ナノセルロースニュース2022年3月

目次

米国・Alfa Chemistryがナノファイバーの取り扱いを開始(2022年3月31日)

ニューヨークに本社を置くナノマテリアルの受託研究機関Alfa Chemistryが、セルロースナノファイバーの取り扱いを始めたことを、複数のメディアが報じました。繊維径50~1000nmのものが対象で、研究開発用とのことです。

Alfa Chemistryは製薬、バイオテクノロジー業界、大学、研究機関に材料化学の分野でサービスを提供している企業です。すでにさまざまなナノマテリアルを提供していますが、セルロースナノファイバーの取り扱いを始めました。

ナノファイバーのサイズは50〜1000 nmで、表面積対体積比が高く、相互接続されたナノ多孔性、大量輸送特性などの独自の特性を備えています。ナノファイバーはエネルギー貯蔵および生成、化学的および生物学的センサー、製薬および繊維産業、浄水、および環境修復などの分野での用途で注目されています。

大きな比表面積、多孔性、優れた透過性などの特性により、ナノファイバーは小さな粒子を吸着および分離するためのろ過材料として機能するのに適しています。ろ過精度が向上した修飾ナノファイバーは、金属イオン吸着、空気ろ過、液体ろ過などのシナリオで使用できます。

詳しくは同社のウェブサイトをご覧ください。

大王製紙、CNF複合樹脂パイロットプラント稼働(2022年3月29日)

大王製紙は、セルロースナノファイバー(CNF)複合樹脂の製造技術の確立を目的として、三島工場(愛媛県四国中央市)にパイロットプラントを設置し、3月に稼働を開始しました。

同日に公表されたプレスリリースによりますと、設備の生産能力は最大年間100 tで、水分散液、乾燥体のパイロットプラントに併設されました。これによりCNFの用途としてニーズが非常に高いCNF複合樹脂について、一貫製造プロセス確立に向けた実証、およびサンプル供給量の増大を加速させることができます。

同社のCNF複合樹脂は、セルロース濃度が55%で、ELLEX-R55と名付けられています。2020年よりペレットとしてサンプル供給が行われており、樹脂材料設計の自由度が高く、混練・成形加工しやすい特徴があり、樹脂の混練や成形のメーカーが使いやすい仕様です。

CNFの実用化、用途拡大のためにはCNF複合樹脂の製造コスト低減が重要であり、一貫製造プロセス開発では、CNFの前処理プロセスや複合樹脂の生産性を飛躍的に改善する技術の開発を進めています。
CNFの前処理プロセスの開発では、同社がこれまで培ってきた抄紙技術を駆使した変性セルロースの量産技術の確立を進めるとともに、複合樹脂の生産性改善では、芝浦機械と共同でCNFと樹脂の高効率な複合技術を開発し、今回導入した設備に反映させています。

詳しくは同社のプレスリリースをご覧ください。

カナダ・オンタリオ州、森林バイオマスアクションプランを公開(2022年3月29日)

オンタリオ州政府は、雇用を確保し、経済発展を支援し、オンタリオ州の森林部門の持続可能性を促進するために、森林バイオマス資源の使用を奨励する5年間のアクションプランを3月28日に公開しました。

オンタリオ州には広大な森林があり、林業は年間180億ドル(=1兆8,000億円)の収益と、148,000人の雇用を生むを主要産業の一つです(日本の林業のGDPは2,300億円)。これを有効活用することで、森林バイオマスの生産量を2倍にすることができるといわれています。そしてその森林資源は材料、ケミカル、エネルギーの3つの用途で使われていますが、それぞれの用途ごとに、新技術の開発を進め、新たな用途開発を計画しています。

詳しくはアクションプランをご覧ください。

ナノセルロース・ドットコム コメント

アクションプランのアイテムの一つとして、ナノセルロースも挙げられていますが、あくまでも用途の一つです。地域の森林バイオマスからいかに多くの収益を上げるか、あるいは地球環境への負荷を低減するかが目的で、そのための手段の一つがナノセルロースです。そのため、カナダでは、手段の一つであることに見合った額の公的資金が投じられています。
ナノセルロースを使うことが自体が目的となっているどこかの国とは、考え方が根本的に違います。

今後、ナノセルロースの需要が拡大し、世界共通商品となったとき、外国から輸入した木材チップからナノセルロースを製造する、あるいは、地域で少量発生する食品残渣からナノセルロースを製造するという発想で生き残れるのでしょうか。

CNF入り漆喰タナクリーム、高知県地場産業大賞奨励賞を受賞(2022年3月23日)

田中石灰工業が開発した、クリーム状のセルロースナノファイバー(CNF)入りの土佐塩焼き石灰「タナクリーム」が、第36回高知県地場産業大賞奨励賞を受賞したことを、同社がウェブサイトで発表しました。

タナクリームは、土佐しっくいが持つ長所をそのままに、DIYでも使いやすいよう、土佐塩焼き石灰をクリーム状にしたものです。本来、左官職人が現場で石灰やのりを練り合わせて作っているしっくいを、誰でも缶を開けてすぐに使えるようにした画期的な商品です。

このほどタナクリームが、高知県地場産業大賞奨励賞を受賞しました。この賞は高知県内で作り出された優れた地場産品や地場産業振興に貢献のあった活動を顕彰する賞で、昭和59年から毎年開催されており、今年が第36回となります。

2021年5月に刷新されたタナクリームは、CNFを配合することで微細クラックの発生リスクを大幅に減少させたこと、新型コロナウイルス不活化が第三者機関において確認されたこと、今後、DIY市場や海外への拡販も視野に入れ活動していること等が高く評価されたことにより受賞となりました。

詳細は同社のウェブサイトをご覧ください。

巴川製紙所、セルロースマイクロファイバー製品の量産化に注力(2022年3月23日)

巴川製紙所は中長期の成長戦略の中で、コストの高いセルロースナノファイバーではなく、繊維径が太いセルロースマイクロファイバーの量産化を目指すとの報道がありました。

3月22日にロイターがウェブサイトのニュースで公表したところによりますと、巴川製紙所はセルロース材料技術の展開として、セルロースマイクロファイバー製品の量産化を目指すとのことです。セルロース材料市場では他社がセルロースナノファイバー(CNF)の開発に注力していますが、同社はCNFがコスト高である点や、他の素材と複合化しにくいことなどを、多数の問題点があるとの認識を持っており、あえて解繊の度合いをマイクロファイバーにとどめているそうです。

マイクロファイバーであればコストにおいてメリットがあり、紙などと混ぜても利用でき、セルロース繊維の混入が51%以上であれば、可燃物として廃棄可能という利点も生かせるとのことです。現在、同社では用途を開発を進めており、各種サンプル提供も行っています。なおセルロースマイクロファイバーでは、用途が決まって本格的に市場が拡大するまで、時間を要するとの認識だそうです。

詳細はロイターほかの記事をご覧ください。

パナソニック、新しいセルロースファイバー成形材料を開発(2022年3月22日)

パナソニック株式会社マニュファクチャリングイノベーション本部は、これまでに開発してきた植物由来のセルロースファイバーを高濃度に樹脂に混ぜ込む技術を、植物由来のバイオポリエチレンへ展開し、バイオマス度90%以上の成形材料を開発しました。

同社はセルロースナノファイバーよりも繊維径が太いセルロースファイバーを樹脂に混ぜ込むことで、石油由来の樹脂量を減らす研究開発を行っており、2021年にはセルロースファイバーの濃度が70%の樹脂を開発していました。

3月18日付の同社のプレスリリースによりますと、今回開発したのは、従来開発した技術を植物原料由来のバイオポリエチレンに適用することで、バイオマス度が90%以上の成形体を作る技術です。
軟らかいバイオポリエチレンにセルロースファイバーを高濃度添加することで、2021年に同社が開発したバイオマス度70%の成形体と同等強度の実現するとともに、また白色材料として開発することにも成功したとのことです。

詳しい内容は、同社のプレスリリースをご覧ください。

セルロースナノクリスタルが冷凍食品の品質保持に貢献(2022年3月22日)

セルロースナノクリスタル(CNC)が、氷の結晶の形成と成長を妨げることによって、冷凍食品の品質保持に寄与することができることを、テネシー大学の研究グループが発表しました。

アメリカ化学会(ACS)がニュースリリースとして3月20日に発表した内容によりますと、テネシー大学のWu教授のグループが、3月20日から24日に開催しているACS Springで、CNCが氷の結晶の成長を抑制し、冷凍食品の食感が悪くなるのを防ぐことを発表します。

作りたてのアイスクリームには小さな氷の結晶が含まれています。しかし、保管と輸送の間に、氷は溶けて再成長します。この再結晶プロセスの間に、小さな結晶が溶け、水が拡散して大きな結晶に結合し、それらを成長させます。氷の結晶が50µmより大きくなると、デザートは粒子の粗い氷のような質感になり、食感が変わります。したがって、氷の結晶の形成と成長を制御することは、冷凍食品の品質を維持するために重要です。

一部の魚、昆虫、植物は、氷の結晶の成長と戦う不凍タンパク質を生成するため、氷点下の温度で生き残ることができます。このタンパク質は両親媒性です。つまり水に親和性のある親水性の表面と、水をはじく疎水性の表面を持っています。Wu教授らはCNCも両親媒性であることを知っていたので、アイスクリームの氷晶の成長を止めることができるかどうかを確認する価値があると考えました。

研究の結果、アイスクリームがスーパーマーケットに保管されてから家に持ち帰られるときなど、アイスクリームが変動する温度にさらされたときに、CNCが現在の安定剤よりも保護的であることを見出しました。さらにCNCが氷の結晶の融解を遅らせることができることも見出しました。これはゆっくりと融解するアイスクリームを製造するために使用できる可能性があります。

さらにCNCは食品として用いるにあたり無害であることがわかっていますが、食品添加物として用いるためには米国食品医薬品局によるレビューを必要となります。この研究成果は、他の冷凍食品やおそらく提供された臓器や組織の保存にも応用が可能です。

ACS Spring 2022で発表された研究のタイトルは、“Inhibiting ice recrystallization by cellulose nanocrystals: Influences of sucrose concentration and storage time” です。詳細はAbstractをご確認ください。

タキロンシーアイがパラミロンナノファイバーのユーグリードに出資(2022年3月18日)

合成樹脂製品のメーカー、タキロンシーアイは、ユーグレナ由来のナノファイバーであるパラミロンナノファイバーの商業生産を計画するベンチャー企業、株式会社ユーグリードへ出資したことを、同日付のニュースリリースで発表しました。

ユーグレナ(ミドリムシ)は原生動物の一種で、鞭毛運動をする一方で葉緑体による光合成を行うことから、動物と植物、両方の性質を兼ね備えているものです。日本では株式会社ユーグレナが世界で初めて屋外大量培養に成功するなど、健康食品やバイオ燃料向けの製品開発を進めています。

植物はグルコースがα-1,4結合をしたデンプンやβ-1,4結合したセルロースを作りますが、ユーグレナはβ-1,3結合をしたパラミロンを作ります。このパラミロンから作られるパラミロンナノファイバーは、セルロースナノファイバー(CNF)に似た特性を持つことがわかっており、株式会社ユーグリードでは宮崎大学の協力を得て、パラミロンナノファイバーの研究開発を進めています。

タキロンシーアイ株式会社は、株式会社ユーグリードへの出資により、グループ会社製品における製品の用途開発ならびにタキロンシーアイグループのマーベリックパートナーズ株式会社におけるコンパウンド事業との連携をねらいます。そして、PNF の可能性を引き出すことを通じて、2023 年度を最終年度とする中期経営計画 「変革への決意CX2023」の重点実施項目に掲げる「社会課題の解決」および「新事業・新製品・ 新技術の獲得」の実現を目指すとのことです。

CNFには品質のバラつき、リグニン由来の加熱⻩変、低効率生産、⾼コストなど、実用化に向けてさまざまな課題がある一方で、パラミロンナノファイバーは高繊維⻑、⾼アスペクト比、リグニンフリーという特徴があるため、CNFと比較して⾼品質で安定した性能を有しているとのことです。

詳細はタキロンシーアイのニュースリリースをご覧ください。

ナノセルロース・ドットコム コメント

CNFにおける課題としてあげられている品質のバラつき、リグニン由来の加熱⻩変については、バクテリアナノセルロースの利用で解決でき、高い品質を求められるバイオメディカル分野では、すでにバクテリアナノセルロースが使わています。また低効率生産、高コストについては、ユーグリードが目指しているタンク培養で解決するのはかなり困難と思われます。ユーグレナのタンク培養は30年以上前から可能でしたが、株式会社ユーグレナは、培養の低コスト化のために屋外培養技術を開発しました。

Polybion世界最大規模のバクテリアナノセルロース製造設備を公開(2022年3月16日)

スペインとメキシコのバイオベンチャーPolybionは、バクテリアナノセルロース施設がスケールアップを完了し、440万ドル(5億円)の資金調達ができたことを、3月15日に自社のウェブサイトで発表しました。

Polybionのバクテリアセルロース製造施設は太陽光発電設備を備えており、同社独自のバイオ繊維Celium®を年間10万m2生産することができます。バクテリアナノセルロースから製造されるCelium®は、動物由来成分を含まない革の代替品であり、ファッション、スポーツウェア、自動車用途の新しいゴールドスタンダード素材となる高性能特性を備えています。

Polybionは、2015年に設立されました。同社は2023年の第3四半期までに、最大生産能力を達成すると予想しています。

同社のウェブサイトには、バクテリアナノセルロースの生産設備(タンク培養)の写真も掲載されていますので、ぜひご覧ください。

日本製紙、化粧品7割引きキャンペーンの第三弾を実施(2022年3月16日)

日本製紙は、日本製紙パピリアが販売するセルロースナノファイバーを使った化粧水、クリーム、クレンジングオイル、フェイスウォッシュのセットを、7割引きでセット販売することを3月15日付のニュースリリースで発表しました。

これは日本製紙の子会社で、化粧品の受託製造も手掛ける日本製紙パピリアが、ファンケルと共同で、日本製紙が製造・販売するセルロースナノファイバー(CNF)を使った化粧品4種類を開発し、2021年10月から販売を行っているものです。

この化粧品については、1月15日~31日に日本製紙グループの生産拠点がある18道府県の在住者を対象に4アイテムのセットを7割引きでオンライン販売するキャンペーン、1月25日~2月1日に全国を対象に化粧水とクリームのセットを6割引きでオンライン販売するキャンペーンが実施されました。

このほど発表されたのは、北海道の在住者を対象に、4アイテムのセットを3月15日~31日に化粧水とクリームのセットを通常税込み22,770円のところ、6,798円(70%off)で販売するというものです。

詳しくは同社のニュースリリースをご覧ください。

永和化成工業がCNFを加えた発泡剤のマスターバッチを開発(2022年3月13日)

三菱ガス化学グループの化学発泡剤メーカーである永和化成工業は、セルロースナノファイバー(CNF)を配合することで従来製品より発泡倍率を20%向上させることができる発泡剤のマスターバッチを開発したことを、3月10日に自社のウェブサイトで発表しました。

発泡剤とは、プラスチックやゴムなどのポリマーに他の配合剤と一緒に加えることで、加熱分解して発生した窒素ガス、炭酸ガス、一酸化炭素ガス、アンモニアガス、水蒸気などを包含ポリマー内部に包含させることで、細胞構造を形成するための薬剤です。

発泡剤を添加すると20%程度の軽量化が見込めますが、弾性率は低下してしまいます。永和化成工業が今回開発したCNF配合発泡剤マスターバッチを使用することで、従来の軽量化は維持しつつ、弾性率を向上させることができます。

さらに従来の発泡剤マスターバッチでは発泡倍率は約2倍が限度でしたが、CNF 配合発泡剤 MB を使用すると、最大2.4倍の発泡倍率が実現できます。

この製品には、星光PMCのセルロースナノファイバーSTARCEL®が使われています。

詳しい内容は、同社の製品情報をご覧ください。

CNCを用いたエネルギー貯蔵技術をモンタナ州立大学などが開発中(2022年3月13日)

熱を吸収して蓄えるために使用される特定の塩の蓄熱効率をセルロースナノクリスタル(CNC)が大幅にアップさせます。アメリカのモンタナ州立大学などでは、テンサイを砂糖に加工する際に残ったパルプからCNCを製造し、CNCを混ぜた蓄熱塩に太陽光線を集中させることで、発電用タービンを回転させるための研究を行っています。

オーストラリアのシドニーヘラルド紙のウエブサイト版に同日掲載された記事によりますと、この研究は米国エネルギー省からの170万ドルの助成金で行われており、モンタナ州立大学のほかに、ノースダコタ州立大学、アイダホ国立研究所、オークリッジ国立研究所が参加しています。

モンタナ州立大学では、テンサイからCNCを製造する方法を検討した後、CNCが蓄熱塩のさまざまな溶液とどのような相互作用をするのか研究します。ノースダコタ州立大学は、CNCで強化された蓄熱塩溶液の性能を測定します。さらにアイダホ国立研究所は、CNCが加熱サイクルの過程で塩の耐久性をどのように改善するかについて、オークリッジ国立研究所は、CNCで強化された塩の性能を他の熱およびエネルギー貯蔵方法と比較します。

これはCNCの全く新しいアプリケーションだと、モンタナ州立大学のDilpreet Bajwa教授は述べています。彼はCNCが熱を吸収して蓄えるために使用される特定の塩の効率を大幅に向上させることを以前に発見しました。加熱すると溶ける塩は、水のような材料よりも、体積あたり多くの熱を蓄えることができます。それに太陽光線を集中させて熱を貯蔵することによって、発電用タービンを回転させることができる発電所で一般的に使用することができます。この技術は塩水の脱塩や石油精製など、他の産業への適用も可能です。多くの産業で捨てられている熱を低コストで再利用することができます。

Bajwa教授によると蓄熱塩は結晶構造も持っており、加熱と冷却のサイクルの過程で分解する傾向があり、効率が低下します。CNCはそれを防ぐのに役立つ足場のように機能している可能性があるそうです。

詳しい内容は、シドニーヘラルドの記事をご覧ください。

鼻・耳の軟骨の3Dバイオプリンティングにナノセルロースを利用(2022年3月12日)

顔の再建研究プログラムの拠点施設であるイギリスのスウォンジー大学では、ヒト軟骨特異的幹細胞とナノセルロースを使用した3Dバイオプリンティングによって、鼻と耳の軟骨を作っています。

イギリスのスウォンジー大学のウェブサイトに、英国王室関係者が同大学の顔の再建研究プログラムを訪れ、これらの画期的な研究から恩恵を受ける可能性のある患者に面会したことが3月11日に掲載されました。

The ScarFreeFoundationとHealthand Care Research Walesが資金提供した250万ポンドのRecon Regenプログラムは、 2021年からスタートしました。期間は3年間で、現在は人間の細胞を使用した鼻と耳の軟骨の先駆的な3Dバイオプリンティングと、顔の傷がメンタルヘルスに与える影響について研究を行っています。

このプログラムでは、顔の再建のためのバイオインクとして、ヒト軟骨特異的幹細胞とナノセルロースを使用した3Dバイオプリンティングを開発しています。ここでは、顔の再建のための人間の臨床試験につながる新しい軟骨を成長させるための細胞の理想的な組み合わせを決定するための検討が行われています。

詳細は同大学のウェブサイトをご覧ください。

バクテリアセルロースを使った繊維の紡績に成功(2022年3月10日)

Birla Celluloseは、オーストラリアのパース近郊のネッドランズで、オーストラリアのNanolloseによって開発されたバクテリアセルロース(商品名:Nullarbor®)を20%含む環境に優しいリヨセル繊維の初めてのパイロット規模の紡績を成功させました。

Grasim Industries(インド・ムンバイ)のパルプおよび繊維事業であるBirla Celluloseは、オーストラリアでバクテリアセルロースから繊維を製造する企業Nanolloseと共同で、実用化を進めています。2022年1月にはバクテリアセルロースから作られた高靭性リヨセル繊維についての共同特許も出願しています。

このほど250kgの繊維を生産したことを複数のメディアが報じました。この新しい繊維は、バージンウッドベースのパルプ含有量を減らしながら、快適さ、強度、耐久性、吸湿性など、BirlaのExcelリヨセルのすべての優れた属性を維持してします。

パイロット規模での試験は、既存の製造装置を使用する可能性を示しており、潜在的な商業化に向けてうまく機能し、ファッションおよびテキスタイル企業に初期サンプルを提供する道を開きます。

CNFを使ったハート形モナカを熱海の菓子店が発売(2022年3月3日)

常盤木羊羹店総本店(静岡県熱海市)はセルロースナノファイバー(CNF)を使ったハート形のモナカ「クオーレ」を商品化したことを、自社のウェブサイトで本日発表しました。

これは静岡新聞社・静岡放送がコラボして実施する日本製紙のCNFであるセレンピア®を活用したお菓子作りプロジェクト「未来のお菓子を作ろうプロジェクト」の一環として作られたものです。
従来から使用している沖縄県産の紅芋の餡(あん)にCNFを混ぜ、しっとりなめらかな食感に仕上げたとのことです。

さらに商品パッケージには静岡新聞社・静岡放送公認バーチャルユーチューバー「木乃華サクヤ」の特別デザインを採り入れています。1個350円(税込み)で、店頭販売のほかにネットショップでの販売も行われます。詳しくは同社のウェブサイトをご覧ください。

AIを利用して陶磁器の色から釉薬の調合条件を示すアプリ開発へ(2022年3月2日)

愛媛県産業技術研究所の中村健治主任研究員と愛媛大学の木下浩二講師は、研究所が蓄積した釉薬の配合データから、AIを利用して表現したい色の釉薬の配合条件を示すシステムを開発しました。現在はパソコンやタブレット端末を使っていますが、将来はスマートフォンのアプリ化を目指すとのことです。

同日付の毎日新聞ウェブ版に掲載された記事によりますと、これを支えているのが、セルロースナノファイバー(CNF)を使った顔料の分散技術です。CNFを使うことで、釉薬を長時間調整、混合しなくても多くの色のタイルを作ることができるようになったことで、多くの色のサンプルを容易に増やすことができます。

詳しい内容は、毎日新聞の記事をご覧ください。

オーバーン大学、3Dプリントによる住宅の低コスト化に取り組む(2022年3月2日)

アメリカ・アラバマ州のAuburn Universityが、低品位材や木質廃棄物からのナノセルロースの製造、特性評価、化学修飾による3D印刷用樹脂の開発を行っていることを、米大手メディアabcが3月1日にウェブサイトで伝えました。

オーバーン大学はアイダホ大学と協力して、3D印刷された手頃な価格で持続可能な住宅の開発に取り組んでいます。オーバーン大学では3D印刷用樹脂を開発し、それを使ってアイダホ大学が建物の壁パネルなどの3D印刷を行います。

住宅の低価格化とともに、二酸化炭素排出量の削減も目的の一つで、木造建築物を増やす動きがあります。しかし3D印刷で使う樹脂の原料は、必ずしも植物由来ではなく、繊維や油はたいてい石油由来です。そのため繊維はセルロース繊維に、油は熱分解油に代替します。

このプロセスでは、伝統的な材木やクロスラミネーテッド材、CLTなどに適さない低品位材を使うことができ、地元の林業に貢献することが可能です。またこのプロジェクトは、全米科学財団の研究インフラ改善プログラムからの390万ドルの助成金によって賄われています。

詳しくはabcニュースのウェブサイトをご覧ください(動画もあります)。

メイン大学、米国海兵隊向けの3D印刷した大型ボートを竣工(2022年3月2日)

メイン大学のAdvanced Structures and Composites Centerが、3D印刷された米国海兵隊向けの大型ボート2隻を竣工したことが報道されました。ナノセルロースが樹脂に含まれているかどうかについては、公表されていません。

3D印刷に関する情報サイトである3D Printing Industry.comが3月1日に報道した内容によりますと、米国海兵隊のために開発されたプロトタイプボートは、後方支援船として設計されており、軍隊によってフィールドテストが行われる予定です。大きい方は2つの20フィートの輸送コンテナを運ぶことができ、もう1つは3日分の食料、水、その他の物資を持ってライフル分隊全体を運ぶことができます。
国家安全保障上の観点から、ボートの公開写真、ビデオ、または技術的な説明はされていません。

新しい船は両方とも、ポリマーベースの繊維強化複合材料のマルチマテリアルブレンドを使用して3Dプリントされました。1隻のボートをわずか1か月で製造および組み立てることができました。これは、従来の製造方法を使用した場合、最大1年かかるプロセスです。

またこのボートは、それ自体で完全に機能することを目的としていますが、最大の輸送能力を実現するために、接続していかだを形成することもできます。

メイン大学は、世界最大のポリマー3D印刷システムの研究拠点です。Ingersoll Machine Toolsによって開発された押し出しベースのプリンターは、防衛およびインフラストラクチャアプリケーション用に特別に構築されており、長さ30m、幅7m、高さ3mの物体の印刷に使用できます。

2019年、メイン大学は3Dプリンターを使用して、当時世界最大の3D印刷ボートであり、世界最大の3D印刷オブジェクトであった3Dirigoを製造しました。長さ7.5m、重さ2.3トンの船は、72時間で印刷されました。今回のプロジェクトで、メイン大学は自身が持つギネス世界記録を更新しました。

最近では、UMaineは米国エネルギー省から280万ドルの資金を確保し、風力タービンのブレードモールドを3Dプリントするより環境に優しい方法を開発しました。チームは、セルロースナノファイバー(CNF)印刷プロセスにバイオベースの原料を導入することで、大型部品の製造コストを50%削減できると考えています。
このほか、メイン大学は以前、米国上院の輸送弾力性小委員会に2つの新しい3Dプリント防潮壁を提示しています。これは洪水関連の被害から沿岸のインフラを保護するように設計されています。

詳細は3D Printing Industry.comの記事をご覧ください。