ナノセルロースニュース2022年12月

ナノセルロース材料国際シンポジウムが来年4月に北京で開催(2022年12月18日)

The 4th International Symposium on Nanocellulosic Materials (4th ISNCM)が、中国造紙学会などの主催で、4月21日から23日に北京で開催されます。

International Symposium on Nanocellulosic Materials(ISNCM:ナノセルロース材料国際シンポジウム)は中国が中心となって開催しているナノセルロースに関する国際シンポジウムで、2017年の杭州、2019年の天津、2021年の広州に続いて、今回が4回目となります。今回は北京林業大学がホストとなり、北京市内で開催されます。
前回の2021年はコロナ禍の中での開催であったため、広州在住者以外はZoomでの参加でしたが、119件の講演・発表がありました。

ナノセルロース・ドットコムでは、前回に引き続いて概要をお伝えする予定です。なお前回のレポートは、下のリンクからご覧いただけます。

関連記事

The 3rd International Symposium on Nanocellulosic Materials (ISNCM 2021)が中国造紙学会などの主催で、11月20日(土)・21日(日)の2日間、オンラインとオフライン(広[…]

Melodea 南北アメリカにCNCを使ったバリアコーティングを提供(2022年12月16日)

イスラエルのMelodeaが、セルロースナノクリスタル(CNC)を使ったプラスチックフリーのパッケージソリューションで、南北アメリカ市場に参入します。

包装業界のウェブサイトPackaging Worldが12月15日に掲載した記事によりますと、イスラエルのMelodeaはプラスチックを使用しないパッケージングソリューションで米国に進出します。そして紙の副原料を使用したバリアコーティングを生産し、南北アメリカに提供します。

Melodeaが開発したバリアコーティングは、CNCから作られており、高湿度に耐え、包装された製品を酸素、水、油、グリースから保護することができます。この丈夫で軽量な植物素材は、包装された食品の品質と完全性を維持するため、プラスチックやアルミニウムの代替品として使うことができます。さらに生分解性があり、完全にリサイクル可能で、人にも環境にも無毒です。この素材は、すでに紙ベースのパウチ、蓋、成型パルプ トレイなどの製造に使われています。Melodea のバリアコーティングはすべて、食品包装に関するFDAの規制に準拠しています。

米国で生産は、現地パートナーとの協業によって行われます。そして3~6か月以内に、米国のサイトからの出荷が始まる予定です。

詳細はPackaging Worldの記事をご覧ください。

カナダ・サスカチュワン大学、CNCを使ったグリッターを開発(2022年12月15日)

ラメやスパンコールなど、キラキラと光る装飾であるグリッターは、マイクロプラスチックから作られていますが、カナダのサスカチュワン大学の研究チームは、セルロースナノクリスタル(CNC)を原料にして、生分解性のあるグリッターを開発したことを、大学のウェブサイトで発表しました。

キラキラと光るグリッターは、大人のメイク、ギフトのラッピング、衣装、塗料など、さまざまなものに使われていますが、多くの場合、マイクロプラスチックと呼ばれる小さなプラスチック粒子でできています。グリッターは環境中に放出されると、回収することはほぼ困難のため、一部の人からは、厄介者として見られています。
また主成分のマイクロプラスチックは、環境中に放出されても分解されないため、生態系に重大な影響を与えることがわかっており、人間の活動から遠く離れた遠隔地でも発見されています。また多くのグリッター製品には、着色をするために有毒な顔料が含まれています。そのため、プラスチック製グリッターの製造と使用を禁止すべきであるという動きもあります。

サスカチュワン大学の研究チームは、セルローナノクリスタル(CNC)に生分解性があり、光を反射する形状をしていることに注目し、革新的なバイオグリッターを開発しました。製品は100%バイオベースになります。生分解性のあるグリッターはすでにありますが、研究チームが開発したグリッターはアルミニウムの使用とコーティングを行っていません。

詳細は、サスカチュワン大学のウェブサイトに掲載された記事をご覧ください。

アシックス、サトウキビ由来のCNFを使ったテニスシューズを発売(2022年12月14日)

アシックスは、アドバイザリースタッフ契約を結ぶ男子プロテニスプレーヤーのノバク・ジョコビッチ選手の意見を取り入れ新たに開発したテニスシューズを発売します。このシューズのクッション材には、サトウキビ由来繊維のセルロースナノファイバー(CNF)が採用されています。

アシックスが12月13日にプレスリリースで発表した内容によりますと、同社はノバク・ジョコビッチ選手のシグネチャーモデルのテニスシューズ「COURT FF 3 NOVAK(コートエフエフスリーノバク)」を、2023年1月中旬からアシックスオンラインストア、テニス専門店で限定発売します。メーカー希望小売価格は20,800円(税込)です。

この商品は、ジョコビッチ選手のフットワークの良さを生かしたダイナミックなプレーを支えるため、アシックススポーツ工学研究所でテニスの動作分析を行い、強力でクイックなスイング動作や安定した着地を追求し、プレーの高速化に対応するための機能を多く取り入れています。
筑波大学でのバイオメカニクス試験の結果では、かかと接地時の身体への負担が従来品より6.8%軽減できることが確認されています。

このシューズのミッドソール(甲被と靴底の間の中間クッション材)には、サトウキビ由来繊維のCNFを使用した「FLYTEFOAM(フライトフォーム)」が採用されています。

詳細は、アシックスのプレスリリースをご覧ください。

ナノセルロース・ドットコムコメント

CNFを使ったクッション材FLYTEFOAMは、アシックスの高価格帯のランニングシューズですでに採用されています。今回の、FLYTEFOAMに使われているCNFの原料が、木材パルプではなく、サトウキビ由来繊維であることに注目したいと思います。

サトウキビ由来繊維とは、サトウキビを搾った後に発生するバガスのことと思われます。海外では、バガスはナノセルロースやバイオエタノールの原料として使われていますが、日本国内でバガスからCNFを商業生産している話は、聞いたことがありません。日本国外で製造されたCNFが使われている可能性もありそうです。

太田紙販売、日本酒とCNFを配合したハンドクリームを発売(2022年12月13日)

日本製紙グループの太田紙販売株式会社は、日本酒と日本製紙のセルロースナノファイバー(CNF)セレンピア®を配合したハンドクリームを開発し、12月12日より販売を開始しました。

太田紙販売のホームページによると、ハンドクリームは「瀧澤ハンドクリーム」という商品名で、長野県の老舗酒蔵、信州銘醸の純米吟醸「瀧澤」を配合し、さらに日本製紙のCNFセレンピア®を配合することで、潤うがべたつかないハンドクリームになっています。

小売希望価格は30g(チューブ入り)で1,200円(税別)です。

なおハンドクリームは医薬部外品で、CNFはセルロースガムと表示されています。

詳細は、商品パンフレットをご覧ください。

大王製紙のCNFを使ったEV、NHK Worldで全世界に紹介される(2022年12月8日)

大王製紙は12月7日(水)~9日(金)に幕張メッセで開催されている第2回サステナブルマテリアル展で、セルロースナノファイバー(CNF)をボディなどの部品に使った電気自動車(EV)を出展していますが、12月7日夜(日本時間)にNHK Wordで、全世界に向けてその内容が配信されました。

NHK Worldの動画の概要は次の通りです。
大王製紙は電動レースカーを出展していますが、そのボディの一部には、木質繊維を原料としたバイオマス素材のCNFが使われています。この素材を使うことで、車体重量を最大で60kg削減できます。

動画は下記のURLからご覧になれます。
https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/news/20221207_33/

スギノマシン、従来よりも繊維が長く径が細いCNFを開発(2022年12月6日)

スギノマシンは、独自のウォータージェット製法で製造するセルロースナノファイバー(CNF)のラインアップに、従来よりも繊維が長く、径が細いCNFを加えたことを発表しました。

同日付の同社のニュースリリースによりますと、同社は従来より、繊維長の異なる5種類のCNF (商品名:BiNFi-s®)を提供していましたが、さらに繊維長が長く径が細い、極長繊維タイプの RMaを開発したとのことです。

CNFの物性を決定する重要な指標には、繊維長と繊維径があります。繊維長が長いほど補強性や増粘性が高く、繊維径が細いほど透明性や均質性が高くなります。同社のウォータージェット製法では、繊維へのダメージを抑えながら、繊維幅を細くすることが可能で、製造コストを維持しつつ、従来のCNFよりも繊維長が長く径が細いCNFとしてRMaタイプを開発しました。

この製品の特長は次の通りです。
・平均繊維径は9.6nm(SPMの観測による)
・この繊維径は、機械解繊で製造するCNFの中では最も細い
・SPMの視野角である5 µmを超える長繊維が多く観察される

同社の従来品のCNFと、新たに開発したRMaを乾燥フィルム化し、引張強度試験を行ったところ、RMaは従来の長繊維タイプに対して、約1.8倍の高い弾性率を示しました。RMaを添加することで、従来のCNFを超える補強効果が期待できます。

詳細は、同社のニュースリリースをご覧ください。

日本製紙、CNF配合天然ゴムのサンプル提供を開始(2022年12月6日)

日本製紙は、TEMPO酸化CNFを天然ゴムに均一に配合したゴムマスターバッチCellenpia Elas®(セレンピアエラス®)を開発し、サンプル提供を開始したことを発表しました。

同日付の同社のニュースリリースによりますと、繊維幅がシングルナノサイズであるTEMPO酸化セルロースナノファイバー(CNF)を、同じく木材成分由来である天然ゴム中に均一分散することで弾性率と燃費性能を両立させたゴムマスターバッチCellenpia Elas®の開発に成功し、サンプル提供を開始しました。

天然ゴムは、伸縮性や耐摩耗適性に優れ、柔らかい特性を持つ素材であり、世界で年間1,400万トンが生産され、タイヤ、ホース、ベルト等、各種用途に使用されています。ゴムの強度を高めるためには、カーボンブラックを配合しますが、近年、化石燃料由来素材であるカーボンブラックの代わりに、再生可能な天然素材であるCNFをゴム添加材として使用する研究が盛んに行われてきました。

今回開発したマスターバッチは、各種ゴムと直接ドライ混練することができ、ハンドリングよくゴム製品の物性を向上させることができます。一般的にゴム材料に使用されているカーボンブラックを充填材とした天然ゴムに対して、セレンピアエラスは弾性率(硬さの指標)を同等とした場合にtanδ(損失正接)が約20%低下し、タイヤやゴムベルト用途で使用した場合に燃費性能の向上が期待されます。

詳しい内容は、同社のニュースリリースをご覧ください。

ブラウン大学、次世代電池の部品にCNFを使う研究(2022年12月2日)

アメリカのブラウン大学は、銅とセルロースナノフィブリル(CNF)を組合せて作った固体イオン伝導体で、次世代電池の液体電解質を置き換える研究を進めています。この物質は、他のポリマーで作ったイオン電導体よりも、イオン電導性が高く、次世代全固体電池の実用化につながるものです。

アメリカの木質パレットの専門誌 Pallet Enterpriseのウェブ版に、木材関係の先端技術を紹介する記事が12月1日に掲載されました。その中に木製バッテリーに関する記述があり、上記の内容が記載されていました。

ナノセルロース・ドットコムによる補足

本研究は、ブラウン大学とメリーランド大学(アメリカ)が中心になって行われています。
技術のポイントは、銅とCNFを組み合わせた固体イオン伝導体は、
・他の高分子イオン伝導体よりもイオン伝導性が10~100倍高い。
・紙のように薄いため、固体電池の電解質や、全固体電池のカソード用のイオン伝導性バインダーとして使用できる。
というものです。
TEMPO酸化CNFを使っていることから、東京大学も研究に参加しており、2021年10月に、この研究に関する論文がNatureに掲載された際には、東京大学からもニュース発表が行われました。

関連記事

CNFを使った印刷型フレキシブル湿度センサの試験販売開始(2021年10月29日) 株式会社太陽機械製作所(東京・羽田)は、屈曲性を備え、環境に優しく、設計自由度の高いT-Print-Sensor(高柔軟性湿度センサ)を開発し、用途探索の[…]

2023年のTAPPI Nanoはバンクーバーで開催(2022年12月1日)

世界最大のナノセルロースに関する国際会議、TAPPI International Conference on Nanotechnology for Renewable Materials (TAPPI Nano) が、バンクーバーで開催されることが正式に発表され、発表の受付が始まりました。

TAPPI(紙パルプ技術協会)が米国東部時間の11月30日に発表した内容によりますと、2023年のTAPPI Nanoは、6月12日(月)~16日(金)にカナダのバンクーバーで開催されます。発表のための要旨(300 words)提出期限は、2023年1月8日です。

この国際会議の特徴は、大学・研究機関からの参加に加え、産業界からの参加者が多いことです。学術的な内容から実用化・商業化まで、幅広い分野をカバーしています。

詳しい内容はこちらからご覧ください。

ナノセルロース・ドットコム コメント

この国際会議は2006年からほぼ毎年、北米とヨーロッパで開催されていましたが、2019年には日本のナノセルロースブームを背景に、初めて幕張メッセで開催されました。2020年はコロナ禍のためにバーチャル開催、2021年は中止、2022年はヘルシンキでハイブリッド開催となっています。当初はブラジルが誘致に熱心でしたが、ナノセルロースブームが下火になったことから誘致を断念し、ナノセルロース研究に力を入れているブリティッシュ・コロンビア大学がホストとなって、バンクーバーで開催されることになったようです。