ナノセルロース、セルロースナノファイバー(CNF)、セルロースナノクリスタル(CNC)、バクテリアナノセルロース(BNC)に関する、国内・海外の最新ニュースを掲載しています。こちらは 2025 年 1 月~4 月に報道されたニュースを、日付が新しいものから順に掲載しています。新しい情報は、適宜追加しています。
- 1 福井大学、CNF を使ったそばを開発(2025 年 4 月 29 日)
- 2 米 Helogen、BNC の研究で NZ の国立研究所との提携を発表(2025 年 4 月 25 日)
- 3 日本製紙、CNF を使用した蓄電帯を開発(2025 年 4 月 23 日)
- 4 九大、CNF の構造制御によりヒト歯髄幹細胞の培養に成功(2025 年 4 月 18 日)
- 5 海洋機構・東大・理科大が CNF で透明な紙コップを作製(2025 年 4 月 18 日)
- 6 音茶楽、CNF を使用した高性能イヤホンを発売(2025 年 4 月 18 日)
- 7 Modern Synthesis は BNC から繊維を作る(2025 年 4 月 6 日)
- 8 中越パルプの竹由来 CNF が化粧品に採用(2025 年 4 月 4 日)
- 9 CNF 入りのソルダーペースト、神奈川工業技術開発大賞の奨励賞受賞(2025 年 3 月 31 日)
- 10 富士市の中学校で CNF の雑草抑制効果の検証始まる(2025 年 3 月 27 日)
- 11 赤タマネギの皮の抽出物で染色したCNFフィルムを太陽電池の材料に(2025 年 3 月 21 日)
- 12 京都の老舗洋菓子店、焼菓子にCNFを配合(2025 年 3 月 17 日)
- 13 韓国MOORIM、ナノセルロースを使った自動車内装材などを開発(2025 年 3 月 12 日)
- 14 丸住製紙、590 億円の負債を抱え事実上倒産(2025 年 3 月 1 日)
- 15 米国 CD Bioparticles がバイオメディカル用途向けのナノセルロース製品を発表(2025 年 2 月 22 日)
- 16 米国 Gozen が BNC から作った繊維・皮革素材を正式に発売(2025 年 2 月 20 日)
- 17 BNC 由来材料を開発する Modern Synthesis、550万ドルの資金を調達(2025 年 2 月 6 日)
- 18 ソウル科学技術大学、BNC を使った組織修復用のバイオインクを開発(2025 年 2 月 4 日)
- 19 豪・クイーンズランド大学、ナノセルロースでグリホサートの使用量削減(2025 年 1 月 31 日)
- 20 米国・メイン大学が CNF を消火剤として使うことを検討(2025 年 1 月 24 日)
- 21 米国・ライス大学、ナノセルロースを使った 3D プリント木材を開発(2025 年 1 月 23 日)
- 22 国際共同研究で太陽光発電に使えるナノセルロースフィルムを開発(2025 年 1 月 15 日)
- 23 パナソニック、海洋生分解性のセルロースファイバー成形材料を開発(2025 年 1 月 9 日)
- 24 愛媛大学、CNFを使ったインキ消去機能紙を開発(2025 年 1 月 8 日)
- 25 韓国 Anpoly、浦項にナノセルロース新素材工場を着工(2025 年 1 月 6 日)
福井大学、CNF を使ったそばを開発(2025 年 4 月 29 日)
セルロースナノファイバー(CNF)をつなぎに使ったそば(乾麺)を、福井大学などが開発したことを、NHK 福井放送局が 4 月 28 日にウェブサイトで公表しました。
それによると、福井大学と地元の製麺会社などが開発したそばは、吸水性の高い CNF をそばのつなぎに使うことで、そば粉の割合をこれまでより1割多い7割にまで高め、香り豊かな乾麺になっているとのことです。27 日には福井市で試食会が行われました。
詳細は NHK の記事をご覧ください
ナノセルロース・ドットコム コメント
そばの乾麺は一般的に、小麦粉とそば粉を原材料にしたもの、小麦粉とそば粉に小麦たんぱくを加えたもの、そば粉のみを原料としたもの、に分けられます。
そばのつなぎには、昔から小麦粉または小麦たんぱく(いずれも食品)が使われており、多くの乾麺はそれで十分な味と品質を確保しています。一方 CNF は食品添加物です。小麦粉や小麦たんぱくで事足りているにもかかわらず、食品添加物である CNF をわざわざ使う意味が分かりません。
つぎにそば粉の割合を 7 割にしたとのことですが、食品スーパーでは、そば粉の割合が 8 割の二八そばや、そば粉の割合が 10 割の十割そばの乾麺がふつうに売られています。そば粉の割合が 7 割になったことには、何のニュース性があるのでしょうか。
さらにつなぎに吸水性が関係しているような書き方がされていますが、これも意味不明です。
ついでに CNF について「環境への負担も少ない」と書かれていましたが、これはウソです。
十分な基礎知識がないまま、意味のない情報を垂れ流す公共放送の存在意義が問われます。
米 Helogen、BNC の研究で NZ の国立研究所との提携を発表(2025 年 4 月 25 日)
ニューヨークの Helogen, Inc. は、宇宙におけるバクテリアナノセルロース(BNC)の開発のため、ニュージーランドの国立研究所である Ag Research と提携することを発表しました。
Ag Research は、ニュージーランド国内の4つの拠点に650名以上のスタッフを擁するニュージーランド最大級の科学研究所の一つで、ニュージーランドの牧畜、農業食品、農業技術セクターの価値、生産性、収益性の向上に寄与しています。
米国大手メディア CBS4 の Globe Newswire に 4 月 24 日に掲載された記事によりますと、BNC は、高度な創傷被覆材からフレキシブルセンサーまで、幅広い用途を持つ画期的な材料であり、この提携により、ニュージーランドの科学者たちは Helogen の自律型軌道上実験室を活用し、地球上では再現不可能な条件下で BNC を製造することができます。また Helogen は、この提携によって製造される材料の商業権を保有します。
BNC は 2億5,000 万米ドルの市場規模があり、ヘルスケア、エレクトロニクス、先端材料といった分野で利用されています。宇宙空間で BNC を製造することで、BNC の特性を強化し、新たな市場セグメントを開拓できる可能性があります。
Helogen は自律型軌道上実験室は完全に自律的であり、国際宇宙ステーションのような従来の宇宙研究では通常 18~36 か月かかる研究を、最短 3 か月で完了することができます。
詳細は CBS4 の記事をご覧ください。
なお、記事では Helogen, Inc. については触れられていませんが、同社は宇宙空間における医薬品や材料の開発をサポートする企業で、記事にある自律型軌道上実験室を所有しています。
日本製紙、CNF を使用した蓄電帯を開発(2025 年 4 月 23 日)
日本製紙が、セルロースナノファイバー(CNF)を使用した蓄電帯を開発したことを、4 月 22 日付の日本経済新聞電子版が報じました。
これは CNF 膜表面の凹凸に蓄電・放電できる性質を利用したもので、シート状にした CNF を電極で挟み蓄電するとのことです。
試作品としてコイン型や大容量のラミネート型の蓄電帯を開発しており、すでにIoTセンサーを瞬間的に動作できるレベルにあります。今後さらに CNF を薄膜化し性能を向上計画で、ウエアラブル端末や小型のIoTセンサーなどへの適用を目指しています。
詳細は日本経済新聞電子版の記事をご覧ください。
なお本内容は日本製紙の研究所説明会で公表されたようで、同社のニュースリリースには掲載されていません。
九大、CNF の構造制御によりヒト歯髄幹細胞の培養に成功(2025 年 4 月 18 日)
九州大学大学院農学研究院の北岡卓也教授、九州歯科大学の折本愛助教、岩手大学の福田智一教授らの共同研究グループは、樹木由来のセルロースナノファイバー(CNF)の表面リン酸化により、ヒトの細胞外マトリックスの形状と特性を模倣した細胞培養基材の開発に成功しました。
九州大学が同日にウェブサイトで発表した内容によりますと、歯髄幹細胞を用いる歯の再生医療が注目されていますが、象牙質の再生足場は動物由来成分や自家歯材に依存しており、歯髄幹細胞を培養するのは容易ではありません。
研究グループでは、動物細胞と接着する能力がない樹木由来の CNF の表面にリン酸基を導入することで、ヒト歯髄幹細胞の培養に成功しました。リン酸基は、結晶構造を保ったまま、バイオミネラリゼーションの足場として作用します。さらに、外来の分化誘導因子を加えることなく、ヒト歯髄幹細胞から硬組織への分化も達成しました。
今回の発見は、ヒト歯髄幹細胞を用いる歯科治療の可能性を広げるとともに、幹細胞培養基材の新規モダリティとして、天然多糖ナノファイバーからのバイオマテリアル開発に役立つと期待されます。
詳しくは九州大学のウェブサイトをご覧ください。
海洋機構・東大・理科大が CNF で透明な紙コップを作製(2025 年 4 月 18 日)
セルロースファイバー(CNF)が密に詰まった構造の紙は、光が散乱せずに透明になります。これを利用することで、海洋研究開発機構・磯部紀之副主任研究員、東京大学大学院農学生命科学研究科・岩田忠久教授、東京理科大学工学部工業化学科の上谷幸治郎准教授らの研究グループは、板紙を透明にすることに成功しました。
この板紙から、透明な紙コップを作製したことを、本日付の科学新聞のウェブ版が伝えています。
詳細は科学新聞のサイトをご覧ください。
音茶楽、CNF を使用した高性能イヤホンを発売(2025 年 4 月 18 日)
オーディオ機器メーカーの音楽茶は、CNF(セルロースナノファイバー)を採用したタンジェンシャルレス振動板を搭載した高性能イヤホン Flat4-楓零(KAEDE ZERO)を発売します。
AV・オーディオの専門サイト PHILE WEB に本日掲載された記事によりますと、2019 年に発売されたオークヴィレッジとのコラボイヤホン「Flat4-楓III」をベースに、付帯音 ZERO を目指して開発されたのが、Flat4-楓零です。
音茶楽は、独自の音響技術と木工房・オークヴィレッジの匠の技を融合させたイヤホンで、132,000円(税込)で、フジヤエービックにて数量限定で発売されるとのことです。
詳細はPHILE WEBの記事をご覧ください。
Modern Synthesis は BNC から繊維を作る(2025 年 4 月 6 日)
環境系のニュースサイト THE COOL DOWN に、バクテリアナノセルロース(BNC)から繊維を作るバイオテクノロジー企業、Modern Synthesis の紹介記事が掲載されています。
世界では毎年 9,200 万トン以上の繊維廃棄物が埋立地に廃棄されていますが、合成ナイロンなどの繊維は分解するのに 200 年ほどかかることもあります。Modern Synthesis は、こうした繊維をなくすことを目指しています。
Modern Synthesis はスニーカーを「育てる」ことでよく知られていますが、靴以外に、衣類などの繊維製品に使用される素材を作成することができます。同社は「微生物織り」と呼ばれるプロセスでバクテリアを利用してナノセルロース繊維を育てます。
Modern Synthesis の共同設立者兼 CEO の Jen Keane は、微生物による織り方に関しては選択肢はほぼ無限にあると考えています。またナノセルロース繊維の製造方法により、この素材は鋼鉄の 8 倍の強度を持つことができるそうです。
詳細はTHE COOL DOWNの記事をご覧ください。
中越パルプの竹由来 CNF が化粧品に採用(2025 年 4 月 4 日)
中越パルプ工業は、同社が製造・販売する竹由来セルロースナノファイバー(CNF) nanoforest® が、日焼け止めに採用されたことをプレスリリースで 4 月 3 日に発表しました。
化粧品・健康食品の通販・卸売事業を行っている株式会社 JIMOS(福岡県福岡市)は、ノンケミカル UV ミルク 50+ という化粧品(日焼け止め)を 2 月 19 日に発売しました。これは竹由来 CNF と紫外線散乱剤を組み合わせた 14 個のフリー処方で、肌に優しい設計となっており、0歳児から敏感肌の方まで使用可能です。
竹由来 CNF を配合することで、① なめらかな使い心地 、② 高い紫外線カット効果 、③ 耐水性、④ 肌へのやさしさ、⑤ 長時間保湿 を実現したとのことです。
詳細は同社のプレスリリースをご覧ください。
CNF 入りのソルダーペースト、神奈川工業技術開発大賞の奨励賞受賞(2025 年 3 月 31 日)
2025 年 1 月に、第 39 回神奈川工業技術開発大賞(神奈川県、神奈川新聞社共催)の受賞製品が発表されましたが、神奈川新聞のウェブ版(カナコロ)が 3 月 30 日に奨励賞を受賞したセルロースナノファイバー入りソルダペーストの紹介記事を掲載しています。
この製品を開発したのは、1953 年創業の松尾ハンダ株式会社(大和市)で、棒・糸状のはんだやソルダペースト(粉末状のはんだ合金とのり状樹脂の混合物)を製造しています。ソルダペーストに竹が原料のセルロースナノファイバー(CNF)を添加した新製品を大学と共同で開発しました。
エレクトロニクス分野の基板実装では、ソルダペーストを用いて基板と部品の接合を行うことが一般的です。従来のソルダペーストでは、接合部にボイドが生じて、長期間の使用時に接合部が脆くなるといった傾向があり、不良品の発生や製品寿命が短くなるなどの課題がありました。本製品により、基板実装における不良品の低減、製品寿命の延長を可能とし、生産効率が向上したとのことです。
神奈川新聞の記事は一部しか公開されていないので、詳細は神奈川県のウェブサイトをご覧ください。
富士市の中学校で CNF の雑草抑制効果の検証始まる(2025 年 3 月 27 日)
静岡県富士市立吉原第一中学校で、セルロースナノファイバー(CNF)を使った雑草抑制効果の検証が始まりました。各メディアが 3 月 26 日に伝えたところによりますと、中学校の敷地の一角で地面の草を刈って木のチップを撒いたあと、CNF を含んだ細かな繊維などを散布して、9 月から10 月ごろにどれだけ雑草を抑えることができたか、雑草抑制の効果を調べるとのことです。
記事の中に日本製紙の担当者のコメントがありましたが、本件は日本製紙のニュースリリースには掲載されていないようです。
詳細は NHKの静岡 NEWS WEBの記事をご覧ください。
赤タマネギの皮の抽出物で染色したCNFフィルムを太陽電池の材料に(2025 年 3 月 21 日)
フィンランドのトゥルク大学、アールト大学、オランダのワーゲニンゲン大学は、赤タマネギの皮の抽出物で染色した CNF(セルロースナノファイバー)フィルムに紫外線防御効果があることを見つけました。
科学技術系情報サイト TechXplore に 3 月 19 日に掲載された記事によりますと、このナCNFフィルムは、400 nm までの紫外線を 99.9 % カットします。
太陽電池は紫外線による劣化を受けやすいため、ポリフッ化ビニル (PVF)やポリエチレンテレフタレート (PET)などの石油系フィルムで保護されていますが、これをバイオベース材料で代替しようとする動きがあります。
研究グループでは、CNF から作られた 4 種類の保護フィルムの耐久性と特性を比較しました。CNF フィルムは、赤タマネギ抽出物、リグニン、鉄イオンで処理されており、これらは過去の研究で優れた UV 遮断能力があることが判明しています。赤タマネギ抽出物で処理されたフィルムは、UV 放射を遮断するのに最も効果的であることが判明したとのことです。
この研究成果は、論文誌 ACS Applied Optical Materials で発表されました。
詳細は TechXplore の記事をご覧ください。
京都の老舗洋菓子店、焼菓子にCNFを配合(2025 年 3 月 17 日)
京都の老舗洋菓子店バイカルが発売中の宇治抹茶を使用した焼菓子「京ほのか」に、日本製紙のセルロースナノファイバー(CNF)セレンピアが配合されていることが、3 月 17 日付の京都新聞電子版の読者プレゼントの記事でわかりました。
「京ほのか」は、ゆずを練り込んだ抹茶餡を、宇治抹茶を使った外皮で包んだ乳菓で、2024 年 8 月に発売されたものです。
詳しくは京都新聞の読者プレゼント記事をご覧ください。
韓国MOORIM、ナノセルロースを使った自動車内装材などを開発(2025 年 3 月 12 日)
韓国の毎日経済新聞は 3 月 3 日に、ソウルのデパートで開催中の紙に関する展示会について報じましたが、その中で、韓国唯一のパルプ製造会社である MOORIM PAPER がナノセルロースに注目し、研究開発を行っていてることを伝えています。
MOORIM はナノセルロースを使って、耐熱性と断熱性を高めた自動車内装材やポリウレタンフォームを開発しているとのことです。さらに同社はナノセルロースが美容製品、医療製品、スポーツ用品、塗料などにも活用できると考え、関連研究を進めているそうです。
詳しくは毎日経済新聞の記事をご覧ください。
丸住製紙、590 億円の負債を抱え事実上倒産(2025 年 3 月 1 日)
独自技術によるスルホン化セルロースナノファイバー(CNF)ステラファイン® STELLAFINE® を製造・販売していた丸住製紙株式会社(愛媛県四国中央市)が、民事再生法の適用を東京地裁に申請したことが 2 月 28 日に明らかになったと、報道各社が伝えました。民事再生法の適用申請は、事実上の倒産にあたります。負債総額は 590 億円と見られるとのことです。
丸住製紙は 1919 年創業で、四国中央市に主力工場を持ち、新聞用紙など出版、印刷、加工用のさまざまな紙の製造を手掛けていましたが、紙の需要の低迷に伴い、CNF をはじめとする新規分野への展開を図っていました。
米国 CD Bioparticles がバイオメディカル用途向けのナノセルロース製品を発表(2025 年 2 月 22 日)
製薬およびライフサイエンス分野での長年の経験を持つ CD Bioparticles(米国・ニューヨーク州)が、バクテリアナノセルロース(BNC)、セルロースナノクリスタル(CNC)、セルロースナノフィブリル(CNF)を含む新しいナノセルロース製品ラインの発売を発表しました。
米国のニュースメディア EIN Presswire に2月21日に掲載された記事によりますと、これらの製品は、並外れた機械的特性、生分解性、および多様な表面機能を示し、抗菌剤、防汚、創傷治癒、薬物送達、組織工学、および骨再生に使用されるバイオナノ複合材料の製造に適しているとのことです。
Cellulose nanoparticles は、その優れた機械的特性とナノスケールのサイズにより、非常に高い表面積対体積比をもたらすため、近年大きな注目を集めています。これに含まれるヒドロキシル基とその水素結合能力は、高凝集性材料の重要な物理的特性を制御します。またヒドロキシル基は表面機能化に適しており、ホスト材料の機械的特性を改善するのに最適です。さらに、低コスト、低密度、再生可能性、生分解性、さまざまな充填剤が利用可能、エネルギー消費量が少ない、高性能、処理中の摩耗性が低いなど、他のいくつかの利点もあります。
これらの特性により、Cellulose nanoparticlesは抗菌剤、防汚、創傷治癒、薬物送達、組織工学、骨再生のためのバイオナノ複合材料の製造など、幅広い用途に適しています。
Cellulose nanoparticles の水性懸濁液は、機械的処理によってCNFに変換したり、酸加水分解によって CNC に変換できます。 CD Bioparticles は、さまざまな業界向けの持続可能で高性能なソリューションを提供し、BNC、CNC、CNFなど、それぞれ特定のアプリケーション要件に合わせてカスタマイズされた幅広い cellulose nanoparticles を提供しています。これらのナノ粒子は、高い強度と弾性率、低い熱膨張、透明性など、優れた特性を備えています。表面機能により簡単に変更できるため、アプリケーションの可能性がさらに広がります。
詳細は EIN Presswireの記事、並びにCD Bioparticlesのホームページをご覧ください。
米国 Gozen が BNC から作った繊維・皮革素材を正式に発売(2025 年 2 月 20 日)
サンフランシスコに本拠を置く GOZEN Studio が、微生物によって培養され発酵されたナノセルロースの繊維であるLUNAFORM™ を正式に発売したことを、建築・美術・デザインの情報サイトである designboom が 2 月 19 日に記事として掲載しました。
Ms. Ece Gözen によって創設された Gozen は、バクテリアナノセルロース(BNC)を原料とした繊維・皮革の開発を手がけています。
原料の BNC はトルコのサプライヤーから調達しており、イスタンブールにある BNC の培養施設では、独自の BioCraft 技術を使用した発酵プロセスを経て、7 日間でナノセルロース繊維 Lunaform を製造しています。施設の広さは 4 万平方フィートで、現在、年間 15 万平方フィートの材料を生産していますが、フル稼働時には年間 100 万平方フィートまで拡大が可能です。
Lunaform には次の3種類があります。
- ORIGINS:製造中に微生物の活動によって残された繊維状のパターンの跡が残っています。
- TRANSPARENT:ナノセルロースを使用して製造された半透明の素材です。
- INDIGO:テキスタイル、レザー、デニムの質感と外観を彷彿とさせる芸術的な仕上げの素材です。
詳細は designboom の記事、並びに Gozen のホームページをご覧ください。
BNC 由来材料を開発する Modern Synthesis、550万ドルの資金を調達(2025 年 2 月 6 日)
高級ファッションブランド向けの生体材料を開発するスタートアップ企業 Modern Synthesisは、Extantia Capital が主導する550 万ドルの資金調達ラウンドを完了したことを、Ag Funder News が 2 月 5 日に報じました。
Adidas の元デザイナーの Jen Keane(CEO)と合成生物学者の Dr. Ben Reeve(CTO)によって設立された Modern Synthesis (英国・ロンドン)は、糖を食べるバクテリアが生成したナノセルロースと麻、リネン、リヨセルなどの天然繊維を組み合わせて、しなやかな革のような繊維から透明フィルムまで、さまざまなバイオマテリアルを生み出しています。
当初、ナノセルロースを生成するバクテリアを繊維と一緒に培養しましたが、その後、プロセスを 3 つのステップに分割して、より拡張性の高いものにしました。
最初のステップでは、ナノセルロースを発酵容器で栽培します。2 番目のステップでは、ナノセルロースのナノ構造を強化して柔軟性と強度を変えます。3 番目のステップでは、ナノセルロースをリネンや麻などの繊維と組み合わせます。
これにより、同社はドレープ性のある素材から、より透明度の高いフィルム、さらに重厚で革のような丈夫な繊維まで、幅広い種類の繊維を製造できるようになりました。
Artesian と Collaborative Fund の支援を受けた Seed 2 ラウンドによって、Modern Synthesis がパイロット施設での生産を拡大し、より多くのブランドに材料を提供できる見通しです。Modern Synthesis は、同社のバイオマテリアルを使用した GANNI の代表的な Bou Bag の商業的発売に向けて、デンマークのファッションブランド GANNI と協力しています。
詳細は Ag Funder News の記事をご覧ください。
下の写真は Ag Funder News の記事から借用したBou Bagの写真です。
ソウル科学技術大学、BNC を使った組織修復用のバイオインクを開発(2025 年 2 月 4 日)
Seoul National University of Science(ソウル科学技術大学)の研究グループが、コンブチャ SCOBY ナノセルロース(バクテリアナノセルロース、BNC)を使用した個別組織修復用バイオインクを開発したことを、アメリカ科学振興協会が運営する Eurek Alert が、ニュースリリースとして 2 月 3 日に発表しました。このバイオインクはデジタルバイオペンで損傷した組織に直接正確に塗布することができ、傷の治癒に便利なソリューションを提供します。
コンブチャ SCOBY は、緑茶の発酵に使用される細菌と酵母の共生培養物です。微生物は、生分解性があり細胞と適合するセルロースを生成します。ただコンブチャ SCOBY から得られるナノセルロースは絡み合った構造をしており、3D バイオプリンティング用いるためには、レオロジー特性 (流れ方) と機械的特性を調整して押し出しを改善し、印刷後の構造的完全性を維持するための改良が必要です。
研究グループではナノセルロースを酢酸で部分的に加水分解し、グルコース結合を切断してネットワークを解きほぐし、バイオプリンティングができるようにするとともに、キトサン(正に帯電)とカオリン(負に帯電)のナノ粒子でナノセルロースを強化しました。これらのキトサンとカオリンの粒子は、静電気力によってセルロースと相互作用し、3Dバイオプリントに適した安定したハイドロゲルを形成します。
この材料は同じ研究グループが開発した手持ち式の「バイオワークバイオペン」に装填可能で、このバイオペンにより、不規則な軟骨や大きな皮膚の傷など、損傷した欠損部分にバイオインクを正確に塗布できます。その結果、より個別化された効果的な生体内組織修復への道が開かれ、体外組織工学プロセスの必要性がなくなります。
詳しい内容は Eurek Alert のニュースリリースをご覧ください。
豪・クイーンズランド大学、ナノセルロースでグリホサートの使用量削減(2025 年 1 月 31 日)
オーストラリアのクイーンズランド大学では、世界中で広く使われている除草剤グリホサートに生分解性のあるナノセルロースを注入することで、グリホサートの性能を高め、散布量を削減するための研究を行っています。
クイーズランド大学のウェブサイトに 1 月 30 日に掲載された記事によりますと、この研究を行っているのは、同大学のAustralian Institute for Bioengineering and Nanotechnologyの Li 博士と Shangxu Jiang 氏で、サトウキビ廃棄物由来のナノセルロース粒子とセルロースナノファイバーを加えたグリホサート製剤を作り、これを植物に散布したところ、植物の葉の表面において、化学物質の再水和と持続的な放出が強化されたということです。
このことは、ナノセルロースの添加によって、除草剤の生物学的利用能と効力が大幅に改善されたことになり、散布量を大幅に削減できるということです。
詳しくは、クイーンズランド大学のウェブサイトに掲載された記事をご覧ください。
米国・メイン大学が CNF を消火剤として使うことを検討(2025 年 1 月 24 日)
アメリカ・メイン州の有力紙、ポートランド・プレス・ヘラルドの電子版に、メイン大学がゲル状の CNF (セルロースナノフィブリル)を、山火事などの消火剤として使うための実証研究を進めていることをが 1 月 17 日に掲載されました。
この研究は、2019 年にカリフォルニア州で猛威を振るった山火事を契機に開始されたもので、風ですぐに吹き飛ばされる水とは異なり、粘性のある CNF が効果的な消火剤になるのではないかと考えたとのことです。
CNF は炎を素早く消し、表面に長時間くっつき、水よりも再燃防止効果が高く、完全に天然素材です。またメイン州は、この素材の世界最大の公的供給元でもあります。
一方、現在消火剤として使われているフッ素化合物の PFAS は、1960 年代に発明されて以来、広く使用されていますが、米国では永久的な化学物質汚染の最も一般的な原因となっているほか、発がん性も指摘されています。
CNF を消火剤として使用するためには認証試験が必要で、5~10 万ドルの費用がかかります。またこれとは別に、山火事で使うための承認を得るためには、山火事を模倣した実験を行う必要があるため、15 万ドルの費用と 18 か月かかるとのことです。研究担当者によれば、山火事の消火剤として使えるようになるまでに、50 万ドルかかる可能性があるとのことで、メイン大学では資金調達を進めています。
詳しくはポートランド・プレス・ヘラルドの記事をご覧ください。
米国・ライス大学、ナノセルロースを使った 3D プリント木材を開発(2025 年 1 月 23 日)
米国ライス大学の研究グループが、 3D プリントを使用して持続可能な木造構造物を作成方法を開発したことを、建築系ウェブサイト Parametric Architecture が 1 月 22 日に報じましたが、3D 印刷のインクには、ナノセルロースが使われています。
ライス大学の研究者らは、木材の基本構成要素であるリグニンとセルロースから作られた、添加物を含まない水性インクを開発しました。このインクは、ダイレクトインクライティングと呼ばれる 3D 印刷技術によって、建築的に複雑な木材構造物を作成するために使用することが可能です。
木材そのものの天然成分から直接木造建築物を作ることができるということは、より環境に優しく革新的な未来への道を開くものと考えられます。
この研究では、天然のリグニンとセルロースのバランスを維持しながら、リグニン、セルロースナノファイバー(CNF)、ナノクリスタル(CNC)の比率を調整することで、インクの組成を最適化したとのことです。
この研究は、ライス大学と米国エネルギー省科学局基礎エネルギー科学・工学部による FWPERKCK60 の下での支援を受けて行われたそうです。
詳細はParametric Architecture の記事をご覧ください。
国際共同研究で太陽光発電に使えるナノセルロースフィルムを開発(2025 年 1 月 15 日)
フィンランド・トゥルク大学、スウェーデン・RISE、スウェーデン王立工科大学、中国・浙江大学、スイス・スイス連邦工科大学ローザンヌ校、オランダ・ワーゲニンゲン大学の研究グループが、太陽光発電や包装に使えるの高透明ナノセルロースフィルムを開発したことを、太陽光発電に関するメディアである PV Magazine のウェブ版が、1 月 14 日に伝えました。
それによりますと、開発されたフィルムはPV とパッケージングの両方の用途に使用できるもので、PV の観点では、フィルムの光散乱、つまりヘイズを調整する機能は、光の管理や光の影響に対する保護システムとして役立ちます。このフィルムは光散乱を調整できるため、光の管理に使用できます。また、550 nm で 80 % を超える透過率を示します。
フィルムの製造にあたっては、セルロースナノクリスタル (CNC)とセルロースナノフィブリル (CNF)のさまざまな組み合わせ、すなわち、質量比 100:0、75:25、50:50、25:75、0:100 でテストされました。さらに、これらすべての混合物は、モンモリロナイト (MTM) と呼ばれるナノクレイでもテストされました。
詳しい内容は、PV Magazine の記事をご覧ください。
パナソニック、海洋生分解性のセルロースファイバー成形材料を開発(2025 年 1 月 9 日)
パナソニックホールディングス株式会社 MI本部は、これまでに開発してきた植物由来のセルロースファイバーを高濃度に樹脂に混ぜ込む技術を、海洋生分解性の植物由来樹脂等へ展開し、海洋環境で完全生分解性を有する成形材料を開発したことを、1 月 8 日にプレスリリースで発表しました。
海洋生分解性樹脂にセルロースファイバーを高濃度添加することで、優れた機械特性と海洋生分解性が両立する成形材料として開発することに成功しました。
同社では、2015 年から石油由来の樹脂量を減らす研究開発活動を開始し、2019 年に天然由来成分であるセルロースファイバーを 55 %濃度で、2021年には70 %濃度(バイオマス度:70 %)で樹脂に混ぜ込む複合加工技術を開発、さらに 2022 年 3 月には植物由来の樹脂を使用したバイオマス度 90 %以上の成形材料を開発しました。
また、自然界での分解特性向上という観点からは、2022 年 12 月に、複合化技術を植物由来樹脂(ポリ乳酸)等へ展開した完全生分解性の成形材料を開発しました。さらに、土壌では完全生分解性の成形材料であっても自然界の中でも微生物密度が低い海洋では分解しにくいため、自然界流出時の環境汚染リスクのさらなる低減を目指し、海洋での生分解性を実現する取り組みを進めました。
混練技術、成形技術を改良し、セルロースファイバーのつなぎ部分を海洋生分解性の樹脂に置き換えることで、海洋での完全生分解性を有し、耐久性用途に使用されるポリプロピレンと同等の強度をもつ、バイオマス度 100 %のセルロースファイバー成形材料の開発に成功しました。また、従来のkinari(セルロースファイバー 55 %)同様、着色自由性が高い白色の樹脂ペレット化に成功、素材そのものを褐色化させることも可能で、木質感などの高いデザイン性も実現できます。
開発した成形材料は日本バイオプラスチック協会が認証する「海洋生分解性バイオマスプラ」マークを取得しています。
詳しい内容は、同社のプレスリリースをご覧ください。
下記の写真は、今回開発された海洋生分解性のセルロースファイバー成形材料で、同社のプレスリリースから借用しました。
注)この記事はセルロースナノナノファイバー(CNF)よりも繊維径の大きい、セルロースファイバーに関するものです。
愛媛大学、CNFを使ったインキ消去機能紙を開発(2025 年 1 月 8 日)
愛媛大学紙産業イノベーションセンターは、ボールペンで書いても消しゴムが使える「インキ消去機能紙」を開発し、2024 年 12 月までに特許出願したことが、共同通信社などの配信記事により明らかになりました。
通常ボールペンは、インクが染み込んで乾くことで紙に固着しますが、今回新たに開発された紙は、すぐに染み込まないように表面の構造を工夫しているため、インクが紙の表層にとどまっている間は、消しゴムで消すことができるそうです。表面の構造を調整してインクの動きを制御すれば「消せる時間」も任意に設定可能で、既に 6 時間タイプと 24 時間タイプの試作品を実証済みとのことです。
これにはセルロースナノファイバー(CNF)や高分子材料が使用されており、これらを紙表面に塗工して、インキ浸透を制御する紙層構造を作製しました。
詳しい技術内容は、愛媛大学のホームページをご覧ください。
また下記の説明図は、愛媛大学のホームページからお借りしました。
韓国 Anpoly、浦項にナノセルロース新素材工場を着工(2025 年 1 月 6 日)
韓国の毎日経済新聞から 2024 年 12 月 30 日に配信された記事によりますと、韓国の浦項工科大学のベンチャー企業で、ナノセルロースを製造する Anpoly は、約 40 億ウォンの追加投資を獲得して、2024 年 10 月に、200 億ウォン規模(=21 億円)のナノセルロース新素材工場を着工したことが明らかになりました。
この記事は、ポスコグループが米国ラスベガスで 2025 年 1 月 7 日~10 日に開かれる CES2025 への出展を伝える内容ですが、その中で CES2024 で革新賞を受賞した Anpoly について触れられています。
詳しくは毎日経済新聞の記事をご覧ください。