- 1 スギノマシン、利昌工業、大建工業がCNFを使ったフローリング材を試作・実装(2023年1月31日)
- 2 西光エンジニアリング、低価格化したCNF濃縮品を販売へ(2023年1月28日)
- 3 パナソニック、セルロースファイバー成形材料の量産販売開始(2023年1月27日)
- 4 日建ハウジングシステム、竹CNFを使った遮熱塗料を開発(2023年1月18日)
- 5 ワシントン州立大学、CNCで果樹を冷害から守る研究(2023年1月17日)
- 6 ペンシルベニア州立大学、CNCの乾燥と再分散メカニズムを解明(2023年1月12日)
- 7 東北大学、CNFシート材に半導体特性を発見(2023年1月11日)
- 8 eiicon companyがCNFオープンイノベーション共創パートナーを募集(2023年1月10日)
- 9 静岡産業大学、CNFを活用した商品開発に従事(2023年1月4日)
- 10 米豪の大学、ナノセルロースを使った農業用肥料を開発へ(2023年1月4日)
スギノマシン、利昌工業、大建工業がCNFを使ったフローリング材を試作・実装(2023年1月31日)
スギノマシンが本日、ニュースリリースで発表した内容によりますと、この複合フローリングはスギノマシンが製造したCNF(商品名:BiNFi-s®)を利昌工業が板状に成形し、大建工業が積層して複合フローリングに加工したものです。植物由来材料を主成分としながら高い硬度を保持している点が特徴です。CNFを使用した複合フローリングの実装例としては、日本初となります。
スギノマシンはCNFを高品質・低コスト・低CO2排出量で製造する技術を開発しています。一方、利昌工業と大建工業では、CNFを板材に成形加工し、樹脂を含浸させることで耐水・耐湿性を向上させ、床材として適用可能な高機能板材を開発しています。3社は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発」に採択されたそれぞれの開発テーマに取り組んでおり、テーマの成果を融合することで実用化の方向性を見いだしました。
樹脂を含浸させたCNF製板材は、CNFの優れた力学物性を活かし、高強度・高弾性(高硬度)を実現しています。その樹脂を含浸させたCNF製板材から製造した複合フローリングは、硬度が高いため、木材由来でありながら靴やキャスターによる傷や跡がつきにくく、鉱物製(大理石など)床材の代替として期待されています。
なお詳しい内容は、スギノマシンのニュースリリースをご覧ください。
西光エンジニアリング、低価格化したCNF濃縮品を販売へ(2023年1月28日)
あなたの静岡新聞に本日掲載された記事によりますと、静岡県藤枝市の乾燥機メーカー・西光エンジニアリングは、隣接する食品加工子会社の沖友の敷地内に設置した、マイクロ波減圧乾燥機を使って、一般的なCNF溶液よりも水分量の少ないCNF溶液の生産・販売を行います。これはマイクロ波で水分子に振動を起こして蒸発させる、電子レンジと同様の原理によるものです。一般的なCNF溶液の固形分濃度が2%(水分濃度が98%)なのに対して、同社が生産するCNF溶液の固形分濃度は20%程度になります。
また記事によると、CNFは加熱すると変質しやすいため、通常は水に混ぜた溶液の状態で取引され、輸送費がかさむ上、CNFを取り出すのに高額な特殊薬剤で脱水処理が必要となるなど課題が多いそうです。西光エンジニアリングは、使い勝手の向上や流通コスト削減に貢献するため、茶やドライフルーツなどの製造で培った乾燥技術を応用して、濃縮化に成功したとのことです。
詳しくはあなたの静岡新聞の記事をご覧ください。
ナノセルロース・ドットコム コメント
CNF溶液を濃縮する際の課題は、濃縮によってCNFの繊維同士がくっついてしまって、分散性が損なわれることです。CNFは繊維径が細いことが、その特性を発揮する理由の一つですが、繊維同士がくっついてしまうと、ただのセルロース繊維になってしまいます。なお、海外での工業化事例を含め、ナノセルロース溶液の濃縮は減圧蒸留やスプレードライヤーによって行われるのが一般的なようです。
パナソニック、セルロースファイバー成形材料の量産販売開始(2023年1月27日)
この素材は、セルロースナノファイバー(CNF、繊維の半数以上の径が100 nm 以下)よりも径が太い、セルロースファイバーが使われています。もともとは環境省のCNF関連の補助事業で、家電製品の筐体への適用を目指してパナソニックが開発したものです。
製品名は、kinari CeF55-PP で、仕様は次の通りです。
・組成:セルロースファイバー 55%、ポリプロピレン他 45%
・弾性率:3.80 GPa
・密度(g/立方センチメートル):1.15 g/m3
・ペレット色:乳白色
パナソニックグループでは、この素材の特長と優位性を活かし、車載機構・内装部材、ハウジング内装部材、大物家電外装、美容家電、服飾衣料品、日用品、飲料・食品容器等への展開も進めていくそうです。
詳しい内容は PR TIMES のニュースリリースをご覧ください。
日建ハウジングシステム、竹CNFを使った遮熱塗料を開発(2023年1月18日)
ハウジング・トリビューンVol.654(2023年1号)に掲載された内容によりますと、塗料を開発したのは、日建ハウジングシステムとアマケンテック(熊本県天草市)です。
日建ハウジングシステムは2017年度に、環境省の「セルロースナノファイバー活用製品の事業委託業務」に採択され、アマケンテック、中越パルプ工業、熊本大学、鹿児島県薩摩川内市などと一緒に、竹CNFを使用した建材の開発などを行っていました。この事業の終了後も日建ハウジングシステムとアマケンテックは共同開発を進め、遮熱塗料「ナノ・クールA CNF」を開発したとのとです。
2022年11月には鹿児島県薩摩川内市の複合商業施設「SOKO KAKAKA」に「ナノ・クールA CNF」を塗装して調べたところ、塗装していない場合と比較して室内温度を4℃下げられることが確かめられました。
遮熱塗料の販売価格は10,000円/kgで、今後は全国展開するとのことです。
なおCNFの原料となる竹は薩摩川内市市内で伐採されたものを使い、中越パルプ工業がCNFに加工しているとのことです。
詳細はハウジング・トリビューンの記事をご覧ください。
もとの記事に、遮熱塗料のメカニズムとしてCNFに断熱性があることが理由と書かれていますが、CNFには断熱性はありません(→ 下の記事「ナノセルロースの特性」をご覧ください)。中越パルプ工業が採用している方法で作ったCNFは、単一のCNFまで解繊されていないため、木材やパルプと同様、熱が伝わりにくい性質があるものと推測されます。
次に、塗料の遮熱性能について、11月に行った実証実験で、室内温度を4℃下げたと記載されていますが、遮熱塗料は真夏の日射による室内温度の上昇を防ぐのが目的で使われるものなので、7~8月の外気温が30℃を超えるときにテストするのが一般的です。11月にテストすることに、どのような意味があるのか、極めて疑問です。なお遮熱性能の評価については決まった方法がなく、やり方によってはどんなデータでも得られるので、建築関係者、塗装業者の間でさえ、遮熱塗料の有効性については、意見が分かれています。
セルロースナノファイバー、セルロースナノクリスタル、バクテリアナノセルロースなどのナノセルロースには、さまざまな優れた特性があります。 ただナノセルロースの可能性を強調したいがために、特性を誇張しすぎているようにも思います。ここでは、[…]
ワシントン州立大学、CNCで果樹を冷害から守る研究(2023年1月17日)
農業関係のウェブサイトGrowing Produceに1月16日に掲載された記事によりますと、米国・シントン州立大学のMatthew Whiting教授は、CNCなどから成る水溶液をスイートチェリー、リンゴ、ブドウなどに散布しコーティングすると、未処理の場合に比べて芽が環境中に放熱する速度が遅くなり、低温に対する耐性が向上することを実証しました。しかも既存のスプレーで塗布でき、1回の処理で効果が持続します。
休眠中のチェリーを使った2020年の試験では、1%または3%のCNCを含む溶液の処理によって、24 時間後に耐性が最大 6°F(=3.3℃)、72 時間後にはより高い濃度のCNCが効果的であり、耐性が 8.7°F(=4.8℃)向上しました。効果は、散布後24 時間以内に現れます。
一方、チェリーのつぼみを使った研究では、フィールドで散布後 72 時間で、2% CNCを散布した場合、 23°F (=−5℃)で損傷はゼロでしたが、散布しなかった場合は 50%が損傷を受けました。
国連食糧農業機関(FAO)によると、寒冷による被害は、温帯の果樹への悪影響として世界第 1 位だそうです。
現在、Matthew Whiting教授らは知的財産を確保したうえで、適用する農家を募集しているとのことです。
詳細は、Growing Produceの記事をご覧ください。
ペンシルベニア州立大学、CNCの乾燥と再分散メカニズムを解明(2023年1月12日)
ペンシルベニア州立大学(PennState)のウェブサイトのニュースに1月11日に掲載された記事によりますと、CNCは髪の毛のような形状の末端に負に帯電したセルロース鎖を持っています。水に再分散させると、電気立体反発の結果として、毛髪状の部分は互いに反発して分離し、液体を介して再び分散します。
毛髪状粒子が再分散された後、研究者らはそれらのサイズと表面特性を測定し、それらの特性と性能が一度も、乾燥されたことのないCNCと同じであることを発見しました。彼らはまた、粒子が良好に機能し、さまざまな塩分濃度と pH レベルのさまざまな液体混合物で安定性を維持できることも確認しました。
CNCは、高塩濃度でも再分散することができます。過酷な媒体でも機能を維持し、幅広い用途で使用できる可能性があります。この特性は、添加剤やエネルギー集約的な方法を使用せずに、ナノセルロースの持続可能で大規模な処理への道を開く可能性があります。
この研究成果は、1月17日公開のBiomacromoleculesに掲載されます。
詳しくはPennStateのニュースをご覧ください。
東北大学、CNFシート材に半導体特性を発見(2023年1月11日)
東北大学が1月10日にプレスリリースで発表した内容によりますと、東北大学未来科学技術共同研究センターの福原幹夫リサーチフェロー、同大学大学院工学研究科附属先端材料強度科学研究センターの橋田俊之教授らの研究グループは共同で、CNF組織を制御したナノサイズのアモルファスケナフセルロースナノファイバーシートに、半導体特性が発現したことを確認しました。
ケナフはアオイ科の植物で、木材パルプの代わりに、製紙原料としても用いられているものです。
半導体特性とは、具体的に、CNF組織を制御したナノサイズのシート材のI(電流)-V(電圧)特性は、負電圧領域に顕著な現象を示すn型半導体特性を示しました。また直流通電時の並列回路(低伝導帯)から交流通電時の並列回路(高伝導帯)に変化する特性も示しました。
このような特徴から、高価な高純度シリコン(Si)素材やレアメタルを用いた化合物半導体と異なり、低廉で無害のバイオ素材による半導体作製の可能性も出てきました。また日本に豊富に存在する森林資源を活用することで、植物由来の半導体によるペーパーエレクトロニクスの実用化が期待されます。
詳細は大学のプレスリリースをご覧ください。
eiicon companyがCNFオープンイノベーション共創パートナーを募集(2023年1月10日)
富士市では2019年11 月に富士市CNFプラットフォームを設立し、CNF(セルロースナノファイバー)の実用化に向けた支援や、用途開発の加速、関連産業の創出・集積を図るための産学金官等の連携・ネットワーク構築などを進めており、2022年12月21日の時点で、会員数は186です。
富士市では、CNFのさらなる実用化及び用途開発を進めるために、さまざまなプレーヤーを巻き込み、オープンイノベーションによるCNFの利活用に関する議論やアイディア出し、活用方法や技術のすりあわせなどを行う場が必要と考え、日本最大級のオープンイノベーションプラットフォームAUBAを運営するeiicon companyに対し、「デジタルツールを活用したCNFオープンイノベーション促進事業」を委託しました。
そしてその委託事業の一環として、相川鉄工株式会社、大昭和紙工産業株式会社、東洋レヂン株式会社、日本製紙株式会社 研究開発本部、ユニチカ株式会社のパートナー企業の募集を、オープンイノベーションプラットフォームAUBAで本日から開始ました。
今後はeiicon companyの支援によって、レクチャー、コンサルティングなどを行いながら、年度内のマッチング、さらにオープンイノベーションによるCNFの実用化・社会実装を行うそうです。
詳細はeiicon companyのプレスリリースをご覧ください。
静岡産業大学、CNFを活用した商品開発に従事(2023年1月4日)
記事によりますと、学生と一緒にCNFを活用した商品開発を行っているのは、大昭和加工紙業(富士市)とアッパーズ(清水町)の2社で、大昭和加工紙業がCNFを添加した接着剤を用いて製品化した板紙「ICBボード」を使って、アッパーズがあんどん(照明器具)を開発しており、ICBボード製サイドパネルのデザインの考案を学生に依頼したという内容です。訪日旅行者が喜ぶ、茶畑越しの富士山や駿河湾の深海魚などのデザインを検討しているとのことです。
詳しくはあなたの静岡新聞の記事をご覧ください。
学生が担当しているのはあんどんのデザインで、CNFとは直接関係ありません。またCNFを使った板紙をあんどん(照明器具)に使うという用途も、必ずしもCNFの特性を活かした使い方とはいえません。記事にはCNFが環境に優しい素材とも書かれていますが、これも意味がよくわかりません。静岡新聞はとにかくCNFの話題を発掘したいようですが、いろいろな意味で無理があるように思います。
米豪の大学、ナノセルロースを使った農業用肥料を開発へ(2023年1月4日)
1月3日に科学技術情報サイトInnovateli に掲載された記事によりますと、世界中の膨大な量のバイオマス廃棄物を再利用しながら、作物収量を改善するための、低コストで持続可能な肥料を開発・実用化するとともに、温室効果ガスの排出を増やし、地下水を汚染する化学肥料の排除しようとしているそうです。クイーンズランド大学は、ポリマー・ナノ複合材料の研究をリードしていることから、その原料としてバイオマス廃棄物を使う計画のようです。
ただ記事の内容からは、ナノセルロースがどのように使われるのかは、読み取れませんでした。
詳細は元の記事をご覧ください。