ナノセルロースニュース2022年4月

ナノセルロースから作ったナノペーパーを炭化してナノ半導体を創出(2022年4月28日)

大阪大学産業科学研究所の古賀准教授らの研究グループは、電気を全く通さないナノセルロースから作ったナノペーパーを段階的に炭化することによって、電気特性を広範かつ系統的に制御できる半導体の創出に成功しました。

大阪大学の研究ポータルサイトResOU(リソウ)に4月27日に掲載された記事によりますと、ナノセルロースから作られるナノペーパーは優れたデバイス性能とフレキシブル性・易廃棄性・生分解性を持つことから、環境調和型電子デバイスの材料として期待されていましたが、ナノセルロース自体が電気を通さないため、電子デバイスとして動作させるためには、枯渇性資源である金属や石油由来の電子材料を使う必要がありました。

今回開発したナノペーパー由来の半導体は、ナノペーパーを段階的に炭化することによって、その電気特性を広範かつ系統的に制御できます。電気特性制御範囲は、電気抵抗率が1012~10-2 Ω cm(絶縁体~準導体)、電荷キャリアタイプがn型(電子リッチ) or p型(正孔リッチ)、キャリア移動度:0.235~2.59 cm2 V-1 s-1を網羅しています。さらに、ナノペーパーの構造設計技術(エンボス加工・折り紙・切り紙など)、および形態保持炭化技術を併用することで、その3D構造をナノ~マイクロ~マクロに及ぶトランススケールで制御することもできます。

詳しい内容は大阪大学のホームページの記事をご覧ください。

化学修飾したCNCをエポキシ化天然ゴムの架橋剤として使用する(2022年4月24日)

無水マレイン酸で化学修飾したセルロースナノクリスタル(CNC)をエポキシ化天然ゴムのフィラーとして使い、紫外線を照射することで、化学修飾していないCNCを使った場合と比べて、優れた補強効果を示すという研究成果が発表されました。これはゴムとCBCの界面で架橋反応が起きることが理由です。

天然ゴムにフィラーとしてCNCを添加すると、機械的特性が向上します。一方、無水マレイン酸で化学修飾したCNCをフィラーとして添加すると、硬度、弾性率、引張強度などの機械的特性は、フィラーの量に比例して改善され、しかもCNCの場合により、優れた補強効果を示します。
これは、紫外線によって、無水マレイン酸CNCに含まれる二重結合がエポキシ化天然ゴムと架橋反応を起こすことによります。

この研究で用いられたCNCは、ネピアグラスの茎から得られたもので、平均径5nm、平均長428nmでした。ネピアグラスはイネ科の早生植物で、荒れた土地でも栽培可能なことから、10年以上前に、バイオエタノールの原料やバイオマス発電の燃料として取り上げられたことがあります。リグニンの含有量が少ないため、木材チップからよりも低コストでCNCを生産できると思われます。

詳しい内容は4月23日にウェブ上で公開された、下記の論文をご覧ください。
Somseemee, O., Saeoui, P., Schevenels, F.T. et al. Enhanced interfacial interaction between modified cellulose nanocrystals and epoxidized natural rubber via ultraviolet irradiation. Sci Rep 12, 6682 (2022). https://doi.org/10.1038/s41598-022-10558-5

セルロースナノクリスタルの散布でオリーブの木の病気を防ぐ(2022年4月22日)

オリーブの剪定枝廃棄物から得られたセルロースナノクリスタル(CNC)をオリーブの木に散布することで、オリーブの木に発生するオリーブノット病の原因となる病原菌の増殖を抑制することができるという研究成果が発表されました。

オリーブの木は、オリーブオイルを摂る目的で、スペイン、イタリアなどで広く栽培されていますが、気候変動や病原菌や害虫の蔓延によって悪影響を受けています。その中でも、Pseudomonas savastanoi pv. savastanoiという細菌が原因で起きるオリーブノット病は、植物の木質組織に浸透して植物ホルモンであるオーキシンとサイトカイニンを合成することで、過形成や肥大組織である結節を形成します。

研究では、オリーブの剪定廃棄物から調製したCNCが、この細菌の防除に使えることを明らかにしました。CNCを1%w/vで使用した場合に、細菌の増殖と細菌のバイオフィルム形成を阻害する効果があります。また葉の表面における細菌の生存を減らすがあり、それは従来農薬として使用されてきた硫酸銅に匹敵することもわかりました。
さらにCNCは、オリーブの木の葉の発達や木の実生に悪影響を及ぼさず、有望な根の取り込みを示し、CNCが有効成分のナノキャリアとしても使用できることも示しています。

オリーブの木の剪定枝の廃棄物をリサイクルするとともに、従来の農薬の使用量を減らすことで、持続可能で地球環境にやさしい農業を構築することができます。

詳しい内容は、4月12日にウェブ上で公開された下記の論文をご覧ください。
Schiavi, D., Francesconi, S., Taddei, A.R. et al. Exploring cellulose nanocrystals obtained from olive tree wastes as sustainable crop protection tool against bacterial diseases. Sci Rep 12, 6149 (2022). https://doi.org/10.1038/s41598-022-10225-9

富士市CNFブランドに不織布、板紙、どらやきが認定(2022年4月15日)

静岡県富士市は、セルロースナノファイバー(CNF)を使った製品を「富士市CNFブランド」として認定していますが、4月14日に新たに3品目が認定されたことが、日本経済新聞などの報道で明らかになりました。

このほど認定されたのは、次の3品目です。2021年9月に認定された5品目とあわせて、8品目となりました。

不織布 フィブリメルト /天間特殊製紙

自社製CNFと化学合成繊維を合わせて熱成型によって製造する。従来の湿式抄紙機で大量生産することができるので、低コスト化が可能。今後、自動車用内装材などへの展開を目指す。

板紙 KAMIDE+CNF /大昭和加工紙業

CNFを配合した板紙で、堅牢性と安全性を両立した。プラスチックや木の代替素材として使うことが可能。

どらやき /田子の月

日本製紙のカルボキシメチル化CNF「セレンピア」を生地に添加することで、食感が改善されるとともに、賞味期限を延ばした

なお現時点で、富士市から公式のリリースは出ていません。

豊田合成、車の内外装部品向けのCNF強化プラスチックを開発(2022年4月13日)

トヨタグループで自動車の内装部品などを手掛ける豊田合成は、セルロースナノファイバー(CNF)を配合した強化プラスチックを環境省ナノセルロースプロモーション事業の一環で開発したことを、同日、ウェブサイトで発表しました。

同社が開発したCNF強化プラスチックは、車の内装や外装に使われる汎用樹脂(ポリプロピレン)にCNFを20%配合させたものです。実用化に向けては、CNF配合時の耐衝撃性の低下が課題でしたが、材料の配合設計や混練技術などを用いて、自動車部品に活用できる水準に高めており、今回、グラブボックスとフロントピラーガーニッシュを試作しています。

同社では、ポリプロピレンにCNFを配合する際、ポリプロピレン、CNFとゴムを最適な割合で配合することによって、ポリプロピレンにCNFを均一に配合させています。また混錬にはスクリューフィーダーを使用し、混錬時の温度、圧力、スクリューの回転速度を最適化しました。その結果、強化プラスチックの耐衝撃性や流動性(成型性)が改善させたとのことです。

詳しい内容は同社のニュースをご覧ください。

中国が注目するナノセルロースのアプリケーション研究(2022年4月9日)

中国の材料分野で研究から実用化までをカバーするウェブサイト 材料牛(Material Niu)に、ナノセルロースのアプリケーション研究に関する記事が掲載されました。中国がどのようなアプリケーションに注目しているのか、傾向を知ることができます。

材料牛に「材料分野におけるスターとして、ナノセルロースはどのようなアプリケーションが実用化されるべきか」(当サイト訳)という記事が、本日掲載されました。その中で最近公開されたナノセルロースのアプリケーションに関する10の研究論文が紹介されています。

いずれも高付加価値のものがターゲットで、分野別ではエネルギー3、マテリアル3、エレクトロニクス2、メディカル2です。国別では中国4のほかは、米国、カナダ、スイス、フランス、フィンランド、韓国で、日本はありません。

各論文の概要を以下に紹介しますが、中国語を当サイトで翻訳しているため、正確性は保証できません。元のサイトに論文リストが掲載されていますので、詳しくは原著論文をお読みください。

1) 伸縮性のある導電性セルフパワー汗センサーを作成するためのナノセルロース自己修復ハイドロゲル(広西大学・中国)

セルロースベースの導電性ハイドロゲルから、完全に柔軟なセルフパワーの汗センサーを開発しました。汗センサーは、電解質や代謝物などの可溶性バイオマーカーを検出することにより、嚢胞性線維症などの疾患をリアルタイムで監視するために使用できます。

2) 単一イオン官能化ナノセルロース膜を水性亜鉛電池のセパレーターとして利用(中国科学院青島生物エネルギープロセス研究所)

充電式水性亜鉛電池は安全性、低コスト、原材料の豊富さ、エネルギー密度の点で優れていますが、セパレーターなどの問題により実用化されていません。セパレーターとして単一イオンのZn導電性ナノセルロース膜を使用することで、性能を改善できることを示しました。

3)安定性、疎水性に優れ、急速なUV誘起insitu重合によって得られた多機能ナノセルロースハイブリッドエアロゲル(東華大学・中国)

ナノセルロースベースのエアロゲルは、低密度、高多孔性、低熱伝導率、持続可能性などの特性にがあるため、断熱、液体吸収、油水分離への適用が有望視されています。この研究では、UV誘導チオール-エンクリック反応を介して異方性ナノセルロース/キトサンエアロゲルマトリックス上で、30秒以内にポリジメチルシロキサンをin situ重合する方法を開発しました。

4) フレキシブル電子デバイスの位置選択的機能化のためのナノセルロースベースの薄膜の分子設計と構造最適化(トロント大学・カナダ)

ナノセルロースの導電性には、チオフェンと長い脂肪酸側鎖が関係しています。長い脂肪酸側鎖が存在することで、ナノ構造基板上の大きなチオフェン分子によって引き起こされるナノセルロース骨格のねじれたコンフォメーションのバランスを取り、それによってナノ材料の導電性が高くなります。ナノセルロース構造の分子設計により、材料の導電性を制御することができます。

5) 伸縮性バッテリーの製造のため、ナノセルロースによって実現された3Dプリントされた変形可能な電極とセパレーター(メリーランド大学・米国)

ウェアラブルデバイスの出現により、伸縮性バッテリーの需要が急増していますが、バッテリーのコンポーネントは本質的にもろく、機械的負荷がかかると簡単に破損する可能性があります。研究では、ナノフィブリル化セルロースと混合した物質を3D印刷することで、リチウムイオン電池用の伸縮性電極とセパレーターを製造するための技術を開発しました。

6) 創傷治癒を導くためのアルギネート-シルクフィブロイン/ナノセルロース複合材料の磁場支援配向パターン(江原大学校・韓国)

低強度磁場下でのアルギン酸塩-絹フィブロインマトリックス中のセルロースナノクリスタル(CNC)の磁気応答性を利用して、磁気配向の異方性を作成することです。磁気配向処理された創傷被覆用の足場は異方性が高く、磁気配向していない場合と比べてヤング率が大幅に向上していることが示され、機械的安定性が実証されました。磁気配向した足場上で培養された皮膚線維芽細胞、ケラチノサイトおよび内皮細胞は、インビトロでの増殖の増強およびインビボ条件下での急速な創傷閉鎖を示したことから、CNCの磁気特性を創傷治癒に利用することができることが示されました。

7) Naイオン電池の安定化のためのNa電着用の階層型ナノセルロースゲルポリマー電解質(チューリッヒ工科大学・スイス)

ナトリウムイオン電池は、脱炭素社会に効果的で持続可能なソリューションを提供しますが、リチウムイオン電池と比べ、エネルギー密度と寿命の点で、さらなる進歩が必要です。生分解性セルロースナノ粒子を使用して、高い液体電解質吸収率、イオン伝導率、高いナトリウムイオン移動数を備えたゲルポリマー電解質を調製しました。機械的に剛性のあるセルロースナノクリスタル(CNC)と柔軟なセルロースナノファイバー(CNF)のバランスの取れた比率により、金属ナトリウムとの密接な接触を保証するメソポーラス階層構造が得られます。この構造は安定したNaの堆積/溶解を提供し、従来の液体電池よりも優れています。

8) 感染した創傷の治療のためのポリリジン結合TEMPO酸化バクテリアナノセルロース抗菌包帯(東華大学・中国)

バクテリアナノセルロース(BNC)をTEMPO酸化して、曲線を許容できるプルストレッチを維持しながら、カルボン酸含有量を高くしました。TEMPO酸化BNCベースの機能性創傷被覆材を開発するには、超音波で均一に分布させた後、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩/ n-ヒドロキシコハク酸イミド反応がε-ポリリジンがTEMPO酸化BNCへ共有結合します。得られた創傷被覆材の抗菌活性は大幅に改善され、毒性は観察されませんでした。ドレッシングで覆われたラットの感染した全層創傷は、炎症が少なく、血管増殖が速く、表皮層が形成されているため、治癒が早くなりました。

9) 効率的な電磁干渉シールド用の多機能ナノセルロース/カーボンナノチューブ複合エアロゲル(グルノーブルアルプス大学・フランス)

カーボンナノチューブと導電性ナノセルロースを組合せた、強力で超軽量のエアロゲルは、電磁干渉シールドバイオマテリアルとして機能し、デバイスから放出または受信されるマイクロ波の分散を低減できます。研究ではTEMPO酸化セルロースナノフィブリル、カチオン性セルロースナノ結晶、およびアルギン酸ナトリウムをさまざまな濃度のカーボンナノチューブと組み合わせることにより、放射線を偏向させる信頼性の高いエアロゲルシステムを開発しました。

10) ナノセルロースと疎水性粒子で作られた超安定ウェットフォームと軽量固体複合材料(アールト大学・フィンランド)

セルロースナノファイバー(CNF)は、他のコロイドと相乗作用して、非常に堅牢なコンポーネントを合成することが示されています。これは低アスペクト比の粒子と高アスペクト比のCNFを組み合わせたネットワークから生じるさまざまなトポロジーと強化メカニズムの結果です。親水性CNFと低アスペクト比の疎水性粒子間の高アスペクト比と強い相互作用により、超安定ピッカリングフォームが提供されます。フォームは、多孔質固体材料の足場前駆体として使用されます。CNFの導入により、疎水性粒子のみで安定化されたフォームと比較して、発泡性とフォームの寿命が大幅に向上しました。これらの効果は、CNFによって形成された線維状ネットワークに起因します。

Fashion for Good 2022年アジアイノベーションプログラムへの参加者(2022年4月5日)

ファッション分野のイノベーションを発信するウェブサイトFashion for Goodは、今年のアジアイノベーションプログラムへの参加者7団体を発表しました。そのうち、アメリカのGaiacelは、ナノセルロースを使った染色技術を開発しています。

アメリカのGaiacelは、工業用ロープおよびスラッシャー染色プロセスを持続可能で費用効果の高いものにするための新しい染色技術を開発しています。同社が特許を取得しているナノセルロースハイドロゲルは、染料粒子とともに繊維表面に付着し、複数回の浸漬、藍の還元、および追加の化学薬品が不要になります。このプロセスは、従来の藍染めに比べて水とエネルギーの消費が少ないのが特徴です。

研究はジョージア大学が行っており、2021年にGreen Chemistry誌に論文として発表されています。詳しい内容は、Fashion for Goodの記事、ならびにGreen Chemistry誌の論文概要をご覧ください。