ナノセルロースニュース2023年5月

CNFを配合したヘアカラーの頭皮保護剤をリニューアル(2023年5月29日)

カエタステクノロジーは、ヘアカラーを施術する際に使用する頭皮保護剤をリニューアル発売しました。この商品には植物性スーパー原料セルロースナノファイバー(CNF)が含まれています。

カエタステクノロジー株式会社が5月24日に、ニュースリリース配信サービスPR Times を通じて発表した内容によりますと、同社が展開しているブランドÅ P.P.(エープロフェッショナルプロテクション)は、ヘアカラー剤から頭皮を守る美容室専用商品である、頭皮保護剤Å P.P. スカルプCNFバリアを改良し、同日から発売しました。

この商品は、CNFを配合することによって、カラー剤を包み込み、ゲル化させるとともに、チクソトロピー性によって、頭皮は染まらず、髪だけを染める特徴があります。

配合されるCNFは、セルロースガム(増粘剤)と表記されるようです。

詳細はPR Timesのニュースリリースをご覧ください。

中越パルプ、CNFを使った化粧品原料の販売を開始(2023年5月17日)

中越パルプ工業と丸紅は、中越パルプが製造する水中対向衝突法で製造したセルロースナノファイバー(CNF)(製品名: nanoforest®)を使用した化粧品用途向け原料の販売を開始したことを、本日ニュースリリースで発表しました。

化粧品市場においては、環境に配慮した原料、特にサステナブルな植物由来原料に対する需要が増えています。今回両社が販売する化粧品原料は、原料に未利用竹材を含む国産竹 100%の天然繊維を使用したCNFが使われており、化粧品に配合することで、増粘性や触感改良機能、顔料分散安定性、洗浄性、保湿性、乳化安定性など、幅広い機能を付与することができます。

製品は、
nanoforest-S【MicC】水分散体
nanoforest-M【MicC】オイル分散体
の2種類です。
提供する際は、上記2種類のほかに、プレミックス(顔料分散体)も可能とのことです。

詳細は丸紅のニュースリリースをご覧ください。

インド国立科学研究所、BNC製造技術を民間企業にライセンス(2023年5月12日)

インド国立科学研究所(CSIR-NCL)は、創傷ケア用品と化粧品用途のためのバクテリアナノセルロース(BNC)の製造技術を、Rapidcure Healthcare Pvt. Ltd.にライセンス供与しました。

インドの大手メディア The Time of India に5月11日に掲載された記事によりますと、インド国立科学研究所(CSIR-NCL)は、創傷ケア用品と化粧品の原料として用いるためのBNCの製造技術を、医療用品製造メーカーであるRapidcure Healthcare Pvt. Ltd.にライセンス供与しました。
この技術はラボレベルで検証済みで、生産されるBNCは高い純度と独特の微細構造を持ち、さまざまな用途に用いることができます。BNCは高い引張強度、生分解性、生体適合性を持つ材料です。

詳細はThe Time of Indiaの記事をご覧ください。

セルロースナノクリスタルを使ったバイオグリッター(2023年5月12日)

プラスチックの代わりにセルロースナノクリスタル(CNC)を使った環境に優しいエコグリッタージェルは、生分解性があり、環境に害を及ぼすことがありません。

環境保全や持続可能なライフスタイルに関するメディア Green Matters に5月11日に、CNCを原料にした生分解性のあるバイオグリッターに関する記事が掲載されています。グリッターは肌、特に眼の周囲にキラキラした印象を与えるコスメ(化粧品)の一種で、ラメ、パールなどを含むコスメを指す場合と、ラメやパールよりも粒子径が大きいコスメをつ指す場合があります(この記事では前者の意味)。

グリッターは通常プラスチックで作られているため、生分解性がなく、環境に害を及ぼします。そのため、CNCを使った生分解性のあるバイオグリッターが開発されています。しかし実際には、生分解性がある場合でも、 92 %のプラスチックを含んでいます。

これに対し、Bioglitterは、世界で唯一認証された淡水中で生分解性のあるグリッターブランドです。Bioglitterは普通の水には溶けません。しかし、自然環境(淡水や野原など)に入ると、バクテリアやその他の天然微生物がBioglitterを消費し、二酸化炭素、水、バイオマスに変わります。 バイオグリッターは、家庭用と商業用の両方の堆肥環境で堆肥化可能です。

同社は 2010 年に製品の開発を開始し、2016 年にBioglitterの最初のバージョンをリリースしました。出版時点では、顔、体、または爪に使用できるCosmetic Bioglitter、Deco Bioglitter など、いくつかの種類があります

ケンブリッジ大学の研究者らは、持続可能、無毒、ビーガン、生分解性のグリッターについての研究結果を2021年11月に発表しましたが、生分解性のあるグリッターは、果物や野菜などの植物の細胞壁の主な構成要素であるセルロースから作られています。具体的には、CNCで作られており、光を曲げて明るい色を作り出します。CNCは蝶の羽や孔雀の羽でも同じことをします。

サスカチュワン大学の研究者は、光を反射する形状を使用して他に類を見ない輝きを生み出す生分解性グリッターであるChiral Glitterを2022年に発表し、世界中のマイクロプラスチック汚染を減らすことを目指しています。Chiral Glitter はCNCで構成されているため、製品は 100% バイオベースであり、従来のグリッターの材料であるアルミニウムやマイクロプラスチックも含まれていません。ただ、現時点ではChiral Glitter はまだ市販されていません。

詳細はGreen Mattersの記事をご覧ください。

セルロースナノクリスタルは光、空気、湿気を防ぐ包装材料となる(2023年5月11日)

イスラエルのグリーンテクノロジー企業Melodea Bio Based Solutionsのバリア コーティングは、天然セルロースナノクリスタル(CNC)で作られており、水、油、香りに耐性があります。さらにヒートシール性もあります。

イスラエルの非営利ジャーナリズムISRAEL21Cに5月10日付で掲載された記事によりますと、 近年、自然由来成分を含む製品を選ぶなど、環境に配慮した選択をする消費者が増えています。 しかし内容物がどれほど環境に優しいものであっても、パッケージ自体が環境に有害なプラスチックをベースにしていることが多いことが問題です。天然由来の包装材のほとんどは、中の内容物を光、湿気、酸素から保護できないため、包装材のプラスチックを置き換えるのは困難でした。

イスラエルのRehovot に本拠を置くMelodea Bio Based Solutionsのバリア コーティングは、人工林から調達された木材を原料とするCNCで作られており、プラスチックを使用せずに内容物を光、空気、湿気から安全に保つことができます。

2020年、メロディアは持続可能な紙ベースのパッケージ製品の開発でワールドスター・パッケージング・アワードを受賞しました。同社は、バイオプラスチックとパルプ成型品で作られたパッケージも専門としています。

その最新のイノベーションである VBseal は、既存の生産ラインで大量生産でき、生鮮食品、シリアル、ファストフード、クッキー、アイスクリーム、さらに洗剤や化粧品に環境に安全な包装を提供します。完全にリサイクル可能で、パラホルムアルデヒド (PFA) やビスフェノール A (BPA) は含まれません。

世界の大手消費財(CPG)企業の多くは、今後5~10年以内に自社のパッケージを100%リサイクル可能または再利用可能なものにするとアナウンスしていますが、メロディアによると、このスケジュールは消費者のニーズによって前倒しされているそうです。

メロディアは最近、最初のパイロットプラントとイノベーションセンターの設立に50万ドルを投資しました。

詳細はISRAEL21Cの記事をご覧ください。

フォトニックセルロースナノクリスタルを使ったフレキシブル汗センサーを開発(2023年5月8日)

中国科学院大連化学物理研究所の研究グループは、汗中のカルシウムイオンをセンシングすることができる、不溶性のキラルフォトニックセルロースナノクリスタル(CNC)パッチを開発しました。

CNCは、エレクトロニクス、バイオプラスチック、エネルギーなどの分野で広く応用されていますが、湿った環境や液体環境では、CNCを使った材料が機能不全に陥る可能性があります。

中国科学院大連化学物理研究所(DICP)の卿光焱(Guangyan QING)教授が率いる研究グループは、汗に含まれるカルシウムイオンのセンシングが可能な、不溶性のキラルフォトニックCNCパッチを開発しました。4 月 13 日にSmall 誌に掲載されたこの研究は、CNC の機能化に関する新しいアイデアを提供します。

研究グループでは、不溶性の CNC ベースのヒドロゲルを製造するための、シンプルで効率的な方法を開発しました。彼らは、分子間水素結合の再構築を利用することで、熱脱水により最適化された CNC 複合フォトニックフィルムが、水溶液中で安定したヒドロゲルネットワークを形成できることを発見しました。さらに、ヒドロゲルは乾燥状態と湿潤状態の間で可逆的に切り替えることができ、これが特定の機能化に有効であることを示しました。

この研究成果を使うことで、他の代謝物(ブドウ糖、尿素、ビタミンなど)を監視するための持続可能なセルロースセンサーに応用することが可能です。さらに、環境モニタリング、膜分離、ウェアラブルデバイスで動作するデジタル制御ヒドロゲルシステムヘの展開も可能です。

詳細は中国科学院大連化学物理研究所のウェブサイトをご覧ください。

カナダの企業、CNCでタイヤの添加剤であるシリカを高強度化(2023年5月6日)

カナダ・アルバータ州のエドモントンにある Applied Quantum Materials Inc. は、タイヤからのマイクロプラスチック汚染を減らすための添加剤を開発するために 150,000 ドルの助成金を連邦政府から受け取りました。

カナダ・アルバータ州のローカルメディア St. Albert Gazette の電子版に同日掲載された記事によりますと、現在、魚、ビール、塩、砂糖、蜂蜜、空気、水、人の内部など、地球上の事実上あらゆる場所からマイクロプラスチックが検出されており、人間の健康と環境への影響が懸念されています。

タイヤはゴム以外に、カーボンブラック、スチールやさまざまなフィラーや添加剤、シリカなど、多くの材料でできており、タイヤの摩耗はマイクロプラスチック汚染の主な原因です。毎年約 600 万トンの粒子がタイヤから飛び散っていると、カナダ環境省は報告しています。これらの粒子には潜在的に有毒な化学物質が含まれており、空気中の粒子状物質の 3 ~ 7% を占めています。

エドモントンにあるApplied Quantum Materials (AQM) は、ナノマテリアル、特にシリコンから作られたナノマテリアルを専門とする研究を行う企業です。150,000 ドルの連邦補助金を受け取り、セルロースナノクリスタル(CNC)を使用してタイヤからのマイクロプラスチック汚染を減らすことができるかどうかを確認をする予定です。

AQM の研究チームは、シリカ粒子をCNCでコーティングして、長さ約 300nm、幅 75 nm の小さなロッドを作成しています。この生分解性ロッドは、ゴム混合物に添加されると、タイヤの構造的な強度をサポートし、摩耗、重量、マイクロプラスチック、さらには燃料消費を削減します。研究チームは、このロッドがマイクロプラスチックの生産を少なくとも10%削減することを望んでいます。

詳細はSt. Albert Gazetteの記事をご覧ください。

サンエース、CNFをポリ塩化ビニルに均一分散させる技術を開発中(2023年5月1日)

塩化ビニル安定剤のメーカーであるサンエース(神奈川県愛川町)は、セルロースナノファイバー(CNF)をポリ塩化ビニル(PVC)に均一分散させる技術を開発しています。

世界経済のニュースサイトWorldfolioは、4月26日にサンエースの佐々木社長のインタビュー記事を配信しました。その中で、佐々木社長が同社のにおけるCNFへの取り組みについて触れています。

PVC パイプの製造には、炭酸カルシウム、タルク、ケイ化物、二酸化チタンなど、さまざまな材料を使用できます。これらの化学物質はすべて、ポリエチレン (PE)、ポリプロピレン (PP)、ポリスチレン (PS)、ABS、その他のエンジニアリング プラスチックなどの他のポリマーにも使用できます。これらのボリュームフィラーを様々なポリマーに混ぜることができれば、異なるレベルの物理的強度を得ることができます。

CNFは非常に難しい素材ですが、素晴らしい製品です。通常CNF は単独では分散せず、ポリマー マトリックスに混合できません。CNFは5% 程度の水溶液です。乾かすと凝集しやすく、うまく分散できません。私たちは CNF をポリマーに均一に分散させる方法に取り組んでおり、CNF を含む PVC パイプを押し出す最初の企業になるかもしれません。

詳細はWorldfolioの記事をご覧ください。

三星工業、バクテリアナノセルロースの販売を開始(2023年5月1日)

工作機械や産業機械の設計・製作を手掛ける三星工業(新潟県上越市)は、微生物発酵によって作られるセルロースナノファイバー(CNF)の一種であるバクテリアナノセルロース(BNC)のハイドロゲルと、それを物理処理して作った水分散体の製造・販売を開始しました。

4月24日以降に同社ホームページやデータベースサイトイプロスものづくり(IPROS)に掲載された情報によりますと、三星工業は微生物発酵によって作られるCNFの一種であるバクテリアナノセルロース(BNC)(同社は「バクテリアセルロース」と呼んでいます)の製造・販売を新規事業として開始しました。

三星工業が製造・販売するBNC製品は、次の2種類です。

ハイドロゲル

  • 繊維径:約50nm
  • 水分量:99%(固形分量:1%)
  • 形状:1cm3のサイコロ状、または130×90×5~10mmのシート状
  • 用途例(同社製品の実績ではなく一般的な用途)
    ナタデココ(食用)、バッテリーセパレーター、音響振動板、人工血管、創傷被覆材
  • 説明
    ・ナタデココと同様の製法で作られている。
    ・保水性が高く、常温で長時間静置しても乾燥せず、水分を保持した状態を維持することができる。
    ・生体適合性が高く、人体に触れても害がない。

水分散体 Mi-Cell®

  • 繊維径:約50nm
  • 固形分量:1%
  • 形状:水分散体
  • 用途:粘性付与、乳化
  • 説明
    ・ハイドロゲルを物理処理した水分散体。

詳しくは同社のウェブサイトをご覧ください。

メイン大学がCNFを使って3Dプリンターで印刷した住宅(2023年5月1日)

米国・メイン大学の Advanced Structures and Composites Center は、セルロースナノファイバー(CNF)を含む木材廃棄物とプラスチックバインダーで作られたペレットを使い、3D印刷によって住宅を印刷しましたが、その詳細が写真とともに公開されています。

大手メディアBusiness Insider に4月23日、メイン大学が2022年にCNFなどを使って3D印刷した住宅Bio Home 3D の紹介記事が掲載されました。床面積が600 ft2(55.7 m2)の平屋建ての住宅で、リビング、寝室、キッチン、バスルームなどを備えています。

おがくずからCNFを作り、プラスチックバインダーと混ぜてペレットを作ります。これを世界最大のポリマー3D プリンターであるメイン大学の3D プリンターに供給し、家の床、壁、屋根を4 つの独立したモジュールとして印刷しました。

従来の3Dプリント住宅は、コンクリート混合物を用いて印刷されています。また建物の壁のみを現場で印刷し、コンクリートの土台に設置するという方法を取っています。これに対して、メイン大学のBio Home 3Dは、木材廃棄物とプラスチックバインダーが原料で、工場で床、壁、屋根すべてを一体的に印刷するという、モジュール式のプレハブ アプローチを印刷に採用しています。また木材に似た茶色の色調が、家に温かみのある雰囲気を与えている点も、従来のコンクリート住宅と異なる点です。

元の記事には数多くの写真が掲載されています。