ナノセルロースニュース2021年10月

目次

CNFを使った印刷型フレキシブル湿度センサの試験販売開始(2021年10月29日)

株式会社太陽機械製作所(東京・羽田)は、屈曲性を備え、環境に優しく、設計自由度の高いT-Print-Sensor(高柔軟性湿度センサ)を開発し、用途探索のため、BASEで試験販売を始めました。

この湿度センサは、厚み50µmのフィルム上に印刷されたもので、薄さ、軽さ、耐屈曲性に優れています。ロールやボトルに巻き付けるなどの使い方ができます。また感湿材料にはセルロースナノファイバー(CNF)を、電極材料には水系インキを使用することで、環境に配慮しています。さらに用途に合わせて、必要な大きさをフィルムに印刷することができるため、大きな範囲の検知も可能となっています。

詳細はBASEのウェブサイトをご覧ください。

TEMPO酸化セルロースナノファイバーを用いた全固体リチウム電池(2021年10月28日)

TEMPO酸化セルロースナノファイバー(TOCNF)のナノ構造を活かした、全固体リチウム電池用の銅イオン配位伝導体の開発に成功したことを、東京大学大学院農学生命科学研究科が、同日ウェブで発表しました。

これはTOCNF内のセルロース水酸基に銅イオン(Cu2+)を配位させることで、セルロース分子間を微小であるが適正な間隔に広げることにより、通常はイオン絶縁性のCNF内に分子チャネル構造を形成することで、セルロース分子鎖の方向に沿ってLi+イオンの高速輸送することができるようになったというものです。このLi–Cu–CNFは、他の材料と比べて極めて高電導度、高輸率を発現するとともに、高い強度と安定性を達成しました。

この研究は、アメリカのメリーランド大学ブラウン大学が中心となって行われたもので、アメリカのフロリダ州立大学、ニューヨーク市立大学、デラウエア大学、陸軍研究所と、ドイツのミュンスター大学と東京大学の磯貝特別教授が参加しています。研究成果はNatureに “Copper-coordinated cellulose ion conductors for solid-state batteries” というタイトルで掲載されました。

固体リチウムイオン電池は、高いエネルギー密度と安全性の点で期待されていますが、既存の固体イオン伝導体は厳しい電池条件を満たすことができず、実用化できませんでした。無機のイオン伝導体は高速イオン輸送を可能しますが、その剛性と脆性によって、電極との良好な界面接触が妨げられます。またLiイオンに安定な高分子イオン伝導体は、優れた界面適合性と機械的強度を有しますが、イオン伝導性が低下してしまうという課題がありました。

本研究はTOCNFの特異的なナノ構造を活かして、独自の分子チャネル構造を形成することによって、高性能固体高分子イオン伝導体の調製に成功したものです。その結果、従来の高分子材料の10~1000倍という高いLi+伝導率に加え、Cu2+配位セルロースイオン伝導体により、0.78という高い輸率(従来の高分子では0.2~0.5)を達成してします。また、Li-金属アノードと高電圧カソードの両方に対応できる4.5Vまでの電気化学的安定性も確認しています。

そのため、薄い固体電解質として利用可能であるとともに、低イオン伝導性が課題であった厚い固体電極にも適用可能な、高イオン伝導性バインダーとして利用することができます。これらの結果から、安全で高性能な全固体電池の基本設計コンセプトを提案すると同時に、その機能発現機構を解明したものです。

詳細は東京大学大学院農学生命科学研究科のウェブサイトをご覧ください。

花王、CNFを使いすべり落ちる表面を作るコーティング剤開発(2021年10月27日)

セルロースナノファイバー(CNF)を使った、塗布するだけで物が付着せずにすべり落ちる表面を作り出すことができる水性のコーティング剤技術を開発したことを、花王がニュースリリースで発表しました。

わたしたちは日々の生活の中で、窓の汚れや鳥の糞など、さまざまな付着物に悩まされています。付着物は景観を損なうだけでなく、屋根の積雪で家屋が破損する、太陽光パネルに付着した鳥の糞で発電効率が低下する、といった悪影響を引き起こすこともあります。また、これらを除去するには、多大な労力やコスト、エネルギーが必要です。

ウツボカズラという植物は昆虫をすべらせて捕食することで知られていますが、その壺内面は潤滑液で覆われており、その内面を模倣した表面は「滑液表面」と呼ばれています。花王は、この構造に着目し、塗布するだけで対象面を滑液表面にするコーティング剤の開発を行ないました。同時に、環境や作業者の健康にも配慮し、有機溶媒を用いない設計を検討しました。

コーティング剤でウツボカズラのような滑液表面を再現するには、対象の表面が常に潤滑油で濡れている状態を作る必要があります。花王は、液体を保持する性質に優れたCNFと潤滑油を組み合わせると、CNFが潤滑油を保持し、長期間に渡って微量の潤滑油が放出され続ける表面を作れるのではないかと考えました。
しかし、潤滑油は疎水性なため、逆の性質を持つ親水性のCNFにはなじみません。そこで、花王がこれまで蓄積してきたCNFの表面を疎水化する技術を応用し、潤滑油となじみやすくした疎水化CNFで潤滑油を強固に保持する技術を開発しました。

さらに、環境や作業者の健康に配慮し、有機溶媒を用いない水性のコーティング剤を作ることを目指しました。そのためには、疎水化CNFと潤滑油を水中に微分散(乳化)させる必要があります。今回、CNFが界面活性剤と同様の作用を持つことに着目し、強い力をかけることで、疎水化CNFが潤滑油を覆った毬のような状態で水中に乳化することができました。

また、コーティング剤を対象物の表面に塗布すると、毬のような構造体が積層した膜を形成していることを確認しました。これにより、当初の狙い通りにCNFが潤滑油を保持し、長期間に渡ってすべる性質を維持できる表面が作れたと考えられます。

和歌山県のアドベンチャーワールドで、インコのケージにコーティング剤を塗った板を入れて、糞の付着抑制効果を検証しました。その結果、塗布した板からは糞がすべり落ち、付着を抑制することを確認しました。

以上、疎水化CNFで潤滑油の保持性を改善することで、高持続性の滑液表面を作りだし、さらに、環境や作業者の健康にも配慮した水性のコーティング剤を開発しました。この知見を応用し、今後は付着物によるトラブルの解消やさまざまな表面におけるメンテナンス低減に有効活用できるよう、用途に応じた提案を行ない、商品として発売する予定です。。

詳細は花王のニュースリリースをご覧ください。

空気よりも断熱性が優れた紙をシリカエアロゲル/CNF複合材で実現(2021年10月26日)

株式会社KRIは、シリカエアロゲル粒子をセルロースナノファイバー(CNF)で複合化することで紙のようでありながら空気よりも優れた断熱性の材料を開発しました。空気は動かなければ、金属の1万倍程度の断熱性を持っています。ダウンジャケットが温かいのはこのためです。

住宅や建築物の断熱化等、地球温暖化対策や、スマホなど電子機器の薄型・軽量化のための熱マネージメントの重要性など、優れた断熱材へのニーズが大きくなっています。

現在普及している発泡ウレタンは、優れた断熱材として温室効果ガスをほとんど発生しないというメリットがありますが、素材によっては、燃焼時に有毒ガスを発生する場合があります。また発泡ウレタンの断熱性は厚さに比例するので、よりよい断熱性能を確保するためには一定以上の厚さにする必要があり、スマホなどの小型の電子機器には適用が難しいという課題がありました。

シリカアロエゲル粒子は、空気の分子運動を抑制する微細な細孔から成る多孔体で、空気よりも優れた断熱性がありますが、少し力が加わると崩れてしまうなど、もろくて扱いにくい材料であり、疎水性であるため、水に入れても均一に分散せずに2層に分かれてしまいます。今回、少量のCNFでシリカアロエゲルをネットのように包みこむ形状とすることで、水に分散しやすい複合材を作製することができました。

この水分散液を乾燥させると、セルロースナノファイバーの微細なネットで包まれたシリカエアロゲル粒子の集合体が連結した構造の複合材ができます。

この複合材の特徴は次の通りです。

空気よりも優れた断熱性

室温での空気の熱伝導率は0.026W/m・Kですが、本複合材の熱伝導率は0.015-0.022W/m・Kと、優れた断熱性を示します。

紙の6分の1の軽さ

本複合材の密度は0.13g/cm3で非常に軽いです。ちなみに上質紙は0.80~0.90g/cm3です。

優れた加工性

0.2~数mmの厚さのシートを作製でき、シートは、紙のようにハサミで切ったり、曲げることができます。

簡単な製造方法

水分散液の乾燥のみで成膜でき、金属などの基材に塗布して用いることもできます。

また、セルロースナノファイバーのネットは非常に細かく、シリカエアロゲル粒子が粉落ちししないため、精密機器の断熱材として利用することも可能です。

今回、開発された技術を用いると、紙のように薄く、紙よりも軽い断熱シートを作ることができます。このように軽量で薄い断熱材は、スマートフォンなどのスペースや重さが制約される精密機器の熱マネージメントに最適で、CPUやバッテリーなどのヒートスポット解消など幅広い用途に応用できます。

また、自動車、住宅、冷蔵庫などへも応用が可能であるため、住宅等での結露防止や家電の省スペース、省エネにも貢献します。結露防止等にも利用でき、将来的には分厚いダウンジャケットの代わりにTシャツで防寒できることも考えられます。
詳細はKRIのニュースリリースをご覧ください。

レンゴー、RCNFでプラスチックの代替と削減を目指す(2021年10月25日)

レンゴーでは、木材パルプからセロファンを作る製造工程で生成される原料繊維を微細化することで、ザンテート化セルロースナノファイバー(商品名:XCNF®)と、ザンテート基を脱離させて得られる純粋なセルロースナノファイバー(RCNF®)を開発しています。繊維径はともに3~8nmで、次世代素材として産業界で大きな注目を集めています。

このRCNFについて、同社のサステナビリティレポート2021に、プラスチックの代替と削減を目指す技術として紹介されています。

RCNFは繊維径が細く緻密なネットワークを形成することが可能で、かつ熱安定性が高いことが特徴です。樹脂材料と複合させることで樹脂の強度向上や使用量削減につながる可能性があり、特に自動車部材においてRCNF複合樹脂への代替が実現できれば、軽量化による燃費の向上が期待されます。

2021年6月、武生・金津の両工場に実証プラントを設置し、プラスチックの削減に寄与する素材として早期の商品展開を目指しているとのことです。

詳細は同社のサステナビリティレポート2021をご覧ください。

超低圧高透水性CNF/PA複合RO膜・モジュールの開発と認証取得(2021年10月22日)

信州大学と信州大学アクア・イノベーション拠点は、POU(Point of use)や浄水器用のセルロースナノファイバー(CNF)/芳香族ポリアミド(PA)複合逆浸透(RO)膜モジュールを新開発し、米国認証機関であるNSF(National Sanitation Foundation) International の浄水膜規格である「ANSI58」認証(浄水器)を取得したことを10月21日付プレスリリースで発表しました。新たに開発した膜は、高レベルの不純物除去、科学的安定性、防汚性などの優れた機能を備えています。

浄水器の市場は年々拡大しており、RO膜浄水器の世界市場は2020年には約1兆円、2027年には約2兆円に達し、2027年までは11.5%のCAGRでの成長が見込まれています。RO膜浄水器は、RO膜によってほぼ水分子だけを通過させることができ、海水の淡水化で実績があるほか、飲用に適さない水質レベルの水も浄化できます。そのためRO膜浄水器の優れた機能が、家庭用浄水器として商品化されるようになっており、わが国ではJIS規格も制定されています。

市場で販売されているRO膜浄水器は、浄水回収率が20%以下の製品が40%近くを占め、大量の水道水が無駄に排水されて、水の浪費につながっています。これに対して今回開発されたRO膜浄水器は次のような特徴があります。
浄水回収率が60%以上で、浄水に使う水の無駄が最小限にできる
・水道水圧程度の超低圧でオフグリット使用が可能
優れた不純物除去、化学的安定性、耐ファウリング性などの優れた機能がある
そのため、浄水器分野で新しい市場を創出することが期待されています。

このRO膜ではセルロースナノファイバー(CNF)を芳香族PAと複合したものを使うことで、水処理膜として優れた機能を実現しています。CNFナノコンポジット膜は、プレーンなPA材料と比較して、耐塩素性、防毒性、透水性が高くなりました。さらに膜構造を精緻に制御することができたため、超低圧高透水性RO膜を開発することができました。この研究は、芳香族PA膜の添加剤としてすでに大きな可能性を示しているCNTなどの複合膜で培った科学的知見の反映で成功しました。

今回の成果は、科学技術振興機構(JST)が推進するセンター・オブ・イノベーション(COI)プログラム「世界の豊かな生活環境と地球規模の持続可能性に貢献するアクア・イノベーション拠点」のプロジェクトによるものです。このプロジェクトは信州大学が中核機関となり、日立製作所、東レ、昭和電工、栗田工業、LIXILなどが参加しています。

詳しい内容はプレスリリースをご覧ください。

BNCから人工皮革を作るBucha Bioが55万ドル以上を資金調達(2021年10月21日)

アメリカでバクテリアナノセルロース(BNC)から人工皮革材料 MIRAI™を製造するBucha Bio Inc.(ニューヨーク州)は、人工皮革の生産を拡大するため増資を行い、55万ドル(約6,000万円)以上を集めたと、10月20日にニュースリリースで発表しました。

同社は2019年に設立され、BNCと植物材料から、衣料、包装、建築材料としても使える次世代の材料を開発しています。この材料は日本語の「未来」とイタリア語の「強調して見る」にという意味にちなんで、MIRAI™と名付けられており、ファッション業界において石油化学製品や動物製品に取って代わる材料として注目されています。

Material Innovation Initiativeによると、米国の消費者のほぼすべて(94%)が次世代の素材の購入に関心を持っており、40のファッションブランドのうち38が積極的にそれらを探しています。ファッション業界は、材料市場全体のほんの一部ですが、世界の温室効果ガス排出量の最大10%を生み出しています。MIRAI™のような持続可能性があり、画期的なバイオテキスタイルが求められています。
詳細は同社のニュースリリースをご覧ください。

UPM BiomedicalsとCellboxは、動物細胞を生きたまま輸送する(2021年10月20日)

世界第5位の製紙会社UPM Kymmeneの子会社のUPM Biomedicalsは、CO2インキュベーターメーカーのCellboxとの間で、独自の生細胞輸送ソリューションを提供するための契約に署名したことを10月19日にブレスリリースで発表しました。植物由来の材料だけを用いた、生きた動物細胞の輸送技術により、研究者と製薬会社の間で、生の三次元細胞をやりとりすることができます。

このソリューションは、UPMのナノセルロースのハイドロゲルと、CellboxのポータブルCO2インキュベーターを組合せることによって実現しました。機械的ストレスから細胞を保護し、輸送中の細胞の活性を維持します。このソリューションによって最も複雑で感度の高い細胞培養物の輸送を容易にし、輸送後に細胞を容易に回収することができます。

UPM Biomedicalsのディレクター、Johana Kuncova-Kallio氏は次のように述べています。

私たちの材料は、ナノセルロースと水だけでできており、動物由来の成分や汚染物質は含まれていません。現在、細胞を輸送するためには、細胞を凍結する必要があります。Cellboxによるこの新しい輸送ソリューションでは、生きている細胞は、細胞が棲んで成長するのに最適な環境のまま輸送されます。ナノセルロースマトリックスと輸送インキュベーターの組み合わせは、冷凍輸送と比較して、輸送後のより高い細胞収量を保証し、解凍のための時間を短縮し、スタッフのリソースを節約し、結果の不確実性を取り除き、研究者がすぐに使用できる細胞を他の人に輸送できるようにします。これは、学界から産業界への3D細胞モデルの普及を加速するためのことができます。

詳細はUPMのプレスリリースをご覧ください。

株式会社サンエース、CNFを活用したフィルター機能向上剤を開発(2021年10月19日)

塩化ビニル安定剤、金属石鹸、その他特殊添加剤の製造販売を手掛ける株式会社サンエース(神奈川県愛川町)は、セルロースナノファイバー(CNF)を活用し、マスクなどフィルターの捕集効率を向上する液体のフィルター機能向上剤を開発し、特許申請を進めていることを、プレスリリースで発表しました。

このフィルター機能向上剤は、

フィルターの目を高密度化し、物理的に「異物を通さない」力を向上
②極細繊維の網目により、捕集を高めるため「通気性能を確保」
スプレーや、液に浸すだけで処理ができ「手軽に使用可能」
乾式フィルター全般に使用できる「高い汎用性」

という特徴があり、次のような用途を想定しています。

①布マスクの高メッシュ化
②空気清浄機等のフィルターの機能向上
③住宅吸気フィルターの機能向上

フィルター機能向上剤は中間原料のため、今後、日用品、家電、住宅設備、機械設備メーカーとの協業を通じて製品化を行う計画です。価格は供給形態により異なるため、仕様確定後に見積もるとのことです。
詳細は同社のウェブサイトをご覧ください。

大分大学発ベンチャーが大分県竹田市で竹からCNFを生産へ(2021年10月19日)

大分大学発ベンチャー企業、おおいたCELEENAは、竹を原料とするセルロースナノファイバー(CNF)の工場を大分県竹田市内に整備し、2022年2月に稼働させるとの内容の立地協定を、大分県竹田市と締結しました。

各メディアの報道を総合すると、大分大学理工学部の衣本太郎准教授が発明した竹の素材化技術を事業化するために、株式会社おおいたCELEENAが9月30日に大分市に設立されました。

同社は、竹からCNFを製造する工場を竹田市に建設する計画で、10月18日に大分県竹田市と立地協定を結び、市内の幼稚園の跡地を市が同社へ提供することになったとのことです。工場は2022年2月を目途に稼働させる予定で、3年後の2025年には1億円程度の売上高10~20人の雇用を見込んでいるそうです。当面は主に化粧品や塗料の原料としての需要を想定しているとのことです。

同社で製造するCNF「CELEENA®」は、大分大学プロセスと呼ばれる独自の方法で製造されます。プロセスの概要は次の通りです。
①伐採した竹の皮をむき、つぶしてから圧力鍋で煮て竹綿を製造します。
②竹綿に化学薬品で処理を加え竹セルロースを作ります。
③さらに竹セルロースをナノ化してCNFをつくります。

このプロセスで作られるCNFは、セルロースの純度が高く、安全・安心な素材であること、増粘性がありセルロース分子の並びの指標である結晶性が高くアレルギー性が低くて、耐熱温度や強度に優れているなどの特長を持っています。

KRI、シリカエアロゲルとCNFの複合材を開発(2021年10月19日)

大阪ガス子会社のKRIが、紙の6分の1の軽さで空気より高い断熱性を持つ、シリカエアロゲルとセルロースナノファイバー(CNF)の複合材を開発したことを、日刊工業新聞が10月18日にウェブで報道しました。この複合材をグラスウールに含浸すると、ガラス板と同等の遮音特性で、重量が16分の1の素材も作れるとのことです。

詳しい内容は日刊工業新聞のサイトでご覧ください。

イタリアで古代の本の修復にセルロースナノクリスタルが使われる(2021年10月16日)

イタリアのピサ大学の研究者チームが、古い紙に貼り付けることで、紙の修復と保護ができるセルロースナノクリスタル(CNC)からなる新しい材料を開発しました。この材料はいつでも除去することができるほか、接着剤による損傷を回避することができます。

Webポスティング会社Byohostingが運営するサイトBreaking Latest Newsに10月15日に掲載された記事によりますと、これはトスカーナ大学、ローマ・トルヴェルガタ大学、ローマ・ラ・サピエンツァ大学、国立新技術庁の協力を得て考案した新技術です。

従来、古い紙の修復には和紙の技法を使用していましたが、接着剤が時間とともに劣化することが問題でした。セルロースベースの糊を使っていますが、腐りやすく、保存状態が悪いと材料が劣化する可能性があります。

新しい材料は修復の概念を根本的に変えるもので、持続可能で可逆的な修復方法に変換することができ、環境への配慮という観点からも優れたものです。ナノセルロースは、紙と同じ素材でできているため、復元する作品のアイデンティティを尊重しています。天然素材の分子構造や芸術作品を構成する素材に関する高度な知識のおかげで、私たちの文化遺産を保護できるようになりました。

詳細は元の記事をご覧ください。

Norske Skog水性塗料への添加用としてCNFの商業販売を開始(2021年10月15日)

ノルウェーの紙・パルプ会社Norske Skogは、同社が開発したセルロースナノファイバー(CNF)であるCEBINAを、水性塗料で使用するための添加剤として商業販売を開始することを発表しました。年間契約額は約700万円です。

同社の10月14日付プレスリリースの内容は次の通りです。

昨年、CEBINAは、ノルウェー国内外でエポキシ床材を製造する業者に対して、最初の商業販売を達成しました。CEBINAの商業開発は順調に進んでおり、今回の新しいアプリケーション分野への商業参入は重要なマイルストーンとなります。これは定期的な大量配達と約50万ノルウェークローネ(約700万円)の年間契約金額となる最初の売買契約であり、さらなる成長の可能性があります。

「CEBINAの新しいアプリケーションへの販売は、製品の幅広い環境的に有益な可能性のさらなる証拠を提供するため、非常にエキサイティングです。また、定期的な売上高と収益を生み出し、CEBINA事業の財務基盤の構築を開始することができます。CEBINAの開発は、環境に配慮した持続可能な製品の必要性を認識している企業、コンサルタント、研究者と緊密に協力して行われます」とNorske Skog SaugbrugsのCEBINAの商業開発ディレクターであるHugo Harstad氏は述べています。

CEBINAは、流体のレオロジー制御と固体材料の強度向上を行うための天然繊維ベースの製品です。2006年からNorskeSkog Saugbrugsで開発されています。CEBINAは、木質繊維をセルロースナノフィブリル(CNF)と呼ばれる非常に小さな部分に分解することによって製造されます。1グラムのCEBINAは、テニスコート全体をカバーすることも、地球全体に8回伸ばすこともできます。これらの信じられないほどの表面と長さの特性は、CEBINAに独自の品質を与えます。Norske Skog Saugbrugsは、R&D機関であるRISE PFI、NORCE、およびRe-Turnと緊密に協力してきました。ノルウェー研究評議会とイノベーションノルウェーからの支援が成功の鍵を握っています。

「現在CEBINAの生産能力は、グレードに応じて年間100〜500トンの範囲です。現在、需要は既存の容量の範囲内です。ただし将来の需要の発展、進行中の商談、および潜在的な国際販売契約に応じて、拡張が検討されます。拡張はSaugbrugs工業用地の既存のインフラストラクチャと原材料へのアクセスを大幅に利用するため、比較的資本が少なくて済みます」とHugo Harstad氏は述べています。

大王製紙のCNF成形体がバスのフロントバンパーに採用(2021年10月14日)

大王製紙は、セルロースナノファイバー(CNF)とパルプ繊維を複合化した成形体ELLEX-Mを使ってバスのフロントバンパーをヤマセイ株式会社(愛媛県松山市)と共同で製作し、観光バスに実装したことを発表しました。CNF複合材料が実車の外装部材に使われた初めてのケースではないかと思われます。

同社の10月13日付ニュースリリースによりますと、バスのバンパーは、ガラスマットを特定の厚さまで人の手で型に積層する「ハンドアップレイ成型」で製造されており、今回製作したバンパーもこの方法で作られています。すなわちガラスマットとCNF成形体を積層することで作られました。

鉄製のフロントバンパー(重量5.0kg)に対し、今回製作したものは2.9kgで、42%の軽量化が図られています。さらにガラスマットにCNF成形体を加えたことで、たわみにくくなったとのことです。

このバスは、道後プリンスホテルグループ新観光ツアーバス「プレミアムバス」で、10月28日10時より同ホテル玄関前で行われる出発式・除幕式でお披露目されるとのことです。

農業土壌に適用するためのナノセルロースの超吸水性ポリマー(2021年10月14日)

オーストラリアのモナッシュ大学は、農業で灌漑に使用する水の量を減らすための、ナノセルロースを用いた超吸収性ポリマー(SAP)について、研究成果を学位論文として公開したことをウェブサイトで10月13日に発表しました。

オーストラリアのモナッシュ大学は、農業で灌漑に使用する水の量を減らすための、ナノセルロースを用いた超吸収性ポリマー(SAP)について、研究成果を学位論文として公開したことをウェブサイトで10月13日に発表しました。

水が貴重な地域で行われる農業では、保水性に優れた超吸収性ポリマー(SAP)は魅力的で、ポリアクリルアミド(PAM)またはポリアクリレート(PA)の化石燃料由来のポリマーがすでに使われていますが、分解速度が遅いため、環境と健康への懸念があります。そこで地球上に最も大量に存在する天然高分子であるセルロースをベースにしたSAPの開発を行いました。セルロースは容易に入手でき、生分解性があり再生可能です。ナノセルロースからのSAP製造を、従来の凍結乾燥ではなく50℃でのオーブン乾燥により行うことで、コストダウンを行うとともに、凍結乾燥したものよりも膨潤能力が高いSAPが得られました。さらに市販のポリアクリルアミドベースの合成SAPとの比較でも、良好な結果が得られました。ナノセルロースSAPの使用量は0.5wt%です。

詳しい内容はこちらの論文をご覧ください。

国内唯一のCNCメーカー フィラーバンクが展示会プレイベントに出展(2021年10月12日)

東北大学発のベンチャー企業で、国内で唯一、セルロースナノクリスタル(CNC)を製造・販売しているフィラーバンクは、11月2日に開催される京都スマートシティエキスポ2021プレイベントにオンライン出展することを、自社のウェブサイトで公表しました。

同社では、綿くずからCNC粉末を製造しているほか、これを用いた綿糸の糊付け用CNCや、それを用いたタオルなども販売しています。

展示会当日はオンライン商談会も開催されます。なお展示は12月31日まで継続されるとのことです。詳しい内容は同社のウェブサイトをご覧ください。

メイクアップ製品には、疎水性の油性成分と顔料などの着色剤が含まれているため、クレンジングオイル、バーム、クリームなどのオイルベースのリムーバーを使用して除去する必要があります。

LG H & Hがバクテリアセルロースを使ったメイクアップベースの特許を申請(2021年10月7日)

韓国のLG Household & Healthcare(LG H & H)は、油性のメイク落としなしでメイクを簡単に落とすことができるバクテリアセルロースを使った化粧品組成物の特許を申請したことを、化粧品業界のニュースサイトCosmeticsdesign Asiaが10月6日に報じました。

メイクアップ製品には、疎水性の油性成分と顔料などの着色剤が含まれているため、クレンジングオイル、バーム、クリームなどのオイルベースのリムーバーを使用して除去する必要があります。

しかしこのようなクレンジングプロセスは、皮膚を刺激する可能性があります。この問題を解決するために、LG H & Hは皮膚に疎水性膜を形成するが、特定の温度に達するとその構造を変化させて皮膚から剥離する温度感受性ポリマーに着目しました。

これはフィルムタイプまたはチュービングマスカラで使用されている技術と同じです。これらのマスカラは長持ちし、汚れが付きにくいうえ、ぬるま湯で簡単に取り除くことができます。ポリマーベースがバラバラに落ちるため、クレンジングの際に、毛穴やシワに詰まったメイクを落とすのが難しいという欠点がありました。

新しい技術ではバクテリアセルロースから合成されたセルロースミクロフィブリルを使用します。これはすでにシートマスクやジェルマスクの化粧品に使用されています。この材料は、植物由来のセルロースと比較して、結晶化度が高く、薄く、しかも物理的強度が高くなっています。

検討を重ねた結果、バクテリアセルロースでコーティングされた化粧品組成物は、毛穴やしわなどの凹凸のある表面の上でも、皮膚上に均一なフィルムを形成することができます。水と接触すると、高密度のミクロフィブリルネットワークが絡み合い、皮膚から離れるため、強力な洗剤がなくても完全な洗浄が可能になります。

このフィルムの取り外しやすい特性は、皮膚への滞留力が弱いことも意味していましたが、同社ではセルロースミクロフィブリルとポリビニルアルコールフィルム形成ポリマーを組み合わせて、皮膚上でのフィルムの形成を強化しました。

詳しい内容はCosmeticdesign Asiaの記事をご覧ください。

CNFをアウトソールのゴムに練り込んだスニーカーを発売(2021年10月5日)

スピングルカンパニーは、CNFをアウトソールのゴムに練り込んだ「RUBEAR CNF ソール」、アッパーに廃業した織元のデッドストック生地を天然染料で染色したアップサイクル素材などを使ったサスティナブルなスニーカー「SPINGLE MOVE SPM-467」を10 月20日から発売することをPR Timesのプレスリリースで10月4日に発表しました。

「RUBEAR CNF ソール」を使ったスニーカーは今年6月に発売されており、ソールの摩耗性を従来比約40%低減しています。今回のスニーカーはこれに加え、アッパーには、開発担当者が素材問屋で発掘した、廃業した岡山の織元のデッドストック生地をアップサイクルしています。

またライニング・インソールに使用した「COOL MAXIM/クール マキシム」という素材は、防臭・抗菌・防カビ機能を持ち、吸汗性・拡散性にも優れた機能素材で、55%が使用済みペットボトルや繊維くずなどの再生素材から作られています。

詳しくはPR Timesの記事をご覧ください。

日本製紙のグループ会社、ファンケルラボと共同でCNFを使った化粧品発売(2021年10月4日)

日本製紙グループの日本製紙パピリアは、ファンケルラボとコラボレーションして開発したエシカルスキンケアブランド「BIOFEAT.」を創設し、10月15日よりクレンジングオイル、フェイスウォッシュ、ローション、モイストクリームの4アイテムを同社のECサイトで発売することを、本日ニュースリリースで発表しました。

自然由来の独自成分として、日本製紙が開発したCNFであるセレンピア®を配合していることと、ボタニカル成分(植物由来成分)を含んでいることを特徴としています。セレンピア®の表示名称は「セルロースガム」で、保湿成分として使われています。

製品の詳細と価格(税込)は次の通りです。

  • ジェントルクレンジングオイル 内容量:110ml、販売価格:5,280円
  • トリートメントフェイスウォッシュ 内容量:100g、販売価格:4,620円
  • ナノエマルションローション 内容量:140ml、販売価格:6,050円
  • プロテクティブモイストクリーム 内容量:40g 販売価格:6,820円

詳細は日本製紙のニュースリリースをご覧ください。

ナノセルロースを使った生分解性のある農業用マルチフィルムの開発(2021年10月2日)

ドイツのフラウンフォーファー研究所の研究チームが、生分解性があり持続可能なマルチフィルムを開発するためのNewHyPeプロジェクトに、ドイツ、フィンランド、ノルウェーの研究および産業パートナーと一緒に取り組んでいることが、科学技術情報サイトPhys.orgに10月1日に掲載されました。

農業用マルチフィルムは、農地にかぶせることで雑草の成長を抑制し、土壌温度や水の蒸発を制御します。現在マルチフィルムは石油ベースのポリエチレン(PE)で作られているため、収穫後に手間をかけて回収する必要があります。しかし完全に回収することはできないため、PEの残留物は土壌に蓄積します。

微生物がPEを分解することができないため、PEの破片は土壌に物理的な影響を及ぼし続け、食物連鎖に入る可能性があるといわれています。生分解性プラスチックであるポリ乳酸から作られたマルチフィルムはすでに入手可能ですが、非常に高価です。

サイトによると、開発中のマルチフィルムはセルロースベースの紙を使っているそうです。紙は完全に分解しますが、分解速度が速すぎるため、農業シーズンの間、使うことができません。そこで紙に機能性コーティングを行います。

コーティング材料はORMOCER®で作られています。これはフラウンフォーファー研究所が30年以上前に開発した有機ポリマーと無機ケイ酸塩のハイブリッドポリマーで、接着性、機械的・熱的安定性に優れています。

さらに機能化ナノセルロースも使用しています。これはアスペクト比が高いため、安定性が高く、接着剤のように個々の繊維を架橋することができます。そしてバインダーシステムは、効果的にコーティングとして機能します。

さらに詳しい内容は、Phys.orgの記事をご覧ください。

CNCを使って構造材を強化しプラスチックを溶融や燃焼に強くする(2021年10月2日)

アメリカ・モンタナ州立大学(MSU)のDilpreet Bajwa教授は、植物材料の革新的なエンジニアリングアプリケーションに関する研究業績が認められ、国際的な非営利の教育および科学組織である工芸作物振興協会から2021年の優秀研究者賞を受賞しました。

10月1日付のMSUニュースによりますと、彼の研究はセルロースナノクリスタル(CNC)を使用して構造材を強化し、プラスチックを溶融や燃焼に対して耐性を強化する取り組みです。CNCは、防弾チョッキの製造に使用される材料であるケブラーと同じくらい高強度です。彼は複数の特許を出願し、関連業界と連携しているとのことです。詳細はMSUニュースをご覧ください。

紙の需要減少で日本製紙がCNFを使った化粧品事業参入へ、NHK報道(2021年10月2日)

日本製紙がセルロースナノファイバー(CNF)を使った化粧品事業に参入することを、NHKがニュースで報道するとともに、ウェブサイトに記事を掲載しました。なお10月2日時点で、日本製紙のウェブサイトには、本件に関するプレスリリースなどはありません。

NHKの報道を引用して紹介します。

デジタル化の進展などで紙の需要が減少する中、日本製紙は紙の原料となる木材の繊維から作られた素材を使って、新たに化粧品事業に参入することになりました。10月中旬から新たに自社ブランドを立ち上げて化粧品事業に参入します。

具体的には、紙の原料となっている木材の繊維を細かくほぐしたセルロースナノファイバー(CNF)を活用して、グループ会社が化粧品メーカーと共同で洗顔料や化粧水などを開発しました。すでに化粧品の販売や製造に必要な許可を取得していて、10月からインターネットで販売を始めるということです。

CNFは保水性に優れているということで、事業担当者は「コロナ禍でもスキンケアの需要は堅調で、化粧品事業の売り上げを2025年度には5億円規模まで拡大させたい」と話しているそうです。人口減少やデジタル化の進展で紙の需要が減少する中、製紙業界の間で新規事業を模索する動きが活発になっています。

なおNHKの記事はこちらからご覧になれます。

CNCを使った自己修復できるコンクリート材料を開発・実証(2021年10月1日)

Universitat Politècnica de València (UPV、バレンシア工科大学) と Politecnico di Milano(ミラノ工科大学)は新しい超耐性の自己修復コンクリート材料を開発しました。科学技術情報サイトPhys.orgに9月30日に掲載された記事によりますと、このコンクリート材料はひび割れのある状況で、従来の高性能コンクリートと比較して30%高い耐久性があります。

亀裂が発生した場合、自己修復技術を適用することにより、自動的に修復することができます。またこの材料には通常時と異常時のメンテナンス作業の両方が削減され、現在の設計上の耐用年数である50年を超えて使用できることです。海中や海岸に設置する建造物などの、非常に過酷な環境にさらされるインフラや地熱発電所にも適しています。

この特性は、コンクリート混合物の設計と、結晶性添加剤であるアルミナナノファイバーとセルロースナノクリスタル(CNC)などの成分の使用したことによるものです。

この超高強度セメント系コンパウンドを使った構造物が6つ建設されています。そのうちの2つはバレンシアにあります。

浮体式洋上風力発電所用のフロート

  • 設置主体:Rover MaritimeとUPV
  • 設置場所:サグント港

ムール貝養殖用のいかだ

  • 設置主体:DRC(バレンシアの企業)
  • 設置場所:バレンシア港

このほかにも、イタリアに2つ、アイルランドに1つ、マルタに1つあります。

これらの構造物にはセンサーが取り付けられており、時間の経過とともに構造物がどのように変化するか、常に監視されています。そのデータを使って、構造物の状態を確認したり、最も適切かつ経済的で影響の少ない方法によって損傷の悪化を防ぐために必要な対策を講じることができます。つまり受動的な対応ではなく、能動的な対応を取ることができます。

詳細はPhys.orgの記事をご覧ください。

セルロースナノファイバーで繊維をコーティングする東北整練の技術(2021年10月1日)

再生セルロース繊維は、原料のセルロースをいったん溶解して再び繊維にしたもので、木材パルプを原料にしたレーヨンと、綿糸には使用できないコットンリンター(産毛の部分)を原料にしたキュプラなどがあります。旭化成のベンベルグ®はキュプラ繊維の商標名です。繊研新聞社のウェブサイトに「旭化成「ベンベルグ」のイージーケア性が向上」というPR記事が9月30日に掲載されましたが、これにセルロースナノファイバー(CNF)が深く関わっています。

ベンベルグなどの再生セルロース繊維は、一般的に水や摩擦に弱く、洗濯すると縮んだり、しわがついたり、擦れて色落ちすることがありました。これを解決したのが、山形県米沢市の染色加工場、東北整練の加工技術「MVA」です。

MVAは、セルロースナノファイバー(CNF)で繊維一本一本をコーティングする技術で、生地にしてから加工します。加工された繊維は、繊維本来の風合いを損なわずに高い機能を発揮します。ベンベルグの生地を家庭で洗濯すると、6~10%収縮するのに対して、MVAをすると洗濯収縮率は3%以内に抑えられます。

また色落ち度合いを測る湿摩擦堅牢度は、従来加工が1~2級に対し、濃色でも3級以上の結果が出ているほか、洗濯後にしわになりにくいことも確認されているそうです。

このようにPVA加工によって、イージーケア性が向上したほか、石油系有機溶剤などを使うドライクリーニングが不要になるため、環境面でも効果があります。

詳しくは繊研新聞社のウェブサイトをご覧ください。

エチオピアでビール粕からCNCを製造する研究(2021年10月1日)

Hindawiが出版するオープンアクセス雑誌Journal of Nanomaterialsの最新号に “Synthesis of Cellulose Nanocrystals (CNCs) from Brewer’s Spent Grain Using Acid Hydrolysis: Characterization and Optimizationt”(酸加水分解を用いたビール醸造の使用済み穀物からのセルロースナノクリスタル(CNC)の合成:特性評価と最適化)という論文が掲載されました。投稿者はアディスアベバ科学技術大学の研究グループです。

内容はビール粕を使って酸加水分解によりCNCを製造し、加水分解パラメーター(加水分解時間、温度、液固比、および酸濃度)を最適化したというもので、特に目新しいものではありません。論文はオープンアクセスなので、こちらからご覧になれます。

ナノセルロース・ドットコムが注目したいのは、次の2点です。

  1. ナノセルロースの製造は世界中どこでもできるこれまで、エチオピアでナノセルロースの研究が行われていることは知りませんでした。本研究は他国の大学などとの共同研究ではなく、アジスアベバ工科大学が単独で行っています。ナノセルロースの製造は、原料と装置があれば、世界中どこでも可能です。
  2. 原料がバージンの資源から廃棄物・副産物にシフトこの研究では、CNCの原料としてビール粕を使っています。この論文は「持続可能な開発のためのナノマテリアル:国連2030の目標」という特集号で掲載されたものです。ビール粕はまとまった量が発生し、性状が安定していることから、廃棄物や副産物の中では比較的使いやすい原料と思われます。一方でビール粕は飼料としての用途があるため、ナノセルロースの原料とすべきかどうかという点については、疑問があります。ただバージンの資源からの廃棄物・副産物へのシフトは続くものと思われます。