- 1 アメリカのBucha Bio、110万ドルを調達(2022年9月25日)
- 2 豊田合成、CNF強化プラスチックを製品運搬コンテナに活用(2022年9月20日)
- 3 竹由来CNFを使った化粧品が発売へ(2022年9月16日)
- 4 Malaysia Nanotechnology Industrial Groupが設立(2022年9月10日)
- 5 スイスのSulzer、オランダのCELLiCON の株式を取得(2022年9月3日)
- 6 CNF製造企業の韓国MOVIC、2022 Weconomy Startup Challengeに選ばれる(2022年9月1日)
- 7 イオン選択膜を開発しているスウェーデンのCellfion、130万ユーロ調達(2022年9月1日)
アメリカのBucha Bio、110万ドルを調達(2022年9月25日)
香港のメディアGreen Queenが9月24日にウェブサイトで公表した内容によりますと、バクテリアナノセルロース(BNC)から革とプラスチックを製造するベンチャー企業、Bucha Bio は、New Climate Ventures、Lifely VC、Beni VC、Prithvi VC、Asymmetry VC、Alwyn Capital を含む Glasswall Syndicate の投資家と、Visionary Music Group の CEO 兼創設者である Chris Zarou から、資金を調達したとのことです。
Bucha Bioは、Shorai と Hikari という、2種類のバイオベース素材を開発中です。同社のウェブサイトによりますと、Shorai®はアニマルレザーやプラスチックレザーなどの代替素材として使用できる素材で、2023年に市場投入予定、Hikari®は半透明の素材で、靴、アパレル、自動車などの用途向けに、非常に柔らかいシートまたはペレットとして、2024年に市場投入される計画です。
新たな資金はこれらの研究開発のために使用されます。また、同社ではバイオファイバー、バイオパッケージング、ハードバイオコンポジットなども開発しています。
現在、さまざまな業界で持続可能な素材の需要が高まっています。Material Innovation Initiative によると、2015 年以降、生体材料セクターには 23 億ドル以上の投資が行われています。具体的には、プラスチック製造や皮革製造など、温室効果ガス排出量の多い素材を置き換える方法を検討しています。
詳細は、Bucha Bioのホームページ、およびGreen Queenの記事をご覧ください。
Bucha Bioは2019年にニューヨークで設立され、BNCと植物材料から、衣料、包装、建築材料としても使える次世代の材料 Mirai® を開発していました。(2021年10月のニュースをご覧ください)。また、2022年2月にテキサス州ヒューストンに本社を移転しています。Shoraiは「将来」、Hikariは「光」が語源と思われますが、命名の経緯は不明です。またいまのところ、Bucha Bioに日本人スタッフがいるという情報もありません。
豊田合成、CNF強化プラスチックを製品運搬コンテナに活用(2022年9月20日)
同日付のニュースリリースによりますと、同社では、自動車の内外装部品向けにCNF強化プラスチックを開発していますが、自動車部品への採用を視野に、実地での活用実績を積んでいくため、CNF強化プラスチックで製品運搬コンテナを作製し、自社工場での使用を開始したとのことです。
同社では、自動車部品のライフサイクル(原材料調達、生産~リサイクル・廃棄)におけるCO2削減の一環として、強みである材料技術を用いた各種バイオ素材の活用を進めています。その中でも、CNFはプラスチックなどに配合して補強材として使用すると、製品の「軽量化」や「自動車部品へのリサイクル」を可能にし、脱炭素・循環型社会を目指す上で有効な素材です。
車の内外装に使われる汎用樹脂(ポリプロピレン)にCNFを配合すると耐衝撃性が低下することが、実用化にあたっての課題でしたが、材料の配合設計や混練技術によって自動車部品に活用できる水準に高めました。
同社では工程内で使用済のポリプロピレン製コンテナのリサイクル材に、CNF強化プラスチックを配合し、6%軽量化したコンテナを作製しました。従来のコンテナに比べ、ライフサイクル全体で6%のCO2削減を見込んでいます。
本事業は、環境省「令和3年度 革新的な省CO2実現のための部材や素材の社会実装・普及展開加速化事業」の助成を受けて実施されたものです。
詳細は、同社のニュースリリースをご覧ください。
ポリプロピレンの強度向上、軽量化を目的に、ポリプロピレンにCNFを混ぜるという研究例は他にもあり、有名なところでは、2019年秋の東京モーターショーで展示されたナノセルロースヴィークル(NCV)に、ポリプロピレンにCNFを10%添加した材料を射出成型して作られたドアアウターパネル、ドアトリム(トヨタ紡織)、パケトレフロントカバー(イノアック)、ブロー成型して作られたリアスポイラー、フロントアンダーカバー(キョーラク)、ポリプロピレンにCNFを20%添加した材料を射出成形して作られたバッテリーキャリア(トヨタ車体)が使われていました。このちなみにNCVは、走行試験も行われています。ただ残念なことに、その後これらの部品が実用化されたという発表はありません。
それから3年経過して、また似たような研究開発が行われ、作られたCNF強化プラスチックは、自動車部品ではなく、工場内で使用するコンテナにしか使われていないというのが現状です。6%軽量化したとのとですが、ニュースリリースではCNFの添加率や材料の特性(強度など)には、一切触れられていません。何より、実地での活用実績を積むために、部品用コンテナを製作したという説明は、かなり苦しいように思います。
竹由来CNFを使った化粧品が発売へ(2022年9月16日)
プレスリリース配信サービス@Pressで同日配信された内容によりますと、株式会社nijitoは、美容成分を与えて、見た目を美しく仕上げることを叶える、100%天然由来の色付き保湿クッションを2022年10月よりharu公式オンラインショップで販売開始することになりました。
化粧で一般的に使用されるファンデーションにはシリコーンが含まれていますが、今回発売される色付保湿クッションは、バンブーネットという成分を配合することで、ファンデーションと同様の働きをしながら、シリコーンフリーを実現したとのことです。
バンブーネットは、ナノ化した竹の繊維で、結晶セルロースと記載されていることから、竹由来のセルロースナノファイバー(CNF)と考えられます。
なお、CNFについては、プレスリリースではほとんど触れられていません。さらにシリコーン(プレスリリースではシリコンと記載)は界面活性剤の一種で、乳化・ゲル化の目的で化粧品によく使われます。化学的安定性が高く、皮膚への刺激性は低いといわれていますが、石油由来であるため、これを天然由来のもので置き換えることは、意味があるようです。
その他の情報については@Pressの記事をご覧ください。
Malaysia Nanotechnology Industrial Groupが設立(2022年9月10日)
地元メディアであるThe Malaysian Reserveが9月9日の電子版で伝えた内容によりますと、国家ナノテクノロジープログラム (NanoKEB) 2022 の閉会式が9月8日に行われましたが、その際に担当大臣により発表されたものです。
アジア・太平洋地域におけるナノテクノロジー関連産業の市場規模は、2025 年に2.6兆米ドル以上と予測されていますが、MNIG の設立によって、マレーシアのナノテクノロジー関連産業を支援し、価値の高い革新的な製品を国際市場に供給することが目的です。
中小企業のナノテクノロジー産業への貢献は、マレーシアの国家経済にとって大きな可能性を秘めており、今年はRM 4億9010(=1,500億円)に増加すると予測されています。
この式典では、NanoMalaysiaとUniversiti Malaysia Pahang (UMP)の間でMoUが交わされましたが、その中で、マレーシアの農業活動で発生するバイオマス廃棄物を利用して、さまざまなメリットを有する高品質の先端素材と製品を生産することを目指しています。具体的には、グラフェン、ナノセルロース、ナノシリカなどが含まれます。
詳細はThe Malaysian Reserveの記事をご覧ください。
スイスのSulzer、オランダのCELLiCON の株式を取得(2022年9月3日)
Sulzer は CELLiCON と提携して、ナノセルロースの画期的な製造技術をスケールアップします。これは、従来のポリマーに代わる持続可能な植物ベースの代替品となります。
CELLiCONが保有する技術は、ナノセルロースを製造するにあたってのコストと環境負荷を大幅に削減します。そしてナノセルロースを、繊維から接着剤まで、さまざまな日用品の構成要素として、大規模に使用できるようにします。
CELLiCON は、G2 テクノロジーとして知られる画期的な技術を開発しました。この技術は、ナノセルロースの生産に関連するコスト、サイクルタイム、および環境フットプリントを大幅に削減し、この持続可能なバイオポリマーの大規模な利用を可能にします。ナノセルロースは、繊維、高性能繊維、瞬間接着剤やコーティング、複合材料、透明フィルム、デンプンやポリスチレンの代替品など、さまざまな材料や製品に使えます。
Sulzer Chemtech は、G2 テクノロジーのスケールアップと商業化において CELLiCONをサポートします。この提携はCELLiCONがその戦略的目標と長期ビジョンを達成するのに役立ち、バイオベースおよび再生可能な原料のためのSulzer Chemtechの処理技術のポートフォリオを強化します。特に、このソリューションは、ポリ乳酸 (PLA) の特性をさらに強化するために使用できます。ポリ乳酸 (PLA) は、Sulzer Chemtechがグローバルリーダーであり、世界中で最も使用されているバイオプラスチックです。
詳細はSulzerのニュースリリースをご覧ください。
ナノセルロース・ドットコム コメント
G2テクノロジーは、もともとBIOeCON というベンチャーが開発した技術で、ZnCl2を触媒として使うようですが、詳細はわかりません。CELLiCONは2018~2019年にかけて、BIOeCONの知財と株式を取得しています。今回、プラントエンジニアリングを得意とするSulzer Chemtech(Sulzerの子会社)が、G2テクノロジーのスケールアップと商業化を行うようです。
CNF製造企業の韓国MOVIC、2022 Weconomy Startup Challengeに選ばれる(2022年9月1日)
8月29日から30日にかけて、韓国の複数メディアが報道したところによりますと、ソウル産業振興院が選定する、2022 Weconomy Startup Challengeの企業の一つに、セルロースナノファイバーを製造する企業、MOVIC AMT Co., Ltd.が選ばれたとのことです。
Weconomy Startup Challengeはマゴック産業団地の入居大企業や中小企業と共に新たな未来を共にするパートナーを発掘し、成長を支援するオープンイノベーションプログラムで、今年はAI、バイオ、素材・部品・軍事など、未来の核心産業分野で優秀な能力を保有したスタートアップ183社の中から、7月28日の決選評価を経て、10社が最終選定されました。
MOVIC AMT Co., Ltd.は、持続可能で植物由来の新素材であるCNFを化学薬品を使わないプロセスで、低コストで生産しており、CNFをさまざまなな産業分野に適用するために、応用技術を研究開発しています。
MOVICの詳細については、ナノセルロース・ドットコムの、海外企業もあわせてご覧ください。
イオン選択膜を開発しているスウェーデンのCellfion、130万ユーロ調達(2022年9月1日)
Cellfionは、若い起業家 Liam Hardey を CEO として、昨年設立されたばかりのスウェーデンのベンチャー企業です。KTH(スウェーデン王立工科大学)、リンシェーピング大学、RISE での 10 年間の研究をもとに、先駆的なバイオベースの膜を開発しました
この膜は地球上で最も豊富なバイオポリマーである木材由来のセルロースから作られています。木材からCNF(セルロースナノファイブリル)を抽出し、表面を改質することにより、CNFはレドックスフロー電池や燃料電池などのエネルギー貯蔵および変換デバイスの重要なコンポーネントとして使用できる膜のシートに加工できます。
Cellfionは、130 万ユーロの新たな資金を確保し、先駆的なバイオベースの膜の商業化に向けてスタートを切りました。資金は、Almi Invest Green Tech、Voima Ventures、Klimatet Invest、LiU Invest、KTH Holding から提供されました。
詳しくは EU startups の記事をご覧ください。