ナノセルロース、セルロースナノファイバー(CNF)、セルロースナノクリスタル(CNC)、バクテリアナノセルロース(BNC)に関する、国内・海外の最新ニュースを掲載しています。こちらは 2025 年 5 月以降に報道されたニュースを、日付が新しいものから順に掲載しています。新しい情報は、適宜追加しています。
天津科技大学、CNF の両親媒性を利用した洗剤を開発(2025 年 5 月 31 日)
中国・天津科技大学の研究チームは、木材由来のセルロースナノファイバー(CNF)とトウモロコシ由来のゼインタンパク質を組み合わせ、新しい洗剤を開発したことを、英国の科学技術系ニュースサイト IOM3 が伝えました。
従来の食器・衣類用の洗剤は、アルキルフェノールポリエトキシレートとリン酸塩を含んでおり、洗い流しにくいため、食器や衣類の表面を損傷する可能性があります。
天津科技大学が開発した洗剤は、この問題点をクリアしています。CNF は両親媒性であるため、乳化液を形成し、バクテリアを引き寄せます。ゼインタンパク質は、この乳化液を安定化させ、油分を閉じ込める役割を果たします。
研究チームは、この洗剤は市販の洗剤とほぼ同程度に食器や衣類の汚れを落とすと主張しています。研究チームは、インク、チリオイル、トマトペーストで汚れた綿布や食器を洗浄しました。洗剤濃度1%(重量比)では効果は若干劣るものの、5%濃度では市販の1%溶液よりも優れた結果が得られたと報告されています。
特に、セルロース/ゼインの 5 % 溶液で汚れの 92 % が除去されるのに対し、市販の食器用洗剤の 1 % 溶液では 87 % が除去されることがわかりました。
詳しい内容は IOM3 の記事をご覧ください。
CNF を使用したジェルネイル用のアンダーベースが発売(2025 年 5 月 23 日)
有限会社アントラーク(東京都渋谷区)は、水と振動だけでオフできるジェルネイル用アンダーベース、NANON(ナノン) を発売したことを、プレスリリース・ニュースリリース配信サービスの PR TIMES を通じて、同日発表しました。
この商品のコア技術は、CNF(セルロースナノファイバー)を使用している点にあります。CNF を含んだ独自レシピで開発した液体を爪の上に塗布し、完全乾燥することで塗膜を形成します。この塗膜は自爪とジェルネイルの間で中敷きのように働き、がっちりとジェルネイルを接着させます。
水中でネイルに振動を与えると、CNF が一緒に振動しジェルネイルを浮かせます。そのため、指 1 本あたり最短 15 秒という短時間でジェルネイルを簡単にオフでき、アセトンなどの溶剤やジェルネイルを削る作業が不要です。
簡単にオフできるため、サロンでのオフ代が節約できるほか、1 回あたりわずか数百円程度と経済的です。
- 製品名:NANON(ナノン)ウォーターオフ・アンダーベース
- 発売時期:2025 年 5 月
- 定価:6,600 円(税込)
- 内容量:5 g(目安:約 25 回分の施術が可能)
- 販売方法:NANON 公式オンラインショップにて販売予定
ただし使い方に少々のコツがいるため、体験会の受講が必須となるそうです。
詳細は PR TIMES のプレスリリースをご覧ください。
東洋製罐、大阪・関西万博で CNC を使用したバリア性紙容器を展示(2025 年 5 月 19 日)
東洋製罐グループホールディングスは、現在開催中の 2025 年日本国際博覧会(大阪・関西万博)で、セルロースナノクリスタル(CNC)を活用した酸素バリア性を有する紙容器、新エコクリスタルカップ を 6 月 10 日 ~ 16 日に展示することを、5 月 16 日にニュースリリースで発表しました。これは同社と同社の連結子会社である東罐興業が共同開発した、CNC を使った紙へのバリアコーティング技術を用いたものです。
紙にコーティングされた CNC は、自発的に並んでいきながら、酸素を通しにくい緻密構造を形成し、バリアとして機能します。
酸素バリア性がある紙カップは、ポリエチレン(PE)、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)、PETフィルム、PE、紙、PEの複層構造をしていますが、この一部をCNCバリア層で置き換え、PE、CNC、紙、PEという構造になっています。
その結果、EVOH、PET、PEといったプラスチックの使用量を削減することができ、温室効果ガス排出量の削減に寄与します。
展示はフューチャーライフ万博のフューチャーライフエクスペリエンス内で行われます。また CNC の性質を可視化する装置(卓上複屈折観察装置)もあわせて展示されます。
詳細は東洋製罐のニュースリリースをご覧ください。
また、バリア性容器の説明図は、東洋製罐のニュースリリースから借用しました。
ナノセルロース・ドットコム コメント
この紙カップは、2021 年 2 月に東京で開催された包装に関する展示会 TOKYO PACK 2021 で、試作品が紹介されています。(ナノセルロースニュース2021年2月参照)
またニュースリリースには、「日本初のセルロースナノクリスタル(CNC)を活用した酸素バリア性を有する紙カップ」ありますが、CNF を使った酸素バリア性を有する紙カップは、2017 年までに凸版印刷が開発済みです。
なおいずれの紙カップも、実用化されたという報道はありません。