ナノセルロース ニュース 2021年4月

バクテリアナノセルロースから皮革を作る試み(2021.4.23)

4月22日はアースデイです。プラスチック、コンクリート、皮革を再生可能で環境にやさしい材料に置き換えるための7つの取り組みが、建築デザイン系ウェブマガジンDezeenで紹介されていましたが、その中で、SCOBY(Symbiotic Culture of Bacteria and Yeast)で作ったバクテリアナノセルロース(BNC)から皮革を作る試みが紹介されていました。

最近の研究によれば、人工材料が地球上のバイオマスの総重量を上回っているそうです。そのことから材料設計者は自分たちが設計した製品が地球にどのように影響するかを強く認識するようになりました。記事では再生可能でサステナブルな7つの材料を取り上げていますが、その一つがSCOBYで作ったバクテリアナノセルロースです。バクテリアナノセルロースは通常、酢酸菌で作られますが、この記事ではSCOBYで作られたものが取り上げられています。この材料は、なめしと染色のプロセスを経て、バイオレザーになります。材料科学者のTheanne Schirosは、合成ポリウレタン(PU)で作ったレザーよりも二酸化炭素排出量が最大97%低く、国内の堆肥の山で分解するといっています。Schirosは以前、ニューヨークのストリートウェアレーベルPublic Schoolと共同で、トレーナーのペアを作成するためにこの素材を使用し、Studio Lionne van Deursenはバクテリアナノセルロースを使って、ライトの革のような色合いを作り出したそうです。セントラルセントマーチンズの卒業生であるロージーブロードヘッドや、MITメディアラボとロイヤルカレッジオブアートのチームを含む他の人々は、生きたバクテリアを使用して、体臭を減らしたり、汗に反応して剥がれたりする衣服も作っているそうです。

詳しい内容は、Dezeenの記事をご覧ください。

バクテリアナノセルロースのメッシュがヘルニアの手術を改善(2021.4.21)

バルセロナ材料科学研究所(ICMAB-CSIC)と医療機器の大手メーカーであるB. Braun Surgicalが、バクテリアナノセルロース(BNC)から作った外科手術用メッシュを開発したことが、ナノテクノロジー分野のオンラインニュースサイトnanowerk.comに同日付で掲載されました。

腹部ヘルニアは、腹部の壁の小さな穴または弱くなったゾーンから、内臓が飛び出す病気です。世界中で年間2000万人が腹部ヘルニアに苦しんでおり、外科的手術によってのみ、治療が可能です。手術では弱くなったゾーンに外科用メッシュを当てて、物理的に修復しますが、現在このメッシュの材料は、ポリプロピレンなどの合成ポリマーです。ヘルニアの手術では、メッシュによる異物反応と、メッシュと内臓の線維性癒着が起きる可能性があり、手術後1年で約15%の比率で癒着が起きています。メッシュ周囲の線維性接着が合併症の連鎖を引き起こし、より複雑な再手術につながる可能性があるため、異物反応を最小限に抑えることが重要です。

バクテリアナノセルロースは創傷被覆材、心臓インプラント用の抗線維化プロテクター、または角膜障害を治療するためのバイオパッチなど、ヘルスケア分野での利用が進んでいます。ヘルニア手術用メッシュの開発では、ドライ、ウェット、単層、2層または3層、PPメッシュとの組み合わせなど、さまざまなサンプルが試されました。その結果、バクテリアナノセルロースで作ったメッシュは癒着をほとんど起こさず、腹壁にうまく統合されていました。成果は、Biomaterials Science誌にこのほど掲載されました。

Nanolloseがバクテリアナノセルロースから繊維を作るため資金を調達(2021.4.21)

オーストラリアでバクテリアナノセルロース(BNC)の生産と利用を手掛けるNanolloseは、環境に優しい樹木を含まないセルロース繊維(リヨセル繊維)と、その布地のパイロットスケールでの生産を行うため、投資家から285万米ドル(=約3.1億円)を調達しました。オーストラリアの各メディアの報道によりますと、衣料品や繊維向けの材料と不織布向けの材料の生産を予定しており、プラントでは月産5トンのリヨセル繊維を生産するとのことです。

セルロースナノファイバーの特性評価に関する国際標準が発行(2021.4.16)

TEMPO触媒酸化セルロースナノファイバー(TEMPO-CNF)をはじめとした、セルロースナノファイブリル単体にまで分離したセルロースナノファイバーの特性とその計測方法を定めた国際標準が、3月に国際標準化機構(ISO)から発行されました。

番号:ISO/TS 21346:2021
名称:Nanotechnologies — Characterization of individualized cellulose nanofibril samples

これは日本がISOに提案し、6年がかりで審議が進められてきたものです。全部で38ページあり、ISOのホームページから購入することが可能です(価格は158スイスフラン≒19,000円)。
ホームページ上で要約、目次などが無料で公開されていますので、概要を把握することができます。
公開されている内容を日本語でまとめたものを、記事として掲載していますので、あわせてご覧ください。

国際標準には、①国際規格 (International Standard, IS)、②技術仕様書 (Technical Specification, TS)、③技術報告書 (Technical Report, TR)の3種類がありますが、今回発行されたのは技術仕様書(TS)です。技術仕様書は、将来国際規格(IS)となる可能性があるが、直ちにISとして発行できない場合に作られるものであり、厳密な意味での規格ではありません。例えば、この規格の中では、セルロースナノファイバーの特性評価項目とその測定方法について記載されていますが、それを使って測定すべき、ということではなく、そのような方法で測定することが好ましいという記載内容になっています。なお国際標準には強制力はなく、遵守しなかった場合に法律に基づく罰則が適用されるものではありません。

セルロースナノクリスタル(CNC)をベースとした圧電材料の開発(2021.4.16)

テネシー大学農学部Southeast Regional Sun Grant Centerは、限りある資源から作られる付加価値の高い製品を代替し、持続可能な市場を創出するための研究開発プロジェクトの競争的資金の受領者6件を、4月15日に同大学農学部のニュースリリースで発表しました。このなかに、Auburn UniversityのDr. ZhongYang Chengが提案した、エネルギー獲得用のセルロースナノクリスタル(CNC)ベースのフレキシブル圧電材料の開発が含まれています。

圧電材料とは、材料に圧力を加えると、その圧力に比例した分極(表面電荷)が現れる現象で、すでにさまざまな圧電材料(圧電体ともいいます)が開発されています、プレスリリースだけでは、Dr. Chengの研究内容はわかりませんが、ナノセルロースの新しい用途として、注目したいと思います。詳しくは、テネシー大学農学部のニュースリリースをご覧ください。

バイオプラスチックを木材粉末から直接作る技術をイェール大学などが開発(2021.4.12)

値段の安い木材粉末から深共晶溶媒(DES)を使ってバイオプラスチックを作る技術を、イェール大学、ウィスコンシン大学、メリーランド大学が共同で開発し、その内容が3月25日にNature Sustainabilityに掲載されました。

イェール大学のウェブサイト「イェールニュース」に4月5日付で掲載された記事によりますと、木材粉末はセルロース、ヘミセルロース、リグニンからなる緩い構造を持っていますが、これを塩化コリンとシュウ酸からなる深共晶溶媒(DES)を加えることで、リグニンを溶解し、セルロースを木材の細胞壁からミクロフィブリル(CMF)またはナノフィブリル(CNF)にまで分解します。次にこれに水を加えると、疎水性であるリグニンは再生・堆積して、CMFとCNFのネットワークに結合し、リグニンとセルロースから成るスラリーとなります。このスラリーを成型することで、バイオプラスチックが得られます。

このバイオプラスチックは、強固で、水に安定で、コストパフォーマンスに優れ、リサイクルと生分解が容易です。引張強度は128MPaと高く、プラスチックフィルムとして広く使われているアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)とポリフッ化ビニル(PVF)よりも強いことがわかりました。バイオプラスチックは水に対して弱いといわれていますが、このバイオプラスチックを30日間水に沈めた後でも、折れることなくその形状を維持できることを確認しています。これに対して同じ時間沈められたセルロースフィルムは完全に崩壊しました。またこのバイオプラスチックは357℃の環境下においても、良好な熱安定性を示しました。一方で、このバイオプラスチックのシートを5cmの深さの土壌に埋めたところ、3か月後に完全に生分解されることを確認しています。さらにこのバイオプラスチックは、機械的に攪拌することで分解し、スラリー状態に戻すこともでき、そこからリサイクルすることができます。スラリーの作成に使用されたDESは、処理中に生成されたろ液を保存し、水を蒸発させることによってリサイクルすることもできます。DESは、数回リサイクルされた後でも、木材の分解効果がありました。

木材粉末は、木材加工残渣として安価に入手することができます。またこのプロセスでは、コストとエネルギーを大量に消費するリグニンとセルロースの分離が不要です。その結果、バイオプラスチックを安価に製造することができます。価格が高いことが、バイオプラスチックの普及の妨げになっていますが、このプロセスはそれを解決できます。またこのプロセスは木材のほかに、草、麦わら、バガスから製造できることを確認済みです。

詳しい内容は、イェールニュースの記事をご覧ください。

なお、同じ内容を3月26日にナノセルロース・ドットコムのニュースとして掲載していますが、新たな情報が追加されていたので、再度、掲載しました。

バイオインクを手掛けるCELLINKがUPM Biomaterialsと連携(2021.4.12)

バイオプリンティングなどを手掛けるスウェーデンの企業CELLINKは、世界有数の紙・パルプ会社であるUPM の関連会社であるUPM Biomedicalsと、画期的な3Dバイオプリンティング技術の開発のため、提携したことを4月6日のプレスリリースで公表しました。それによると、動物由来ではないナノセルロース生体材料を製造するためのUPMの専門知識と、3Dバイオプリンティングのメソッド開発におけるCELLINKの長年の経験を結び付け、この成長するライフサイエンス市場に新しい画期的なソリューションを提供するとのことです。

過去10年間の3D印刷の進歩は目覚ましく、3D印刷技術はさまざまな最先端のアプリケーションでより広く使用されるようになっています。3Dバイオプリンティングは、さまざまな治療に対する反応をテストするために、腫瘍モデルを印刷できるので、癌研究などの分野で重要となっています。最近では、科学者たちは、患者に移植できる組織や臓器を3D印刷することを含め、この技術を臨床現場で使えないか、検討しています。UPMが開発したセルロースナノフィブリル(CNF)由来の動物細胞を使わない原材料をバイオインク製剤に使用すると、免疫応答や拒絶反応の可能性が減少し、ヒトへの移植がはるかにしやすくなります。

CELLINKとUPMの提携によって、この治療法を一部の病院だけでなく、より広い環境で適用される産業標準および臨床標準にすることが可能となります。

Erik Gatenholm, CELLINK社CEOの話

当社はセルロースバイオインクを市場に投入した最初の企業であり、UPMとの提携により可能性の世界が開かれました。企業は影響を与えるために協力する必要があり、このコラボレーションはまさにそれを行っています。われわれは間違いなく、これらの技術は、将来的に組織修復または交換のために使用されると考えており、それは素晴らしいことです。

Johana Kuncova-Kallio, UPM Biomedicals社Directorの話

私たちの材料は、ナノセルロースと水だけでできており、動物由来の成分や汚染物質は含まれていません。私たちは、医療機器の標準であるISO 13485の品質管理基準に従って製造した最初の企業であり、これは将来の臨床応用にとって重要な最初のステップです。高品質の素材とCELLINKの3D印刷機能を組み合わせることで、再生医療の未来を1滴ずつ生み出していきます。

なお、さらに詳しい内容は、CELLINKのプレスリリースをご覧ください。

CM化セルロースナノファイバーがヘアケア商品に採用(2021.4.6)

株式会社MARVELOUSと旭川工業高等専門学校が共同開発したシャンプー、トリートメントブランド「ririQ(リリック)」に、日本製紙のカルボキシメチル化セルロースナノファイバー(CM化CNF)が採用されたことを、日本製紙が4月6日付のニュースリリースで発表しました。公表されている範囲では、ヘアケア商品にCNFが使用された世界で初めてのケースとなります。CNFと発酵ナノオイルによって、高い保湿力と髪の毛のツヤ・手触りの向上が実現したとのことです。

詳しくは同社のニュースリリースをご覧ください。

セルロースナノファイバーを電子回路にコーティングし故障を防ぐ(2021.4.2)

電子回路にセルロースナノファイバー(CNF)をコーティングするだけで、水濡れ故障や発熱・発火といった事故を防ぐことができる画期的な技術を、大阪大学産業科学研究所の能木教授らの研究グループが開発したことが、4月1日に同研究所のウェブサイトで公表されました。

電子デバイスにとって水が天敵であることはよく知られており、これまで防水コーティングやパッキングなど様々な封止技術が開発されてきました。しかしどんな封止も一度損傷してしまえば水の侵入を防ぐことはできず、故障は免れません。今回研究グループは、電子回路上にCNFをコーティングすることで、回路の短絡及び発熱・発火といった事故を防止できることを発見しました。さらにその短絡抑制効果はコーティングが損傷した状態からでも発揮され、24時間以上継続されました。この成果は、吸水によるナノ繊維の再分散、電気泳動、ゲル化という3ステップを上手く組み合わせることで実現しています。この成果により、近年開発・普及が進んでいるウェアラブル・ヘルスケアデバイスなどのさらなる安全性向上が期待できます。この研究成果は、米国科学誌ACS Applied Nanomaterialsに公開されています。

なお、詳しい内容は、大阪大学産業科学研究所のHot topicsをご覧ください。

セルロースを有効利用するための新しい技術の開発がフィンランドで進む(2021.3.30)

繊維・ファッション業界は、循環型社会への対応を迫られています。3月25日にニューヨークのフィンランド総領事館で開催されたセミナー「廃棄物からファッションへ」では、繊維産業におけるサーキュラーエコノミーと持続可能性をサポートする8つの先駆的な開発事例が紹介され、パネルディスカッションが行われました。繊維業界の専門ウェブサイトInnovation in Textilesが3月29日付でこの内容を報道していますので、セルロースに関係する部分を紹介します。

  1. Spinnova
    パルプや木質廃棄物から取り出したセルロースを電界紡糸して、従来の化繊や綿に代わる木質由来の繊維を製造する技術を保有している。世界最大の木材パルプ生産会社であるSuzanoから、フィンランドに最初の商業規模のSpinnova生産施設を建設するために、2,200万ユーロの投資を受けています。
  2. Ioncell
    使用済みの繊維、パルプ、さらには古い新聞を持続可能な方法で新しい繊維に変えるアールト大学の技術。
  3. ShimmeringWood
    ファッション業界で使用される有毒な顔料やプラスチックベースの材料の持続可能な代替品として、ナノセルロースの薄層から色を作成する。日光で色落ちしない。アールト大学が開発した。
  4. NordShield
    バクテリア、ウイルス、真菌を不活化するセルロース由来の天然抗菌溶液。
  5. Coverossテクノロジー
    日本で最初に開発され、現在はフィンランドでのアップサイクリングに適応している、テキスタイルのさまざまな機能的処理。
  6. ResterOy
    フィンランドのパイミオに本拠を置く新しいリサイクルプラントで、年間12,000トンの使用済み繊維をリサイクルする能力があります。その2つの生産ラインは、建設および海運業界向けの絶縁材料、音響パネル、ジオテキスタイルなど、さまざまな産業用途向けに廃棄物をリサイクル繊維に変えます。フィンランドの作業服ブランドTouchpointによって開発されたプロセスで、このプラントに出資しています。
  7. Woodly
    セルロース製のカーボンニュートラルなバイオベースのプラスチックで、アパレルパッケージの従来の化石ベースのプラスチックの代わりに使用できます。
  8. RePack
    再利用可能なパッケージング、返品ロジスティクス。すでに150を超えるアパレルブランドと小売業者がヨーロッパと北米での単回配達から離れるのに役立っています。

詳しい内容は、Innovation in Textilesの記事をご覧ください。

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