2022年のナノセルロース・CNF関連最新ニュース(国内動向編)

ナノセルロース・ドットコムでは、世界のナノセルロース、セルロースナノファイバー(CNF)、セルロースナノクリスタル(CNC)、バクテリアナノセルロース(BNC)に関するニュースをまとめてお伝えしています。2022年に掲載した145件のニュースの中から、日本国内の企業動向に関するものをピックアップし、その概要を整理しました。なおニュースの詳しい内容や、リソースについては、掲載月のニュースをご覧ください。

セルロースナノファイバー関連主要企業の動き

国内でセルロースナノファイバー(CNF)の製造・販売と、そのアプリケーション開発を積極的に取り組んでいる企業に関するニュースを整理しました。内容は発表された日付順です。

日本製紙

セルロースナノファイバー(CNF)を配合した化粧品、シャンプー・トリートメント、ハンドクリームなどを次々と発売しています。また11月にはCNF強化樹脂をヤマハ発動機の水上オートバイの部品として使うための連携を結んだこと、12月にはCNFを混ぜたゴムマスターバッチのサンプル供給を開始したことなどが、発表されました。このほか、静岡県内を中心に、同社のCNFを使った菓子が発売されています(菓子の詳細は、コンシューマー・プロダクツの欄をご覧ください)。

子会社の日本製紙パピリアは、2021年10月にファンケルと共同でセルロースナノファイバー(CNF)を使った化粧品4種類(洗顔、クレンジングオイル、ローション、保湿クリーム)を開発しましたが、2022年1月6日には7割引き、1月25日には6割引き、3月15日には7割引きの販売キャンペーンを実施しました。また7月1日には、さらに化粧品3種類(UV保湿剤、フェイスパック、トリートメント)を発売しましたが、10月14日には65%引き販売のキャンペーンを行っています。

株式会社MARVELOUS、旭川工業高等専門学校、日本製紙は、発酵ナノオイルとセルロースナノファイバー(CNF)を組み合わせた保湿成分を配合したシャンプーとトリートメントを共同開発し、6月11日から先行販売することを発表しました(2022年6月10日)。

日本製紙は、高砂酒造、株式会社MARVELOUSと共同で、同社のセルロースナノファイバー(CNF)と清酒「国士無双」を使ったハンドバームを共同開発したことを発表しました(2022年8月16日)。

日本製紙とヤマハ発動機は、日本製紙のセルロースナノファイバー(CNF)強化樹脂 Cellenpia Plas®(セレンピアプラス®)を、ヤマハ発動機の水上オートバイのエンジン部品用いることを目指して連携することを発表しました。この樹脂はCNFをポリプロピレンに混ぜたものです(2022年11月16日)。

日本製紙は、TEMPO酸化CNFを天然ゴムに均一に配合したゴムマスターバッチ Cellenpia Elas®(セレンピアエラス®)を開発し、サンプル提供を開始したことを発表しました(2022年12月6日)。

日本製紙グループの太田紙販売は、長野県の老舗酒蔵の日本酒と日本製紙のセルロースナノファイバー(CNF)セレンピア®を配合したハンドクリームを開発し、販売を開始しました(2022年12月13日)。

大王製紙

セルロースナノファイバー(CNF)複合樹脂のパイロットプラントを稼働させ、それを車体などに使った電気自動車を走行させたほか、12月に開催された展示会では、その電気自動車が取材を受け、映像が全世界に配信されました。CNFをコンクリートに混ぜて、実際の建物の施工に用いるなど、CNFの用途開発が着実に進んでいる印象を受けます。

セルロースナノファイバー(CNF)複合樹脂の製造技術の確立を目的として、三島工場(愛媛県四国中央市)にCNF複合樹脂パイロットプラントを設置し、3月に稼働を開始たことを発表しました。設備の生産能力は最大年間100 tで、水分散液、乾燥体のパイロットプラントに併設されたとのことです(2022年3月29日)。

清水建設と共同で、コンクリートに CNF 水分散液(ELLEX®-S)を配合することで、コンクリートの流動性がよくなることを確認したうえで、ダイオーロジスティクス本社ビルの新築工事において、門塀、土間、境界壁、機械基礎等に活用した結果、コンクリート打設時の施工性改善が確認できました(2022年5月23日)。

自動車レースチームSAMURAI SPEEDは、セルロースナノファイバー(CNF)を多用したボディで、6月20日~26日に米国で開催される世界一過酷なヒルクライムレース「第100回パイクスピークインターナショナルヒルクライム」への参加を発表しました。大王製紙はパートナー企業として参加しており、同社が開発したセルロースナノファイバー(CNF)を多用したオリジナル車体を使い、前後とも一体式のフルカウル化したことで、減プラスチックと大幅軽量化に成功しました(2022年5月24日、2022年6月1日)。
さらに8月3日に、このCNF実装電気自動車がレースを完走したことと、CNF部材に置き換えることで、置き換え部分の総重量の約60kg、率にして51%が軽量化されたことが発表されました。

大王製紙セルロースナノファイバー(CNF)乾燥体 ELLEX® -Pが、チームレスキュー合同会社が生産するスキー・スノーボード用ワックスの材料として採用されました(2022年10月25日)。

大王製紙は、従来からサンプル供給しているCNF複合樹脂のセルロースの比率を従来の55%から67%に高めた樹脂ペレット ELLEX®-R67 を開発し、サンプル供給を開始します(2022年10月26日)。

大王製紙は12月7日~9日に幕張メッセで開催された第2回サステナブルマテリアル展で、セルロースナノファイバー(CNF)をボディなどの部品に使った電気自動車(EV)を出展していますが、12月7日夜(日本時間)にNHK Wordで、全世界に向けてその内容が配信されました(2022年12月8日)。

中越パルプ工業

中越パルプ丸紅は、セルロースナノファイバー(CNF)を使った、病原菌の侵入から植物の葉の表面を守る物理的防除資材を開発し、nanoforest-S アグリ という名称で試験販売を開始しました。CNFを植物葉面に散布することで、微細なセルロース繊維の網(防菌ネット)が葉表面を覆い、葉の内部への病原菌の侵入を物理的に防ぎ、病害の感染を抑制する効果があります(2022年7月11日)。

株式会社nijitoは、竹由来セルロースナノファイバー(CNF)を配合した化粧品、色付き保湿クッションを10月から発売することを発表しました。CNFを配合することで、シリコーンフリーを実現したとのことです(2022年9月16日)。これについては中越パルプ工業が、自社の竹由来セルロースナノファイバー(CNF)が色付き美容クリームクッションの原料として採用されたことを、発表しています(2022年10月17日)。

王子ホールディングス

王子ホールディングスは同社が独自開発したリン酸エステル化セルロースナノファイバー(CNF)をカーボンブラックの代わりに用いた天然ゴムとの複合材料を開発したことを発表しました(2022年10月12日)。

セルロースナノファイバーを使ったコンシューマー・プロダクツ

菓子

静岡県沼津市菓子店・雅心苑は、セルロースナノファイバー(CNF)を加えたフォンダンショコラと生チョコトリュフ(チョコレート菓子)を開発し、販売を始めました(2022年2月8日)。

静岡県熱海市常盤木羊羹店総本店は、セルロースナノファイバー(CNF)を使ったハート形のモナカ「クオーレ」を商品化したことを発表しました(2022年3月3日)

宮城県仙台市菓子メーカーこだまは、イチゴを使ったどら焼き「いちごの絆」に日本製紙のセルロースナノファイバー(CNF)セレンピア®を、東北の菓子業界で初めて採用しまし(2022年5月11日)。

静岡県富士市洋菓子店 petit Lapin(プチ・ラパン)は、日本製紙のセルロースナノファイバー(CNF)を使った新商品「私の夢のコーヒーゼリーnano」の発売を開始したことが明らかになりました(2022年10月13日)。

化粧品・日用品

株式会社MARVELOUS、旭川工業高等専門学校、日本製紙株式会社は、発酵ナノオイルとセルロースナノファイバー(CNF)を組み合わせた保湿成分を配合したシャンプーとトリートメントを共同開発し、6月11日から先行販売することを発表しました(2022年6月10日)。

丸住製紙は、独自開発したセルロースナノファイバー(CNF)を使った商品として、アルコールを配合したハンドジェルミストを販売することを発表しました(2022年6月16日)。

株式会社Boldiesは、バクテリアナノセルロース(BNC)でできたフェイスマスクを発売することを発表しました(2022年6月24日)。

日本製紙は、高砂酒造、株式会社MARVELOUSと共同で、同社のセルロースナノファイバー(CNF)と清酒「国士無双」を使ったハンドバームを共同開発したことを発表しました(2022年8月16日)。

株式会社nijitoは、竹由来セルロースナノファイバー(CNF)を配合した色付き保湿クッションを10月から発売することを発表しました。CNFを配合することで、シリコーンフリーを実現したとのことです(2022年9月16日)。これについては中越パルプ工業が、自社の竹由来セルロースナノファイバー(CNF)が色付き美容クリームクッションの原料として採用されたことを、発表しています(2022年10月17日)。

日本製紙グループの太田紙販売は、長野県の老舗酒蔵の日本酒と日本製紙のセルロースナノファイバー(CNF)セレンピア®を配合したハンドクリームを開発し、販売を開始しました(2022年12月13日)。

スポーツ用品

チームレスキュー合同会社が生産するスキー・スノーボード用ワックスRESCUE ZERO ver1.3に、大王製紙のセルロースナノファイバー(CNF)乾燥体 ELLEX® -Pが採用されました(2022年10月25日)。

アシックスは、クッション材にサトウキビ由来繊維のセルロースナノファイバー(CNF)を採用したテニスシューズを発売します。アドバイザリースタッフ契約を結ぶノバク・ジョコビッチ選手の意見を取り入れ新たに開発したものです(2022年12月14日)。

自動車・バイク用品

バイク用品のメーカー株式会社ウインズジャパンは、金沢工業大学の協力を得て、セルロースナノファイバー(CNF)を使ったバイク用ヘルメットの開発に成功しました(2022年1月15日)。

アルプスアルパインは、スピーカー新製品「Xプレミアムサウンドスピーカー」のボイスコイルの巻き芯(ボビン)の補強に、高密度CNFシートを採用しました。なおCNFはスピーカーにおいて振動板に使用されるケースが多いですが、このスピーカーではカーボンファイバー振動板を採用しています(2022年11月2日)。

楽器・文具

宮崎県宮崎市有限会社へいわは、セルロースナノファイバー(CNF)を使ったネームプレートを開発し、販売を始めました(2022年2月19日)。

伊藤忠商事利昌工業と、株式会社三島屋楽器店(新潟県長岡市)は、世界で初めて、象牙に近い音色を奏でるセルロースナノファイバー(CNF)箏爪を製品化したことを発表しました(2022年11月14日)。

物理的防除資材(農業用)

中越パルプ丸紅は、セルロースナノファイバー(CNF)を使った、病原菌の侵入から植物の葉の表面を守る物理的防除資材を開発し、nanoforest-S アグリ という名称で試験販売を開始しました。CNFを植物葉面に散布することで、微細なセルロース繊維の網(防菌ネット)が葉表面を覆い、葉内部への病原菌の侵入を物理的に防ぎ、病害の感染を抑制する効果があります(2022年7月11日)。

セルロースナノファイバーを使った開発品

樹脂・発泡材料

永和化成工業は、セルロースナノファイバー(CNF)を配合することで、従来製品より発泡倍率を20%向上できる発泡剤のマスターバッチを開発しました。これを使うことで、従来の軽量化は維持しつつ、弾性率を向上させることができます(2022年3月13日)。

豊田合成は、車の内装や外装に使われる汎用樹脂(ポリプロピレン)にCNFを20%配合した強化プラスチックを開発したことを発表しました。実用化に向けては、CNF配合時の耐衝撃性の低下が課題でしたが、材料の配合設計や混練技術などを用いて、自動車部品に活用できる水準に高めており、グラブボックスとフロントピラーガーニッシュを試作しました(2022年4月13日)。
さらに、このセルロースナノファイバー(CNF)強化プラスチックを、社内での製品運搬コンテナに用いることで、活用を開始したことを発表しました(2022年9月20日)。

ゴム

王子ホールディングスは同社が独自開発したリン酸エステル化セルロースナノファイバー(CNF)をカーボンブラックの代わりに用いた天然ゴムとの複合材料を開発したことを発表しました(2022年10月12日)。

日本製紙は、TEMPO酸化CNFを天然ゴムに均一に配合したゴムマスターバッチ Cellenpia Elas®(セレンピアエラス®)を開発し、サンプル提供を開始したことを発表しました(2022年12月6日)。

繊維

ユニチカは、セルロースナノファイバー(CNF)強化ナイロン6樹脂を開発し、1月に展示会に出品しました(2022年1月8日)。

愛知県豊田市水野金属商事は、あいち産業科学技術総合センター産業技術センターの技術支援で、セルロースナノファイバー(CNF)を添加した銅の抗菌剤を開発するとともに、抗菌剤を綿布に塗布したスマホケースやマスクケースなどの抗菌性綿製品の試作品を製造しました(2022年2月24日)。

先端材料

日本資材は、セルロースナノファイバー(CNF)とカーボンナノチューブ(CNT)の複合材を拡販するという記事が、化学工業日報に掲載されました。この複合材はCNTが持つ導電性を維持したまま、CNFの繊維の間に浸透・吸着させることで作られるもので、リチウムイオン電池の電極材料として使えるとのことです(2020年2月19日)。

低価格、短納期の汎用人工衛星を開発するテラスペースは、世界初となる紙の人工衛星の開発のため、来年打ち上げ予定の初号機にセルロースナノファイバー(CNF)の素材のサンプルを搭載し、耐久性などの試験を行うことを発表しました。超小型人工衛星は一般的にはアルミニウム製の筐体を使用しますが、紙の人工衛星では主たる構造体に北越コーポレーションCNF ReCell® を使用します。これによって強度を維持しつつ軽量化を実現でき、更にはアルミニウムと比較して電波を透過しやすいことから、通信用アンテナを衛星内部に搭載することで、衛星設計の自由度を上げられます(2022年5月13日)。

東京大学大学院工学研究科は、セルロースナノファイバー(CNF)を流体プロセスを活用して分子スケールで配向させ、酸を用いて固めて作製した糸材が、セルロースナノペーパーなどの高熱伝導性を有する先端木質バイオマスの5倍以上、紙など従来の木質バイオマスの100倍以上の高熱伝導性を示すことを発表しました(2022年10月26日)。

セルロースナノファイバー以外のファイバーに関する話題

セルロースマイクロファイバー

パナソニックは、これまでに開発してきた植物由来のセルロースファイバーを高濃度に樹脂に混ぜ込む技術を、植物由来のバイオポリエチレンへ展開し、バイオマス度90%以上の成形材料を開発しました(2022年3月22日)。

巴川製紙所は、コストの高いセルロースナノファイバー(CNF)ではなく、繊維径が太いセルロースマイクロファイバーの量産化を目指すとの報道がありました。CNFがコスト高である点や、他の素材と複合化しにくいことなどを、多数の問題点があるとの認識を持っており、あえて解繊の度合いをマイクロファイバーにとどめているとのことです(2022年3月23日)。

スギノマシンは、シングルマイクロサイズの表面繊維化セルロース粒子を開発したことを発表しました。市販のセルロース粉末などより比表面積が大きく、オイルリッチ・低粘度の乳化剤としての用途が期待されるとのことです(2022年5月11日)。

バクテリアナノセルロース

草野作工は、日本甜菜製糖芽室製糖所で発生するテンサイの搾り汁を原料とするバクテリアナノセルロース(BNC)をタンク培養で年産200トン生産する設備を江別市に今年の春に稼働させ、来年の春にはプラスチック製造設備も稼働させることが明らかとなりました(2022年10月22日)。

パラミロンナノファイバー

タキロンシーアイは、ユーグレナ由来のナノファイバーであるパラミロンナノファイバーの商業生産を計画するベンチャー企業、株式会社ユーグリードへ出資したことを発表しました(2022年3月18日)。

キチンナノファイバー

名古屋土産の海老せんべい「ゆかり」を製造・販売する坂角総本舗は、マリンナノファイバーの協力で、キチンナノファイバーの入ったハンドクリームを発売します(2022年2月2日)。

星光PMCは、マリンナノファイバーの株式の85.4%を、とっとり大学発・産学連携投資事業有限責任組合から取得し、子会社化することを発表しました。マリンナノファイバーはキチンナノファイバーの製造と、その関連製品の開発・製造・販売を行っています(2022年11月29日)。

海外企業の日本進出

Stat Peel AG(スイス)

空気中のセルロースナノクリスタル(CNC)の暴露量をモニターするためのバッジと検出システム(商品名:Identifier N1)を販売しているStat Peel社は、株式会社イリスと提携し、日本での営業活動は同社が行うことになりました(2022年1月27日)。

Borregaard(ノルウェー)

三洋貿易は、Borregaard社のセルロースナノファイバー(CNF) Exilva® の取り扱いを始めたことを公表しました(2022年1月19日)


最後までお読みいただき、ありがとうございました。こちらの記事では、2022年に起きた、日本国内のニュースを整理しました。世界全体のナノセルロースの技術動向については、下の記事をご覧ください。ナノセルロースの種類・用途・研究開発テーマごとに、2022年のニュースをまとめています。

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