーを2%程度添加することで、材料分離やブリーディングを防ぐといわれています。

これは凝固前の分散体の中でセルロースナノファイバーがネットワーク構造を作ることで粘度が上がり、分散性が維持されるためと考えられます。

効果の二つ目は施工後の強度向上です。この目的ではセルロースナノファイバー、セルロースナノクリスタルの両方が検討されており、セルロースナノクリスタルを1%程度添加することで、コンクリートの補強効果が得られたという報告があります。また米国ではセルロースナノクリスタルを添加したコンクリートで橋が施工されています。

効果の三つ目は流動性の改善です。工場からコンクリートミキサー車によって運ばれた生コンは、ポンプを使って施工場所に流し込まれます。この作業を打ち込みといいますが、ポンプで圧送するためには、コンクリートに流動性が必要です。コンクリートへの水の添加量を増やせば流動性は高くなりますが、材料分離やブリーディングが起きやすくなります。

コンクリートにナノセルロースを添加するとチキソ性が付与され、圧送時だけコンクリートの流動性を上げることが可能です。これと同じ原理で、生コンクリート圧送用先行剤が国内で商品化されています。

これ以外にナノセルロースには、セメントの水和反応を促進する効果や、硫酸塩によるコンクリートの劣化現象、すなわち硫酸ナトリウムの水溶液がコンクリートに接するとナトリウムイオンや硫酸イオンが次第にコンクリートに侵入し,膨張性の鉱物などを生成することによりコンクリートを膨張破壊する現象を防ぐ効果もあるといわれています。

次に紹介するのは、漆喰にセルロースナノファイバーを添加することで、施工性を改善するとともに、ひび割れが起こりにくくなったという事例です。

漆喰は水酸化カルシウムを主成分とする建築材料で、古来より壁や塀に使われてきました。漆喰は施工後乾燥させますが、施工が上手くない場合、乾燥後にひび割れが発生することがありました。

漆喰にセルロースナノファイバーを入れることで、漆喰の成分の分散性が向上し、乾燥時に成分が凝集することによるひび割れが少なくなりました。セルロースナノファイバーの分散安定性を利用した商品化例と言えるでしょう。

【国内での製品化例】

土佐塩焼き灰しっくい練りたなか壁 (田中石灰工業)

セルロースナノファイバー(CNF)をしっくいに配合することで、乾燥時の微細クラックの発生を軽減しました。漆喰を施工した後に水分が蒸発すると、水酸化カルシウムの粒子同士が凝集し、ひび割れが起こることがありますが、CNFの添加により粒子間が結合されるため乾燥収縮が抑制され、かつ材料全体の引張強度が増加するため、ひび割れが抑制されます。

漆喰出典:田中石灰工業HP
ルブリ (生コンクリート圧送用先行剤)(タケ・サイト)

生コンクリートをポンプで圧送する際、従来使用していた先行モルタルの代わりに使用する「先行剤」です。セルロースナノファイバーのチキソ性を利用しています。圧送開始時間が短縮されたほか、モルタル運搬ミキサー車が不要となり、廃棄量が80%以上削減されました。

生コンクリート圧送用先行剤出典:タケ・サイトHP

セルロースナノファイバーの先端材料分野での用途

リチウムイオンバッテリーの車

ガス分離膜への適用

結晶化度の高いナノセルロースを積層すると、緻密な膜を作ることができます。ただこれだけでは膜の細孔を制御することはできません。

三次元多孔質材料である有機金属構造体(MOF : Metal Organic Framework)とナノセルロースを組み合わせることで、選択性の高いガス分離膜を開発した例を紹介します。

MOFは細孔構造、比表面積を任意に設計することができるため、MOFと合成高分子との複合膜をガス分離膜として使う研究が進められてきましたが、合成高分子は非極性、MOFは高極性であるため、2種類の膜の界面でガスリークが起こり、実用的なガス分離性能が得られていませんでした。

TEMPO酸化セルロースナノファイバーは表面にカルボキシ基のナトリウム塩(-COONa)が高密度に集積した構造を持っています。このカルボキシ基にMOFの一種であるZIF-90の中心金属の亜鉛(Zn)をイオン交換で導入し、イミダゾール配位子でつないで結晶成長させると、キューブ状のナノ多孔体MOFをその場で合成することができます。

この複合体をろ紙上で製膜したところ、二酸化炭素(CO2)分子は通す一方で、メタン(CH4)分子は通さない選択的なガス分離特性を示しました。ちなみにCO2の分子径は0.33×0.46nm、CH4の分子径は0.38×0.38nmと言われています。

このガス分離膜は、高いガスバリア性を有するナノセルロースの膜に、MOFでナノサイズの穴を開けた構造になります。またMOFの結晶核をナノセルロース上で合成していることと、MOF、ナノセルロースともに極性が高い材料であるため相性がよく、界面からのガスリークが大幅に抑制されているものと推察されます。

リチウムイオン電池のセパレーターへの適用

リチウムイオン電池は、正極と負極の間をリチウムイオンが移動することで、充電と放電を行う充電式電池です。エネルギー密度が高く高い電圧が得られることから、携帯電話、ノートパソコン、ハイブリッドカー、電気自動車、その他の産業用途に至るまで広く使われています。

正極、負極、電解質の材料はメーカーによって異なりますが、一般的には正極にはリチウム遷移金属化合物、負極には黒鉛、電解質には有機溶媒とリチウム塩が用いられます、また正極と負極の間はセパレーターという膜で物理的に隔てられ、電池が高温になった場合はリチウムイオンの流れを止める機能も持っています。

このセパレーターの材料として、セルロースナノファイバーを使う研究が進んでいます。

正極にスピネル構造のマンガン酸リチウム(LiMn2O4)を使ったリチウムイオン電池は価格が安い反面、劣化が早いという欠点があります。

原因の一つは正極からのマンガンイオンの溶出と負極での酸化マンガンへの酸化が起きるためです。そこでリチウムイオンは容易に透過できる一方で、マンガンイオンは透過できないセパレーターの開発が行われています。

セルロースナノファイバー(CNF)は表面に多数の官能基を持つため化学修飾が容易で、細孔制御も可能です。そこでCNFに表面修飾を行い、細孔径を制御したCNFと多孔質の支持膜を階層化した構造のセパレーターを試作しました。その結果、溶出されたマンガンイオンはCNF膜の表面でキャッチされ、負極側に浸透しないことが確認されました。

バイオセンサーへの適用

セルロースナノファイバーのハイドロゲルは、さまざまな物質を三次元的に組みこむことが可能です。そこでハイドロゲルとカーボンナノチューブ、ポリアニリン、銀ナノ粒子などの導電性のある材料を複合化し、バイオセンサー、バイオアクチュエーター、ナノ発電デバイスなどを作る研究が進められています。

ここではハイドロゲルを使ったバイオセンサーの研究例を紹介します。

過酸化水素は多くの産業界で使われる一方でその有害性が報告されており、正確かつ迅速に測定するニーズがあります。バクテリアナノセルロースを硫酸で分解したウィスカーと多層カーボンナノチューブ(MWCNTs)の複合フィルムを作り、ここにミクロペルオキシダーゼ-11(MP-11)という酵素を結合させ、過酸化水素の濃度を正確に測定するセンサーを製作しました。

MWCNTsにバクテリアナノセルロースを加えることで酵素が結合しやすくなるため、このセンサーでは0.1~250μMの範囲で過酸化水素を測定することができ、既存のセンサーより検出下限濃度が低くなっています。

次はナノセルロースのハイドロゲルにアクリル酸、アクリルアミド、塩化ナトリウムを複合化したセンサーについて紹介します。

このゲルを引っ張ると電気抵抗が変わるので、伸長センサーとして使用することができます。これを手袋やサポーターに取り付けることで、人間の体の動きを電気信号として検出することができることが確認されています。

このほかにもハイドロゲルと導電性材料を組み合わせた新しい電子デバイスの研究が盛んにおこなわれています。

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