ナノセルロース・セルロースナノファイバーに関する世界のニュース 2023年9月

ナノセルロース、セルロースナノファイバー(CNF)、セルロースナノクリスタル(CNC)、バクテリアナノセルロース(BNC)に関する、国内・海外の最新ニュースを掲載しています。こちらは 2023 年 9 月に報道されたニュースを、新しいものから順に掲載しています。新たに入手した情報は、随時追加しています。

農水省、みどりの食料システム法に基づく基盤確立事業実施計画を認定(2023年9月9日)

農林水産省は、みどりの食料システム法に基づき、事業者から申請された基盤確立事業実施計画の認定を行ったことを、9 月 8 日にプレスリリースで発表しましたが、今回認定された 4 事業者の中に、中越パルプ工業と丸紅から申請のあった、化学農薬の使用低減に寄与するセルロースナノファイバー(CNF)を用いた新たな物理的防除資材の普及拡大に取り組む、という計画が含まれています。

みどりの食料システム法では、環境負荷の低減に取り組む農林漁業者に役立つ技術の提供等を行う機械・資材メーカーの事業計画(基盤確立事業実施計画)を国が認定し、認定を受けた事業者が設備投資の際に税制・金融上の支援措置を受けることができるほか、同法に基づき都道府県知事の認定を受けた農業者が設備投資を行う場合の税制特例の対象となる機械の確認を受けることができます。今回の認定されたものも含め、55 の事業計画が認定されています。

中越パルプと丸紅が申請したものは、CNF を用いた防除資材に関するもので、これを植物の葉面に散布することで、微細繊維が植物の葉面を覆って病原菌の侵入を物理的に防ぎ、様々な野菜類・果実の栽培における化学農薬の使用低減に寄与するというものです。

令和 5 年 9 月から令和 10 年 3 月までの期間、実証試験の拡大によるエビデンスの充実、現場での使用方法等を分かりやすくまとめたマニュアルの作成、 展示会への出展等を通じた販路開拓に取り組むとのことです。

詳細は農林水産省のプレスリリースをご覧ください。

アーカンソー大学ベンチャー、ナノセルロースを使って除草剤の流失を軽減(2023年9月8日)

米国の州立大学・アーカンソー大学のウェブサイトに 9 月 7 日に掲載された記事によりますと、同大学の卒業生によって設立された CelluDot LLC  は、アーカンソー農業試験場との協力のもと、博士課程の学生のときに開発したナノテクノロジー製品を製品化するために、100 万ドルの助成金を獲得しました。

散布された除草剤は、目的とする場所から移動することによって、近くの農作物や他の植物などに意図しないダメージを与える可能性があります。アーカンソー州植物委員会によると、2018 年から 2022 年にかけてアーカンソー州では、毎年平均 480 件以上の、除草剤の移動に関する苦情が提出されています。

CelluDot の CEO である Joseph Batta-Mpouma 博士らは、ナノセルロースを使った技術によって、除草剤を使用予定の場所に留めておく技術を開発しました。

これはナノセルロースをベースとした製剤で、おがくずなどの森林廃棄物から作られており、BioGrip ™ と名付けられています。この製剤には、流失低減剤、揮発性低減剤、界面活性剤という 3 つの機能があります。

具体的には、除草剤スプレーの液滴に重さを加え、現場散布中に除草剤がより直接的に目標に落ちるように設計されています。これは流失低減剤として機能する 1 つの方法です。また有効成分の有効性を損なうことなく、有効成分の揮発を抑えるように設計されています。さらに界面活性剤によって。薬剤が雑草に付着しやすくなっています。

詳しい内容は、アーカンソー大学のニュース記事をご覧ください。

Forbes誌、注目すべきアジアの 100 社に韓国の Anpoly が選ばれる(2023年9月4日)

Forbes誌は、Asia 100 To Watch 2023(注目すべきアジアの100社)を 8 月 28 日 に発表しましたが、その中に、韓国のAnpoly が選ばれました。

同誌の記事では、以下のように紹介されています。

カテゴリ:バイオテクノロジーとヘルスケア
設立年::2017年
CEO::Sangcheol Rho
主な支援者::Enlight Ventures, Impact Square, ISU Venture Capital, Lotte Ventures, Postech Holdings

浦項科学技術大学の元教授である Sangcheol Rho氏が率いる Anpoly は、プラスチック汚染への取り組みを支援するナノセルロース技術の商業化を進めています。Anpoly という名前は、advanced natural polymerの頭文字から取っています。同社が提供するナノ構造材料は生分解性で鉄よりも強く、建設、化粧品、バイオテクノロジーの他の用途の中でも特にパッケージングとして使用できると説明されています。

同社の情報は、このサイトの別の記事もご覧ください。

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CNFの電顕写真

 

EPSONと東北大、セルロース繊維を混ぜたプラ開発の研究所を設置(2023年9月4日)

セイコーエプソンと東北大学は、2023 年 8 月に東北大学片平キャンパスにセイコーエプソン×東北大学 サスティナブル材料共創研究所』を開設し、古紙・衣類・木材を解繊して作る繊維をバイオプラスチックや再生プラスチックに混ぜて、強化する技術を開発することを、8 月 31 日にニュースリリースで発表しました。

エプソンは独自の繊維化技術であるドライファイバーテクノロジーを保有しています。これは、古紙をはじめとするさまざまな繊維素材について、用途に合わせた繊維化、機能性材料との結合、成形を行うことで高機能化を実現することが可能な技術です。東北大学との間では、この技術を使って作られたセルロース繊維とプラスチック材料を複合化し、バイオプラスチックや再生プラスチックの強度、耐久性などの課題解決を目指すなど、繊維複合型プラスチック材料による造形技術の共同研究をすでに進めています。

これらの取り組みが 2023 年 7 月に内閣府による戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期の課題「サーキュラーエコノミーシステムの構築」へ採択されたことから、産学官連携により社会実装に向けて開発の加速を図るため、研究所を設置することになったそうです。

東北大学グリーン未来創造機構グリーンクロステック研究センター センター長の 岡部朋永 教授 が運営責任者となり、2023 年8 月 1 日から 2027 年 3 月 31 日 まで。設置されます。

詳細は、セイコーエプソンのニュースリリースをご覧ください。

日本製紙、陰イオン変性CNFの再分散乾燥固体の特許を申請(2023年9月1日)

日本製紙が、陰イオン変性セルロースナノファイバー(CNF)の再分散乾燥固体に関する特許を出願したことが、包装業界の情報サイト Packaging Gateway のウェブサイトに、8 月 31 日付で掲載されました。

この特許 (公開番号: US 2 0230203205A1)は、陰イオン変性 CNF と水溶性ポリマーの乾燥固体混合物に関するものです。乾燥固体には、陰イオン変性 CNF に対して、水溶性高分子が 5~300 質量 % 含まれます。この乾燥固体混合物のユニークな組み合わせと特性を保護することを目的としており、材料科学、医薬品、化粧品などのさまざまな産業で応用できる可能性があります。

詳細は、特許公報をご確認ください。