ナノセルロースニュース2022年5月

繊維用の染料による汚染をナノセルロースで解決する試み(2022年5月21日)

ノースカロライナ州立大学、ナチュラルリソース大学、ウィルソンテキスタイル大学の研究者が、ファッション業界における汚染染料の問題を解決するために、木材から抽出したナノスコピック粒子を使用するプロセスを開発しました。

繊維工場は、多くの場合、残留染料や有害化学物質を環境水系に投棄します。繊維工場では、有毒な染料や着色剤を使用しています。ナノセルロースを使用することで、持続可能なプロセスを構築することができます。

ウィルソンテキスタイル大学のResearch Opportunity Seed Fund Programからの資金提供を受けた研究チームは、ナノセルロースを使って、魚の鱗、鳥の羽、昆虫の体に見られる虹色のきらめきに似た虹色の模様を備えた衣料品を製造できるプロセスを開発しました。ナノ粒子を使って虹色のフィルムを作る方法はわかっていましたが、これらの粒子を繊維に適用する方法がありませんでした。

セルロースは木材チップやパルプから抽出され、水と組み合わされ、得られた混合物を酸で処理してセルロースナノクリスタル(CNC)にします。続いて不要な成分を除去するために精製されます。精製プロセスが完了したら、研究者は混合物をフレームに追加して、プラスチックのようなフィルムに固化できるようにします。さらにコンピューター支援設計テーブルを使用して、フィルムを衣料品に印刷できる形状とパターンにカットします。

研究チームのDr. Lavoineによると、繊維にナノセルロースを使用することで、天然資源の持続可能な使用が保証され、低品質の木材と伝統的な木材の両方の新しい用途への道が開かれます。また、ファッション業界からの染料汚染を減らすことができます。国連環境計画は、布地の染色プロセスが水質汚染の2番目に大きな原因であり、ファッション業界だけで世界の廃水の20%を排出していると報告しています。

研究者たちは、より多くの色を実現することに取り組んでおり、スマホケースを含む他のさまざまなアイテムへのナノセルロースの適用をテストしているとのことです。

詳しくはBio Market Insightsのニュースをご覧ください。

ナノセルロース・ドットコム コメント

この研究を主導するノースカロライナ州立大学のAssistant Professor、Dr. Nathalie Lavoineは、過去に東京大学磯貝研究室に在籍していた方です。

ナノセルロースなどを使った最新の抗菌包装ソリューション(2022年5月20日)

竹で作られたフィルムから、チーズ製品の貯蔵寿命を2倍にするコーティングまで、最新かつ最も革新的な抗菌包装ソリューションの情報が、ウェブサイトPackaging Europeにニュースとして掲載されました。ナノセルロース以外のものも含め、紹介します。

中国の華南理工大学は、キトサンとナノセルロースシートを使用した抗菌紙を開発しました。この紙は優れた機械的強度を持ち、細胞毒性がなく、99.9%のバクテリア抑制を維持しながら5回リサイクルすることができます。プロジェクトの詳細については、Journal of Hazardous Materialsに掲載されています。

中国の南京大学と江蘇大学の研究者は、ブラックベリーの収穫後の品質を向上させる食品包装用のエレクトロスピニングされたナノファイバーを開発しました。繊維にはオルガノエッセンシャルオイルとβシクロデキストリンが組み込まれており、優れた生体適合性、抗菌性、抗真菌性を示したと、Chemical Engineering Journalの論文に報告されています。

中国の重慶大学の研究者は、北京の国際竹籐センターと共同で、抗菌性の生分解性食品包装の可能性がある竹実質細胞からナノセルロースフィブリルベースの複合フィルムを開発しました。フィルム中の銀ナノ粒子は、他の利点の中でもとりわけ、引張特性をわずかに改善する可能性がある考えられます。詳細については、International Journal of Biological Macromoleculesに掲載されています。

ポルトガルでは、アベイロ大学の科学者が、活性食品包装用に還元型酸化グラフェンで機械的に強化されたヒートシール可能なでんぷん−キトサンバイオプラスチックフィルムを作成しました。フィルムは、疎水性の表面、低い水溶性、および改善された抗酸化活性を示しました。75%のでんぷんと25%のキトサン、および酸化グラフェンで調製された混合フィルムは、でんぷんのヒートシール特性を維持しながら、電気伝導率の最大値を達成しました。全文は、Carbohydrate Polymersに掲載され、2022年4月30日からオンラインで利用可能です。

イランでは、ウルミア大学の科学者が、カルボキシメチルセルロース(CMC)をベースにしてナタマイシンによる抗菌コーティングを行うことで、高水分モッツァレラチーズの貯蔵寿命を2倍にしました。CMCコーティングは、すべての微生物群で有意な減少を引き起こしましたが、ナタマイシンの添加はカビと酵母の数を減らしました。チーズをコーティング溶液に浸し、7℃で8日間保持し、微生物の仕様のpH、重量損失、および官能特性を調べました。詳細は、International Journal of Biological Macromoleculesを参照してください。

セルロースナノクリスタルから作った軽量発泡体を住宅の断熱材として使用(2022年5月19日)

セルロースナノクリスタル(CNC)から作られる軽量発泡材料は、太陽光を反射し、吸収された熱を放出し、断熱性があります。この材料を使うことで、建物の冷房に使うエネルギーを3分の1以上削減できます。

アメリカ科学振興協会(AAAS)が運営するウェブサイトEurek Alertに5月18日に掲載されたニュースリリースによりますと、ACSのNano Lettersに掲載された論文における研究で、中国の研究チームが、CNCを原料として、太陽光を反射し、吸収された熱を放出し、断熱性のある軽量発泡材料を設計したことが明らかになりました。この材料は可視光の96%を反射し、吸収された赤外線の92%を放出します。

冷却材料を生成するために、研究者らは、真空下でCNCを凍結乾燥する前に、CNCをシランブリッジで接続しました。このプロセスにより、ナノ結晶が垂直に整列し、白色の軽量フォームができます。
研究チームの試算では、建物の屋根と外壁にこの材料を用いることで、冷房に要するエネルギー量を、平均35.4%削減できると試算しました。

詳細はEurek Alertのニュースリリースをご覧ください。

ヘアリーCNCを使って抗がん剤の副作用を低減する試み(2022年5月13日)

ペンシルバニア州立大学の助教であるDr. Amir Sheikhiは、抗がん剤のオフターゲット効果を低減するように設計されたナノ材料として、hairy cellulose nanocrystals (HCNCs, ヘアリーCNC)に関する研究を行っています。

科学技術情報サイトAZO Nano に同日掲載されたインタビュー記事によりますと、ペンシルバニア州立大学のAmir Sheikhi博士は、がんの治療に使われる化学療法薬が、健康な組織に害を及ぼす前に捕獲するように設計された新しいナノ材料の開発を行っています。

がんの化学療法は、薬剤の効果を最大化するために局所化することができますが、全身の薬物循環は望ましくない副作用を引き起こすこともあります。
これに対し、血液から不要な薬物を除去するため、DNAコーティングされた磁性ナノ粒子、DNAコーティングされたポリアクリレート、ブロックコポリマーなど、不要な薬物、主にドキソルビシン(DOX)を血液から除去するためのいくつかの手段が提案されています。しかしこれらの薬物捕捉材料は、除去能力が十分ではありません。これに対し官能基の密度が高いナノ粒子は非常に有望です。

研究で使われているのは、セルロース繊維の制御された酸化によって合成される、両端に高度に機能化された無秩序なセルロース鎖(毛)で装飾されたヘアリーCNC(HCNC)です。HCNCは静電相互作用を介して血液からオフターゲットDOXを除去することができる、高度に帯電した生体適合性吸着剤です。吸着剤は、過ヨウ素酸塩と亜塩素酸塩を使用して、セルロースフィブリル上で制御された連続酸化反応を介して生成され、セルロースの無秩序な領域を優先的に可溶化および切断します。

これまで、ナノ粒子ベースの超容量薬物捕捉システムはありませんでした。その理由は複雑な血液組成のため、荷電ナノ粒子は通常、イオン強度および電荷スクリーニングや架橋などのいくつかのメカニズムを介したタンパク質媒介凝集の結果として、血液中での機能を失うからです。HCNCは、電気立体安定性があるため、機能が失われません。

HCNCは、薬剤を生理学的媒体から即座に分離し、局所化学療法後の血液の迅速で高効率かつ生体適合性のある解毒を可能にします。

またHCNCは透明で超疎水性のフィルム、セキュリティパッケージ、イオンスカベンジャー、ヒドロゲル、レオロジー調整剤、生体模倣鉱化作用などに応用できる可能性があります。

なおAmir Sheikhi博士は、CNCの研究で有名なマギル大学で博士号を取得し、ハーバード大学医学部、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で医学と生物工学の分野で研究を行ってきました。

詳しくはAZO Nanoの記事をご覧ください。

京都の企業が開発する人工衛星に北越のセルロースナノファイバーを使用(2022年5月13日)

低価格、短納期の汎用人工衛星を開発するテラスペースは、世界初となる紙の人工衛星の開発のため、来年打ち上げ予定の初号機“TATARA-1”に素材のサンプルを搭載し、耐久性などの試験を行うことを発表しました。素材としては使われるのはセルロースナノファイバー(CNF)で、北越コーポレーションがプロジェクトに参画します。

プレスリリース・ニュースリリース配信サービスのPR TIMESで同日発表された内容によりますと、京都にある人工衛星開発会社テラスペースは、紙の人工衛星第1号となる“PAPER-SAT” を2025年に打ち上げるスケジュールで開発を行なっています。

超小型人工衛星は一般的にはアルミニウム製の筐体を使用しますが、紙の人工衛星では主たる構造体に紙を原料としたCNF「ReCell®」を使用します。これによって強度を維持しつつ軽量化を実現でき、更にはアルミニウムと比較して電波を透過しやすいことから、通信用アンテナを衛星内部に搭載し衛星運用が可能であり、衛星設計の自由度を広げることができるとのことです。開発にあたっては、北越コーポレーションが参画するとのことです。

なおReCell®は、北越コーポレーションが所有する商標ですが、同社がReCell®という名称のセルロース関連商品を出したという情報は見つかっていません。

詳しい内容は、プレスリリースをご覧ください。

スギノマシン、乳化剤として使える表面繊維化セルロース粒子を開発(2022年5月11日)

スギノマシンは、セルロースナノファイバー(CNF)の製造技術を応用して、シングルマイクロサイズの表面繊維化セルロース粒子を新規に開発したことを、5月10日付のニースリリースで発表しました。市販のセルロース粉末などより比表面積が大きく、オイルリッチ・低粘度の乳化剤としての用途が期待されるとのことです。

表面繊維化セルロース粒子は、表面が繊維化された直径7µm程度のセルロース粒子で、水分散体として提供します。表面が繊維化されていることで、その比表面積は70m2/gと、市販のセルロース粉末や結晶セルロースの約20倍にもなり、各種溶媒への分散安定性が向上します。また、複数混合油の一斉乳化や充填結合剤としての利用など、CNFとは異なる用途展開が期待されます。

濃度25wt%の水分散体の外観は白色のペースト状であり、これを乾燥すると粒子表面に繊維状構造が確認できます。また粒子であるため分散液の粘度が低くハンドリング性が良好で、200rpmの簡易なプロペラ撹拌で5~10分間混合することで、均一分散が可能です。

この開発品は、特種乳化剤として使えることがわかっています。安定した乳化物を得るにはHLB方式による界面活性剤(乳化剤)の選定が重要で、油相は多数の油性成分により構成されていることが多いため、各物質の相溶性を見ながら、段階的な乳化が必要となります。ところがこの表面繊維化セルロース粒子では油種に影響を受けないため、HLBに関係なく、複数油種が混合された状態でも、単純な撹拌混合で一斉に乳化できます。また配合量や組成を変えることで、オイルリッチでありながら低粘度の乳化物を作製することができます。

そして
①異なる油を一斉に乳化できるため、大幅な工程削減が可能
②オイルリッチでありながら低粘度の乳化物が得られる
③耐熱、耐塩性の高い乳化物である
という特徴があります。

想定される用途としては、シリコーンエマルジョン、スクラブ代替、化粧品、エマルジョン製剤、エマルジョン燃料、塗料、接着剤、農薬等が考えられます。

詳細は同社のニュースリリースをご覧ください。

仙台の菓子メーカー、どら焼きにセルロースナノファイバーを使用(2022年5月11日)

仙台の菓子メーカーこだまは、コロナ禍で需要が減少した宮城県山元町産イチゴを使ったどら焼き「いちごの絆」を発売しました。増粘剤として日本製紙のセルロースナノファイバー(CNF)セレンピア®を、東北の菓子業界で初めて採用しました。

5月10日に河北新報のウェブ版に掲載された記事によりますと、こだまが発売した「いちごの絆」は、イチゴをピューレにして混ぜたホイップクリームを、生どら焼きの皮にたっぷりと絞った、マリトッツォ風のお菓子です。冷凍したものを自然解凍して食べます。

試作段階では、解凍後にクリームが垂れるのが課題でしたが、クリームにCNFを加えることで、保水性や気泡安定性が生まれ、クリームをしっとり、ふんわりと滑らかに仕上げるとともに、温度が変化しても形状を保つことが可能になりました。

いちごの絆はこだまのオンラインショップ限定で販売し、価格は4個入り2,500円です。

オーストラリアNanollose、ビーガンレザーメーカーに材料を供給(2022年5月6日)

バクテリアナノセルロースから繊維を生産する企業Nanolloseは、ビーガンレザーメーカーのVon Holzhausenと提携し、材料を供給します。

Ecotextile Newsが運営するウェブサイト、ecotextile.comに5月5日に掲載された記事によりますと、アメリカ・カリフォルニア州を拠点とするVon Holzhausenは、植物やリサイクル繊維からビーガンレザーを製造する技術を持っていますが、この原料に植物ではないバクテリアセルロース由来の原料を加えることになりました。
Von HolzhausenのCEOであるVickivon Holzhausenは、Nanolloseのバクテリアナノセルロース技術と提携することで、革を絶滅させるという私たちの目標が加速することを信じている、と述べています。

一方、ナノロースのExecutive ChairmanであるWayne Bestは、「バクテリアナノセルロースはビーガンであるだけでなく、天然由来で生分解性があるため、持続可能なビーガン材料の理想的な成分です。Nanolloseのバクテリアナノセルロースに関する専門知識と、Von Holzhausenのビーガンレザーの開発と商品化における専門知識と実績を組み合わせることは、画期的なことです」と述べています。

これまでビーガンレザーはポリウレタンなどの合成素材で作られていました。しかし環境への懸念の高まりにより、メーカーは果物、サボテン、キノコから植物ベースのプラスチックまで、より持続可能な代替品を求めるようになりました。Nanolloseのバクテリアナノセルロースはこの問題に新たな解決策を提供するものです。