ナノセルロースニュース2021年11月

目次

バナナの葉の抽出物を使ったバクテリアナノセルロースの生産研究(2021年11月28日)

エクアドルのUniversidad Estatal de Milagro(ミラグロ州立大学)、Universidad Técnica de Machala(マチャラ工科大学)など4つの研究機関で、バナナの葉から抽出した糖分を使ってバクテリアナノセルロース(BNC)を生産する研究が行われています。エクアドルでナノセルロースの研究が行われていることを確認したのは初めてです。

エクアドルはバナナの主要産地で、収穫後に大量の葉が廃棄物として発生しています。研究ではバナナの葉から抽出した糖分を原料に、バクテリアナノセルロース(BNC)を生産し、21日間で0.031g/gのBNCが得られたとのことです。詳細は11月27日の公表された下記の論文をご覧ください。

Fiallos-Cárdenas, M. et. al., Bacterial Nanocellulose Derived from Banana Leaf Extract: Yield and Variation Factors. Resources, 2021, 10, 121. https://doi.org/10.3390/resources10120121

バクテリアナノセルロースを使って宇宙で繊維を生産(2021年11月27日)

有人宇宙飛行の科学的研究を加速するポーランドの民間企業Analog Astronaut Training Center (AATC)は、藻類とバクテリアナノセルロース(BNC)を使って、海と宇宙で衣服を製造するための技術を開発しています。このほどその概要がYouTubeで公表されました。

AATCは、元欧州宇宙機関のエンジニアと科学者によって作られた企業で、2018年に宇宙生物学と医学に焦点を当てた科学実験のために、宇宙環境をシミュレートするための実験室を設立しました。同社は、科学者、エンジニア、宇宙愛好家、将来の宇宙飛行士候補者向けの運用トレーニングを行っているほか、さまざまなプロジェクトを進めています。

その一つが、海と宇宙で藻類とBNCから衣服を製造する研究です。藻類とバクテリアをバイオリアクターで培養し、製造したBNCを繊維にします。これによって、化学合成された繊維による食品、飲料水、環境水の汚染を減らすことができます。
この研究に関して、ポーランドのJagiellonian University(ヤギェウォ大学)と共同で特許を出願しいています。

詳しくはYouTubeをご覧ください。

セルロースナノクリスタルを使ったレアアースの回収(2021年11月24日)

強力な永久磁石の材料として用いられるネオジムを、セルロースナノクリスタル(CNC)を使って電子廃棄物から回収する技術を開発したことを、ペンシルベニア州立大学がウェブサイトで公表しました。

ネオジムは、強い磁力を持った永久磁石を生産するために必要で、ネオジム、鉄、ホウ素の化合物 (Nd2Fe14B) は、非常に強力な永久磁石であるネオジム磁石となります。ネオジム磁石は高性能のモーターやスピーカーなどのさまざまな分野で利用されています。

一方でネオジムを含む鉱床は到達するのが難しく、またその場所も限られており、中国が世界の供給量の70%以上を占めています。そのため、古いコンピューターやプリント回路基板などの電子廃棄物からのリサイクルが行われていますが、他の成分からの分離が困難でした。

同大学の助教のAmir Sheikhiと修士課程学生のPatrictiaWameaは、セルロースナノクリスタル(CNC)がネオジムイオンに選択的に結合し、鉄、カルシウム、ナトリウムなどの他のイオンから分離できることを発見しました。正に帯電したネオジムイオンを引き付けて結合するために、CNCのセルロース鎖が付着した部分を負に帯電させ、粒子をより大きな断片に凝集させることで、効果的に回収することができます。

現在の希土類元素のリサイクルプロセスは環境に有害です。化学反応で元素を抽出するために、強酸を使用します。このプロセスは、安価な再生可能資源であるセルロースを使用しているため、環境に優しいプロセスです。また従来の採掘プロセスは危険で費用がかかり、露天掘りによる環境への悪影響があります。

詳しくは、同大学のウェブサイトに11月22日に掲載された記事をご覧ください。

スギノマシン、サステナブルマテリアル展へ粉末状CNFなどを出品(2021年11月24日)

セルロース粉末をウォータージェット法で解繊したセルロースナノファイバー(CNF)の水分散液(固形分濃度:15 wt%)と、価格が従来の1/8になったCNFのドライパウダーを、12月8日~10日に幕張メッセで開催される第1回サステナブルマテリアル展のNEDOブースへ出品することを、本日付けのニュースリリースで発表しました。

CNF水分散液は、セルロース粉末をウォータージェット法で解繊したもので、従来は固形分濃度が10 wt%でしたが、NEDOの助成を受けて研究開発を進めた結果、15 wt%での製造に成功したとのことです。濃縮工程を行わない機械解繊CNF水分散液としては、世界最高濃度(同社調べ)だそうです。
またCNFのドライパウダーはNEDOの助成を受けて研究開発を進めることで、大幅な製造効率の向上とコスト低減が図られたとのことです。一定量以上を購入を条件に、1 kg当たりの価格を従来の1/8で販売するとのことです。
詳しくは同社のニュースリリースをご覧ください。

ナノセルロース・ドットコム コメント
同社はCNF乾燥粉末も販売しているのに、CNF水分散液の固形分濃度を10%から15%にする目的とメリットがわかりません。一般的にCNFの解繊効率は、固形分濃度が低いほど高くなります。同社のウオータージェット法では、原料を複数回、装置で処理することで解繊しますが、固形分濃度が高くなると、処理回数が増えることになり、所要エネルギーも処理時間も増えることになるはずです。
つぎに、CNFドライパウダーの製造効率向上とコスト低減が図られたということですが、もともと価格を公表していないので、1/8になって、他社より安くなったのかどうか、確認できません。ちなみにCNFのドライパウダー王子ホールディングス、中越パルプ工業、大王製紙、モリマシナリー、大阪ガスも製造しており、特に中越パルプ工業の水中対抗衝突法は、スギノマシンのウォータージェット法とほぼ同じです。詳しくは下記をご覧ください。
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韓国SKCがナノセルロースで補強したPBATを製造へ(2021年11月24日)

韓国SKグループの大手化学メーカーであるSKCは、ナノセルロースで補強した、生分解性のあるポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を2023年から製造します。PBATは1,4-ブタンジオール、テレフタル酸、アジピン酸などの石油由来の樹脂ですが、生分解性があります。一方で、他のプラスチックと比べて機械的強度に劣るため、用途が限られていました。

韓国の複数のニュースサイトが11月23日に配信した記事によりますと、同社はデサンLXインターナショナルと180億ウォン(=17億円)を共同で出資して合弁会社を作り、年間7万トンのPBAT生産設備を設置する計画です。
デサンはヤシを原料にバイオ由来の1,4-ブタンジオールを製造し、SKCは木材パルプから製造したナノセルロースを補強材として用いたPBATを製造し、LXインターナショナルは製品を販売します。

新しいPBATは引き裂きや伸びの弱点を克服しているため、現在使用されている使い捨てのビニール袋や注射製品を置き換えることができます。しかも6か月以内に分解します。

同社は、韓国化学技術研究所(KRICT)と共同で、木材パルプから抽出したナノセルロース強化材を通常のPBATに添加することで、耐火プラスチック材料を置き換えることができる生分解性高強度バイオプラスチックを2020年に開発しています。

東亞合成、セルロースナノファイバー課を新設(2021年11月24日)

東亞合成株式会社は11月22日付のプレスリリースで、2022年1月1日付で新製品開発事業部新事業企画部に「セルロースナノファイバー課」を新設することを発表しました。新事業分野の開発を加速するため、新製品開発事業部の再編・強化に伴うものです。

同社は2020年11月に、安価な次亜塩素酸ナトリウムを使うことで、セルロース繊維をナノセルロースの最小単位であるセルロースミクロフィブリルにまで容易に解繊する技術を開発したことを発表しています。

詳細は同社のプレスリリースをご覧ください。

韓国のCNFベンチャーANPOLYがPR動画を公開(2021年11月24日)

浦項工科大学のベンチャーで、もみ殻からセルロースナノファイバーを製造しているANPOLYが、同社の製品POLLYCELL®と技術を説明する英語の動画を11月23日にYouTubeで公開しました。

同社は食品包装用にCNFをコーティングしたガスバリアフィルムを製造し、輸出しているほか、キチンナノファイバーも製造・販売しています。

同社のYouTube動画はこちらからご覧いただけます。

第3回ナノセルロース材料に関する国際シンポジウムが中国で開催(2021年11月21日)

The 3nd International Symposium on Nanocellulosic Materials (ISNCM 2021)が中国造紙学会などの主催で、11月20日(土)・21日(日)の2日間、オンラインとオフライン(広州)で開催されました。

ISNCMは1回目が2017年に杭州で、2回目が2019年に天津で開催され、今回が3回目です。中国で開催されるナノセルロースに関する最大のイベントで、ナノセルロースに関わる研究者の大半が出席しています(2019年は出席者約300人)。

今回は華南理工大学がホストでしたが、コロナ禍のため、広州在住者は華南理工大学五山キャンパスでの参加、それ以外の人はZoomでのオンライン参加となりました。

発表件数は基調講演が9(前回は6)、口頭発表が74(同36)、ポスター発表が40(同76)でした。
海外からの講演者は、米国が2名、カナダスウェーデンオーストリア日本が各1名ですが、うち米国からの2名は中国人なので、実質4名でした。
口頭発表では、カナダから2名、米国、フィンランド、イスラエル、オランダ、ケニアから各1名の発表がありました。

このシンポジウムでは、中国におけるナノセルロース研究の最新トレンドがわかります。発表内容については、下記の記事にまとめていますので、ご覧ください。

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ペルーの大学で竹からのナノセルロースで食品包装材料を作る(2021年11月19日)

ラモリーナ国立農業大学(National Agrarian University – La Molina:UNALM)では、家具を作る際に利用される竹の廃材から作ったナノセルロースで補強することで、食品を保存するための包装紙を製作する研究に取り組んでいます。

ニュースサイトProiqra.comに11月18日に掲載された記事によりますと、竹は木よりも速く成長するため、家具を作るための材料として使われます。研究者たちは家具を作る際の廃棄物を利用しました。ナノセルロースは、紙の機械的強度と密度を向上させ、流体に対する挙動を最適化する添加剤です。さらにこの物質は100%植物由来で無害であり、食品を覆うのに理想的です。

従来のプラスチックからできた食品包装材料を、紙の包装材料に置き換える必要があります。そのための添加剤としてナノセルロースを使います。ナノセルロースは透過性を低下させ、紙の抵抗を高め、密度や多孔性などの物理的特性を改善するからです。
この製品は、すでによい結果を出し始めており、ナノセルロースの添加で紙の多孔性が大幅に改善され、空気などの液体の通過を阻止し、紙の抵抗を増加させることがわかりました。

研究チームは紙と段ボールの製造を手掛けるCarvimsa社と協力してします。またこの研究開発プロジェクトはConcytec(ペルー国立科学技術評議会)や世界銀行から支援を受けています。

詳細はこちらの記事をご覧ください。

セルロースナノファイバーと過酢酸から新規口腔ケア材料を創製(2021年11月17日)

大阪歯科大学は、国際歯科研究学会米国部会・歯科医師会等が主催する歯科学生によるグローバルな研究発表大会の日本大会で、「高齢者の口腔ケアのための過酢酸を含む新しい歯科用消毒剤の開発」というテーマで口腔ケア材料を開発した同大学の3回生が、準優勝したことを、同日ニュースリリースで発表しました。

開発されたのは、誤嚥性肺炎を誘発しない高粘性・高殺菌性・高安全性の口腔ケア材料です。過酢酸(PA)セルロースナノファイバー(CNF)の混合物を試作し、材料評価、殺菌実験、細胞毒性評価を行い、最適混合条件を予備的に検討しました。そしてPAとCNFを最適混合させたPA-CNFスラリーが、高粘性を備えつつ、高殺菌性・安全性・審美性を担保した新規口腔ケア材料候補となる可能性があることを突き止めました。
これは介護現場に変革をもたらす新規口腔ケア材料になる可能性があるとのことです。

この大会は、令和3年度日本歯科医師会スチューデント・クリニシャン・リサーチ・プログラム(SCRP)日本代表選抜大会です。SCRPは、国際歯科研究学会米国部会・歯科医師会等が主催する、歯科学生によるグローバルな研究発表大会で、日本大会は1995年度から開かれ、全国の歯科大学・歯学部の学生が研究成果やプレゼンテーション能力を競っています。

バクテリアナノセルロースと多糖類の複合材料を展示会に出品(2021年11月16日)

大日本住友製薬の子会社で食品素材、医薬品・化粧品原料などを製造するDSP五協フード&ケミカル株式会社は、同社が国立大学法人金沢大学草野作工株式会社と共同開発したバクテリアナノセルロースと多糖類の複合材料を、12月に開催される展示会に出品することを、同日、ウェブサイトで発表しました。

展示されるのは、微生物発酵で作られたセルロースナノファイバー(CNF)の一種であるバクテリアナノセルロース(BNC)と多糖類の複合材料のほか、草野作工のBNCであるファイブナノ(Fibnano®)、DSP五協フード&ケミカルの植物や海藻、微生物由来のユニークな粘度特性を示す増粘多糖類などです。

なお、DSP五協フード&ケミカル、草野作工、金沢大学の共同研究については、10月29日に金沢大学から出たニュースリリースもあわせてご覧ください。

展示会は、第1回 サステナブルマテリアル展(通称:SUSMA(サスマ))で、12月8日(水)~10日(金)に幕張メッセで開催されます。公式サイトはこちら

また詳しい内容はDSP五協フード&ケミカルのウェブサイトでご確認ください。

中越パルプと丸紅、CNFを使用した鶏舎環境改善資材を販売(2021年11月15日)

中越パルプ工業株式会社と丸紅株式会社は、セルロースナノファイバー(CNF)を使用した鶏舎環境改善資材の販売を開始することをプレスリリースで発表しました。これは鶏舎で使用することで、埃・塵・羽根の飛散を防止するとともに、害虫の活動を抑制するものです。

プレスリリースによりますと、製品名はnanoforest-S 【ファーム】で、特徴として
① サステナブルな天然素材を使用しており、抗生物質や殺虫剤等の合成成分は使用していない
② nanoforest®の乾燥収縮作用により、埃・塵・羽根を小塊化し、飛散を防止します。
不快害虫を天然繊維で物理的に固定化するため、薬剤成分等による殺虫ではありません。
の3点が挙げられています。

作用機序としては、
CNFに鶏舎内の埃・塵・羽根が付着し、塊となることで、飛散を防止する
CNFが鶏舎内の害虫に付着し、害虫の活動を物理的に抑える
の2点と考えられます。

ただ、プレスリリースには、製品の性状、使用方法(どこへどのような頻度で使用するのか)、価格、使用したときの効果データなど、鶏舎改善販売資材の具体的な内容について、全く記載されていません。
また写真が掲載されていますが、今回の製品の写真ではなく、従来から販売されているCNF水分散体の写真でした。

詳しくは同社のプレスリリースをご覧ください。

中越パルプの竹由来CNFがボディウォッシュとボディミルクに採用(2021年11月15日)

中越パルプ工業株式会社は、竹を原料として水中対向衝突法(ACC 法)で製造したセルロースナノファイバー(CNF)(商標名:nanoforest®)が、株式会社nijitoの製品であるボディウォッシュとボディミルクの化粧品原料として採用されたことをプレスリリースで発表しました。

株式会社nijito(福岡市)は、ヘアケア、スキンケア化粧品、日用雑貨の製造及び販売・通信販売業を行っている会社で、女性向けの100%天然由来商品ブランド「haru」を展開し、ヘアケア商品、スキンケア商品、ライフケア商品を扱っています。そのうち「haru」ブランドで2021年11月より発売されるボディウォッシュ「スムースファイバーウォッシュ」、ボディミルク「スキンバリアミルク」に配合される化粧品原料として、中越パルプ のCNF が初めて採用されたとのことです。

ボディウォッシュは竹由来 CNF を配合することで、よごれや古い角質などを絡め取って洗い流します。素手だけで優しく洗うことにより肌への摩擦を軽減し、つるすべ肌へと導きます。
もうひとつの製品であるボディミルクは、濡れたまま使用でき、肌の水分が蒸発する前に保湿ケアを行うことができるものです。竹由来 CNF が肌の乾燥を防ぐ「うるおいラップ」の役割を果たします。また、伸びもよく、ベタつかないのでストレスなく塗ることができ、塗った後はタオルで軽くポンポンとするだけで保湿ケアが完了します。

詳しくは同社のプレスリリースをご覧ください。

磁気作動性のあるバクテリアナノセルロース球体をワンステップで合成(2021年11月13日)

ソフトアクチュエータは医学において魅力的なツールです。しかし生体適合性、柔軟性、自己修復性、さまざまな生物学的環境への適応などの要件に準拠する必要があります。バルセロナ材料科学研究所(ICMAB-CSIC)、カールスルーエ工科大学の共同研究チームは、超常磁性酸化鉄ナノ粒子を含む細菌性セルロース球体を、ワンステップで合成し、その性能を評価しました。この材料はソフトアクチュエータとして使用することができます。

バクテリアセルロース球体(BCS)はさまざま方法で製造できることがわかっていますが、それぞれ専用の機器と局所的な機能化が必要でした。またこれらの球体を多機能化することは困難でした。
今回開発した静的培養法は、球内のナノ粒子の位置を制御することができるため、柔軟な磁気BCSの生成を可能にしました。球状構造内には超常磁性酸化鉄NP(SPION)が入っていますが、その配置は、局所磁場によって制御することができます。

さらに、特定の場所に鉄以外のNP(AuおよびPt)を追加することで、Janus構造を作成する作動球形構造を作成することもでます。Pt NPとSPIONの組み合わせにより、磁場とHの両方によって駆動される複合可動構造が提供されます。Janus Pt / SPIONは、コントロールと比較して、これらの構造の方向性と動きの速度が5倍になりました。

詳細は11月12日に公開されたACS Appl. Mater. Interfaces論文をご覧ください。

ダックダウンフェザーよりも暖かくて軽いCNFで作られた超軽量の断熱素材(2021年11月13日)

エディソン賞(EdisonAwards™)は、1987年より、世界で最も革新的な新製品、サービス、ビジネスリーダーに与えられる賞で、2022年の受賞候補者がウェブサイトで公開されています。その中にあるCelluwarmという素材について紹介します。

Celluwarmは、トウモロコシの殻から抽出されたセルロースナノフィブリル(CNF)から作られた超軽量の断熱素材です。これを使うことで最高の断熱性能を備えた冬服を作ることができ、ダックダウンフェザーよりも3.5倍暖かく、50%薄くて軽く、断熱性能を損なうことなく50回洗濯することができます

ウールは生地が濡れると、吸湿するため断熱性能が低下します。また極寒時の断熱には厚くて重いニットウール生地が必要です。これらの特性により、ウールは、寒冷および極端な気象条件下でのアクティブウェアでの使用には適さなくなっています。
しかし今回開発した繊維は、ウール繊維と一緒に軽量の生地に編むことができ、並外れた断熱性能を提供することができます。

この製品を出品しているNano and Advanced Materials Institute(NAMI)は、2006年に香港科技大学の子会社として設立された企業で、香港政府のイノベーション技術委員会によって、ナノテクノロジーおよび先端材料の研究開発センターとして指定されています。ナノテクノロジーと先端材料の市場主導型研究を実施およびサポートし、業界と社会全体に利益をもたらすテクノロジーの商業化を進めているとのことです。
同社のウェブサイトもあわせてご覧ください。

セルロースナノクリスタルで作られた植物性のキラキラ材料(2021年11月12日)

環境にやさしいキラキラ材料をケンブリッジ大学セルロースナノクリスタル(CNC)から開発したことを、11月11日に欧米の複数のメディアが報道しました。この材料は食べものや飲み物に加えることで、ドレスアップすることができます。CNCはさまざまな色を作り出すように光を曲げることができ、その性質を利用したものです。

出典:Australian Broadcasting Corporation Website

CNCに水、塩や別の種類の可溶性セルロースを加えることで、それらが互いにくっつき、異なる波長の光を反射するようにしています。例えば水分含有量が多いと、CNCの粒子が膨潤するため、見える色が変わります。

従来のキラキラ材料は、プラスチック、アルミニウム、鉱物雲母、二酸化チタンなどが使われていたため、健康にも悪く、環境汚染の原因になっていました。今回開発したものはセルロースだけが原料です。そして生分解性があり、毒性もありません。

製造プロセスを確立にまだ数年かかるようですが、研究者たちはキラキラを商業的に利用できるようにするための、スピンアウト会社の設立を検討しているとのことです。

この内容は、11月11日に公開された論文誌 Nature Materials に掲載されたものの一部です。論文はこちらから確認することができます。なお、この報道内容に関連するプレスリリースは確認されていません。

バイオ材料を用いた3Dプリントが動物製品や合成製品を置き替える(2021年11月12日)

フィンランドのオーボアカデミ大学のウェブサイトに、森林資源からのバイオ材料を使った3Dプリントで、バイオメディカル分野で使われている動物製品や合成製品が、植物由来製品によって取って代わる可能性があるという記事が11月11日に掲載されたので、概要を紹介します。

木材の主成分は、リグニン、セルロース、ヘミセルロースです。これらの物質は木材チップから抽出することができます。リグニンは接着剤に使うことができ、例えばバイオプラスチックを作るときに使用できます。セルロースとヘミセルロースは、重金属や有機汚染物質の水を浄化するために、または包装材料を伸縮性にするための成分として使用できます。これらの分野はすべて、オーボアカデミ大学で研究されています。

同大学のChunlin Xu教授のチームは、セルロースを3D印刷の材料として使うための研究を行っています。3Dプリントのアイデアは新しいものではありません。この分野での最初の研究ブームは約10年前に起こりました。数年後には3Dプリンターの使用がバイオメディカルなどの一部の業界で標準化される可能性があります。ナノセルロースは移植可能な臓器の人工組織再建に使用できることがわかっています。

Xu教授のチームは生体高分子に基づく組織の支持構造の3次元印刷を可能にしました。これらは薬物スクリーニングで使用できます。
また、傷を治療するためのハイドロゲルを印刷することもできます。これらの印刷物は傷の形のように見えますが、治癒プロセスを促進できるさまざまな薬や成長因子を担持することができます。天然素材の代替品を使用した3D印刷が普及する可能性のある別の分野は、化粧品業界です。現在、これは主に美容インプラントの需要が高いアジア市場で取り組んでいます

動物材料や合成材料の代わりにナノセルロースを使用することの利点はいくつかあります。まず移植に動物の組織を使用する場合、病気を感染させるリスクが常にあります。これは、純粋な天然素材を使用することで完全に回避できます。また3D印刷を使用すると、動物を使って多くの実験を行う必要がなくなります。さらに新しい方法では、個々のモデルを作成することができます。しかもナノセルロースは再生可能で、完全に生分解性があります。

さらなる利点はコストです。動物の材料よりも天然の材料を使用する方が安価です。例えば、医薬品や化粧品などの業界で弾力性のためによく使用されるコラーゲンは、主にゼラチンで構成されています。処理と洗浄が必要なため、非常に高価です。セルロースは、大量に入手できる優れた代替品を提供できます。

詳しい内容は、オーボアカデミ大学のウェブサイトをご覧ください。

バクテリアナノセルロースで4D印刷のための材料を開発(2021年11月9日)

4D印刷とは、3D印刷に時間の次元を追加して、時間とともに、温度、光、pHなどの外部刺激によって形状が変化する物体を作る技術です。ポルトガルのコインブラ大学のチームは、バクテリアナノセルロース(BNC)を使って、4D印刷が可能な材料を開発しました。この材料は医療、運輸、繊維などの分野で、無数のアプリケーション開発への一歩となります。

この研究は、科学技術財団(FCT)とEU(COMPETE 2020)によって提供された25万Euro(=3,300万円)の資金を使って、レイリア工科大学と共同で行われています。

コインブラ大学の細菌培養のコレクションから選抜された細菌を使ってセルロースを生産し、得られたセルロースは別のポリマーと混合され、得られたバイオコンポジットから4D印刷に適したフィラメントが作られました。
この材料の特徴は可逆性です。外部刺激によって形を変える材料が、自分自身で元の形に戻ることができます。障害や課題を克服し、多種類のオブジェクトが正常に印刷され、幅広いアプリケーションへの扉が開かれました。

例えば電気のない場所で動作できるデバイス、機械的な需要に応じて形状を変更できるデバイス、周囲温度に応じて発汗を調整するアスリート向けのスマートウェア、バイオメディカル向けのデバイスなどに使うことができます。

この技術は、バクテリアがナノセルロースを生成するために、食品成分(例えば食品廃棄物など)のみを必要とし、環境に優しいため、持続可能で低コストです。使用される材料の97%が、食品成分由来です。生成される廃棄物は最小限であり、しかもその廃棄物を使用して、より多くのフィラメントを生成することができます。

さらに、複合材料とセルロースの両方が、完全に生分解性を持っています。バクテリアを使用することのもう一つの大きな利点は、木から得られるセルロースに比べて、セルロースの純度が高いということです。またこのプロセスで使われる細菌には、病原性はありません。

次の研究段階では、特定のアプリケーション向けの構造の設計、つまりこの4D効果を利用できるデバイスの設計が行われる予定です。
詳細はポルトガル南部のニュースポータルサイトSul Informaçãoに11月8日に掲載された記事をご覧ください。

熟れすぎたグアバ果汁からバクテリアナノセルースを生産(2021年11月9日)

インドネシア科学院化学研究センターから年に2回オンラインで発行される雑誌 Journal Kimia Terapan Indonesi の最新号に、有機性廃棄物を減らすための解決策として、熟れすぎたグアバの果汁から酢酸菌Acetobacter xylinum を使って、バクテリアナノセルロース(BNC)を生産する取り組みが掲載されています。

BNCを短時間で大量に生産するためには、費用対効果の高い炭素源を見つける必要があります。そこで熟しすぎたグアバの果汁を使って、BNCを生産したところ、2日間の培養後にBNCを回収することができました。このBNCは、nata de guavaと呼ばれます。熟れすぎたグアバ果汁はpH4で、還元糖含有量は23g / Lですが、これを用いたとき、最も分厚い(1.267cm)BNCの層を生成しました。

この果汁は還元糖とたんぱく質の含有量が十分高いため、炭素と窒素を追加しなくても、BNCが形成されます。ジャワ島で生産された熟れすぎたグアバは廃棄物として処理されてきましたが、膨大な廃棄物を有効利用する方法を提供することができます。

詳しくはJournal Kimia Terapan Indonesiの記事をご覧ください。

ココナッツ殻のCNFで強化された生分解性PVAフィルム(2021年11月9日)

インド・チェンナイにある私立大学SRM Institute of Science and Technologyは、ココナッツ殻から生成したセルロースナノファイバー(CNF)を、精油を含んだポリビニルアルコール(PVA)フィルムの補強に使用しています。

11月8日に公開された論文によりますと、このフィルムは機械的強度、熱耐性、光学的性質および抗酸化性が向上し、また精油によって疎水性抗菌性が改善されていました。またフィルムには生分解性もあります。

論文の内容を紹介しますと、CNFは亜麻仁油とレモン油とともにポリビニルアルコール(PVA)ポリマーマトリックスに組み込まれました。精油はPVA-CNFフィルムの抗酸化特性を改善し、フリーラジカル捕捉活性は精油を添加すると、31.52±0.08%となりました。さらにPVA-CNF-精油ベースの複合フィルムは、食品由来の病原菌に対して優れた抗菌活性を示しました。したがって、食品業界での包装材料として使用できます。

同様に、フィルムの機械的および熱的特性は、通常のPVAフィルムよりも優れていました。フィルムの光学特性は、ポリエチレンフィルムと同等でした。さらにこのフィルムは、優れた生分解性を示し、45日目に91%分解しました。

この研究のもう1つの主要な目的は、PVAベースのフィルムに疎水性を提供することでしたが、精油とCNFを組み込むことで改善されました。このことから、調製されたバイオナノコンポジットフィルムは、生分解性のない従来の食品包装フィルムの代替材料として使えるとのことです。

詳しくは、Chemosphereに掲載された論文をご覧ください。

ナノセルロースとナノキチンから膜とセンサーを開発(2021年11月9日)

TU Bergakademie Freiberg(フライベルグ工科大学)のウェブサイトに、11月8日、ナノセルロースとナノキチンから膜とセンサーを開発しているという記事が掲載されたので、概要を紹介します。

フィンランドからTU Bergakademie Freibergの電子センサー材料研究所(IESM)に客員研究員として来ているDr. Katja Heiseは、ナノセルロースとナノキチンで作られた新しい膜とセンサーを開発しています。

バイオナノ材料の化学構造と特性を変えることで、調整された特性を持つ革新的な材料を作ることができます。水が結合したセルロースは、低濃度でも水分量を表示できるセンサーになります。また修飾ナノセルロースの表面伝導率は、センサー技術で使用できます。そのメカニズムは、現在、国際的に非常に人気のあるトピックだそうです。将来的には、バイオベースの材料は、センサーアプリケーションでの鉱物原料の割合を減らすか、完全に置き換える可能性があります。生体高分子は柔軟性があるため、ポータブルセンサーやエネルギー発生器、いわゆる電子スキンウェアラブルにも使用することができます。

これは、同大学が海外からの客員研究員の活動を紹介したもので、研究について詳しく書かれたものではありませんが、参考までに紹介しました。詳しい内容をお読みになりたい方は、同大学のウェブサイトをご覧ください。

ユニチカがセルロースナノファイバー含有のナイロン6樹脂を開発(2021年11月9日)

ユニチカは、セルロースナノファイバー(CNF)含有ナイロン6樹脂を開発したことを11月8日にニュースリリースで発表しました。この樹脂は未変性のCNFが高濃度に均一分散していることが特徴です。

CNFは樹脂の強化フィラーとしてのニーズがありますが、CNFによる樹脂の高強度化には、高濃度かつ均一な分散が必要です。既存技術では未変性CNFの高濃度分散は困難であり、CNFに新たな化学物質を反応させる変性処理を必要としてきました。同社では重合技術により未変性CNFをナイロン6に配合する独自の技術にさらに改良を重ね、未変性CNFを高濃度に配合することで、さまざまな機械的特性を向上させたCNF含有ナイロン6樹脂を開発しました。

新たに開発したCNF含有ナイロン6樹脂は、未変性のCNFが高濃度にナイロン6樹脂中に均一分散されており、その結果、ガラス繊維30%含有ナイロン6以上の剛性低線膨張係数といった特徴を持つ優れた材料となっています。さらに、粉砕や再成形によるCNFの破断がなく、3回のリサイクル使用後においてもほとんど物性低下が見られません。

同社のこの樹脂は他にも軽量性、加工性、耐熱性、石油由来材料削減などの特徴を有し、さまざまな用途において安全なサステナブル材料としての使用が見込まれます。
今後、この樹脂は、自動車、電気機器、建築材料、日用品、アウトドアなど、剛性を必要としつつ樹脂化および石油由来材料削減ニーズのある分野や、より安全な材料を使用したい、使用後の樹脂処分時の焼却残渣をゼロにしたい、リサイクル使用をしたいといったさまざまな要望に応えられる可能性があります。

なお、ニュースリリースはこちらからご覧いただけます。

リグノセルロースを光学材料として使用する(2021年11月5日)

リグノセルロースを光学用途に使用することで、珪砂やプラスチックなど、これまでに光学用途に使用されてきた材料を置き換えることができると、フィンランドのアールト大学が11月4日付のブレスリリースで発表しました。

リグノセルロースを非常に細かく分解して元に戻すと、全く新しい材料を作ることができます。トゥルク大学(フィンランド)、RISE(スウェーデン)、ブリティッシュコロンビア大学(カナダ)と共同で行われた研究では、光学用途に必要なさまざまな製造プロセスと特性、例えば、透明性、反射性、UV光のフィルタリング、構造色を評価しました。リグノセルロースの特性を組み合わせることで、特定の化学物質や蒸気に反応する窓や材料を作成することができます。また日焼け止めのように機能する、放射線を吸収するUVプロテクターを作ることも可能です。

またリグノセルロースに機能を追加することによって、ガラスよりも簡単にカスタマイズすることもできます。例えば、太陽電池のガラスをリグノセルロースに置き換えることができれば、光の吸収を改善し、効率を向上させることができます。

森林バイオマスはすでに十分な需要があり、また炭素吸収源としても重要なのて、リグノセルロースの供給源として、毎年10億トン以上生成しているバイオマス廃棄物が有望です。

現在、研究者たちはまだバイオベースの材料を研究し、試作品を作成しています。例えばアールト大学では、軽量で光反応性のある布地を開発しています。

リグノセルロースベースのイノベーションの開発と商業化における主な障害は、その製造コストでした。2000年代の初めにはすでにナノセルロースに注目が集まっていましたが、実用化しませんでした。その後の研究によって、生産にかかるエネルギー消費量とコストは産業利用を可能にするのに十分なほど低下しています。

詳細はアールト大学のプレスリリースをご覧ください。

ナノセルロース・ドットコム
このプレスリリースは、ナノセルロースに関するものではありませんが、リグノセルロースを使用する過程でナノ化するため、取り上げたものです。

木材の特性がナノセルロースの抽出効率に与える影響(2021年11月3日)

スウェーデン農業科学大学は11月2日のニュースで、木材のセルロースの修飾とリグニンの量がナノセルロース抽出の効率にどのように影響するかについての研究で、学位を授与したことを発表しました。

さまざまな原材料がナノセルロース生産のためにテストされていますが、原料の化学組成がナノセルロースの収量と最終特性にどのように影響するかについては、よくわかっていませんでした。同大学の学生は、ルレオ工科大学の材料科学者と協力して、木材の修飾された化学構造がナノセルロース生産の効率にどのように影響するかを調べました。

研究では、セルロース合成機能が損なわれている遺伝子組み換えハイブリッドポプラの木と、木材の3つの主成分であるセルロース、ヘミセルロース、リグニンの組成が自然に異なる木からの材料を使用しました。
その結果、
・改変された樹木は機械的に弱かった
・木の細胞壁の特徴はナノセルロースの特性に影響を与える
・リグニンは木材からのナノセルロース抽出を促進する可能性がある
ということが分かったそうです。

詳しい内容は、スウェーデン農業科学大学のニュースをご覧ください。