ナノセルロース・セルロースナノファイバーに関する世界のニュース 2024年9月~

ナノセルロース、セルロースナノファイバー(CNF)、セルロースナノクリスタル(CNC)、バクテリアナノセルロース(BNC)に関する、国内・海外の最新ニュースを掲載しています。こちらは 2024 年 9 月・10 月・11 月に報道されたニュースを、日付が新しいものから順に掲載しています。新たに入手した情報は、随時追加しています。

目次

リトアニアの大学、CNFマトリックスの製造法を開発(2024 年 11 月 1 日)

リトアニアのカウナス工科大学(KTU)は、セルロース廃棄物からセルロースナノファイバー(CNF)を製造する方法を開発したことを、10 月 30 日に大学のウェブサイトで発表しました。

この方法では、原料セルロースをイオン液体に溶解し、その溶液を湿式電界紡糸法によって CNF に変換します。生成された CNF は、バクテリアによって自然に合成された CNF に似た、独特のゲル状構造を持ち、繊維から医療機器まで幅広い用途に使えるとのことです。

このプロセスでは、天然のセルロースのほか、セルロース廃棄物を原料とすることができます。材料の純度に応じて、結果として得られる繊維はさまざまな製品に使用できます。リサイクルされたセルロースは、おもちゃ、スポーツ用品、家庭用品などの新しいポリマー複合製品の製造に使用できます。原料が純粋な植物セルロースである場合、CNFが独自の生体適合性特性を持っているため、バイオメディカル用途に使える可能性があります。

詳細は KTU のニュースリリースをご覧ください。

農工大、ACC 法のナノ微細化メカニズムを解明(2024 年 10 月 28 日)

水だけで両親媒性セルロースナノファイバー(CNF)を製造できる、水中カウンターコリジョン(ACC)法のナノ微細化メカニズムを解明したことを、東京農工大学がプレスリリースで発表しました。

ACC 法は、同大学の近藤哲男客員教授らが、2005 年から提案・権利化し、企業により実用化されている CNF の製造法で、バイオマス素材から水だけで両親媒性の CNF を製造することができます。

東京農工大、森林総合研究所などの研究チームによって行われた今回の微細化メカニズムの解明により、ACC 法および両親媒性 CNF の製造に学術的根拠が担保されました。

詳細は東京農工大のプレスリリースをご覧ください。
下図はプレスリリースから借用させていただきました。

 

 

UPM Biomedicals 、注射可能なナノセルロースハイドロゲルを発売(2024 年 10 月 25 日)

世界第2位の製紙会社 UPM-Kymmene の子会社で、医療・生命科学分野向けにナノフィブリルセルロース(=セルロースナノファイバー、CNF)を製造・販売している UPM Biomedicals (フィンランド)は、10 月 24 日のプレスリリースで、永久埋め込み型医療機器用の天然注入ハイドロゲル FibGel ® の発売を発表しました。

FibGel ® は、シラカバ由来のセルロースと水のみから作られた CNF ハイドロゲルで、医療機器開発者にとって安全で持続可能かつ生体適合性のある代替品となります。フィンランドで ISO 13485 規格に基づいて設計・製造され、医療用途向けとして、軟部組織修復、整形外科、再生医療などの分野に用いることとができます。

この製品は、従来の合成ハイドロゲルや動物由来ハイドロゲルとは異なり、再生可能で、責任ある方法で調達されたフィンランド産のシラカバ材から製造された天然ハイドロゲルです。動物由来やプラスチックベースの従来品によくある有害な免疫反応や、線維性カプセルの形成を引き起こすことなく、人体で長期間使用できるように設計されています。

さらにこの製品は、追加コンポーネントの組み込みによって、剛性を調整することが可能です。そのため、さまざまな臨床ニーズに合わせたソリューションの提供が可能になり、軟部組織の修復、整形外科治療、美容、薬物送達、細胞移植など、幅広い医療用途に用いることができます。

そしてこの製品は ISO 10993 に準拠した生物学的安全性評価を受けており、さまざまな軟部組織の修復や整形外科用途で使用する医療機器を開発している企業にとって理想的なコンポーネントとなります。同社の最初のパートナーとの間で、2025 年に FibGel ® の技術に基づく最初の臨床調査を計画しています。

詳細は同社のプレスリリースをご覧ください。

また写真は、同社のプレスリリースから借用させていただきました。

 

 

CNF スプレーコーティング剤でワイン用ブドウの山火事の煙を防ぐ(2024 年 10 月 25 日)

米国・オレゴン州立大学で 10 月 22 日に行われたパネルディスカッションで、山火事の煙の影響を緩和するための、ブドウ用のスプレー保護コーティング剤の開発状況について発表が行われました。

スペインに本拠を置くワイン関連情報サイト Vinetur に、10 月 24 日に紹介された内容によりますと、この技術はキトサンとβ- シクロデキストリンを含む食品グレードのセルロースナノファイバー(CNF)ベースのコーティング剤を、ブドウ園のブドウに直接散布します。このコーティング剤には柔軟性があるため、果実と一緒に成長するように設計されています。

このコーティング剤には、ワインの異臭の原因となる 3 つの主要な煙の化合物 (グアイアコール、シリンゴール、メタクレゾール) をブロックする効果がありますが、これらの化合物の一部しかブロックまたは捕捉できないため、現時点では成功率が 50 % にとどまるとのことです。なお、コーティング剤の使用は、ブドウの成長に影響はないそうです。

詳細は Vinetur の記事をご覧ください。

オランダ・デルフト工科大学、BNC からプラを製造する企業を設立(2024 年 10 月 24 日)

オランダ・デルフト工科大学、工業デザイン工学部のバイオデザイン研究室は、スタートアップ企業 Foamlab を設立し、生分解性があるバクテリアナノセルロース(BNC)の発泡体によって、ポリスチレンなどの従来の石油由来プラスチックに代わる持続可能な代替品を提供ことを目指しています。

デルフト工科大学のウェブサイトに 10 月 23 日に掲載されたニュースによりますと、Foamlab は、Elvin Karana 教授と工業デザイン工学部が主導し、Delft Enterprises 並びに共同設立者兼 CEO の Jeroen van Rotterdam氏 から資金提供を受け、50万ユーロ(=8,300万円)の資本金でスタートしました。

詳細はデルフト工科大学のウェブサイトをご覧ください。

CNFを使ったピアス、イアリングが発売中(2024 年 10 月 18 日)

セルロースナノファイバー(CNF)を原料として用いたピアスとイアリングを、株式会社 磐城高箸(福島県いわき市)が製造販売しています。

同社は杉割り箸、杉枕、ひのき鉛筆、おがぬいぐるみなどの製造・販売を手掛ける企業ですが、同社のセルロースナノファイバー工房では、CNFをピアスやイアリングに加工し、ネット販売しています。価格は 700~1,600 円です。

詳細は同社のホームページをご覧ください。

写真は同社のホームページから借用しました。

 

 

旭化成と伊企業、CNF と PA6 を使った 3D プリント用新素材を開発(2024 年 10 月 11 日)

イタリアのポリアミド6(PA6)メーカーであるアクアフィルと旭化成は、ケミカルリサイクルした PA6 である、アクアフィルの ECONYL® ポリマーと、旭化成のセルロースナノファイバー(CNF)を活用した 3D プリント用途向けの新素材を開発することで合意し、MOU を締結しましたことを、Business wire が 10 月 9 日に報道しました。

アクアフィルの ECONYL® ポリマーは、使用済みおよび使用前の廃棄物から化学的にリサイクルされた PA6 で、使用済みの漁網、古いカーペット、産業廃棄物などのポリアミド廃棄物をモノマーに脱重合したのち、PA6 のチップに再重合したものです。

一方、旭化成の CNF はコットンリンターを原料とし、耐熱性やネットワーク形成能に優れているほか、ガラス繊維に比べて材料リサイクル性に優れています。

このたび、アクアフィル社に出資している伊藤忠商事の支援により、アクアフィル社の ECONYL® ポリマーと旭化成のセルロースナノファイバー(CNF)を活用した 3D プリント用途向けの新素材を両社で開発することで合意しました。このCNF / ECONYL®ポリマー複合材料は、成形性と強度に優れており、自動車や航空分野を中心に、高機能用途への展開が期待できます。

詳細は Business wire の記事をご覧ください。

サウジ King Saud University、パイナップルの葉から微結晶セルロース精製(2024 年 10 月 10 日)

サウジアラビアの King Saud University の研究グループは、パイナップルの葉の繊維から微結晶セルロース(CNC、セルロースナノクリスタル)を精製し、さらにそれをカルボキシメチル微結晶セルロースに改変したことを、科学技術系ウェブサイト  Natural Science News が 10 月 9 日に報じました。

ナノセルロース・ドットコム コメント

CNCは、セルロースを含む植物材料であれば、ほとんどのものから抽出することが可能で、それをカルボキシメチル化することも技術的には難しくないので、報道された内容そのものには新規性はありませんが、ナノセルロースに関する研究がサウジアラビアでも行われるようになったことは、注目に値します。

第一工業製薬、CNF 複合磁性粒子を開発(2024 年 10 月 2 日)

TEMPO 触媒酸化セルロースナノファイバー(CNF)を製造・販売している第一工業製薬は、広島大学大学院先進理工系科学研究科の荻教授と共同で、CNF 複合磁性粒子の開発に成功したことを、同日、プレスリリース配信サービス PR Times を通じて発表しました。

磁性体粒子とは磁性をもつ粒子のことで、鉄酸化物ナノ粒子、金属ナノ粒子、磁性ポリマー粒子などがあります。今回開発された CNF 複合磁性粒子は、アクリル共重合体などの合成高分子を用いずに CNF と磁性体粒子の複合化を行ったものです。

この CNF 複合磁性粒子には同社独自の CNF が使われており、CNF 上のカルボキシ基の効果によりタンパク質の吸着に優れています。また CNF 上のカルボキシ基を変性することで、特定物質の回収への対応が可能です。さらに超遠心法やフィルターを用いずに磁性を用いてタンパク質を回収できます。

生体中のタンパク質を分析して、さまざまな疾患を発見する技術が実用化されていますが、サンプル採取時に動物や人への負担が大きいという課題がありました。この CNF 複合磁性粒子を用いることで、従来品よりも多くのタンパク質を回収できるため、動物や人への負担を軽減し、今後の診断薬分野への貢献が期待できます。

研究用試薬や診断薬の開発への展開をめざし、研究用試薬や診断薬メーカーに対して、11 月からサンプルワークを開始するとのことです。

詳細は PT Times のニュースリリースをご覧ください。

下図はPR Times より借用させていただきました。

米国 Azolla 社、BNC の生産効率を高め包装、建築材料の工業生産を目指す(2024 年 10 月 2 日)

世界各国のスタートアップ企業の技術、トレンドを発信しているサイト StartUS Insights に、「サンフランシスコの革新的テクノロジー企業トップ 10 を探る」という記事が掲載されました。その中に、バクテリアナノセルロース(BNC)の高効率生産を目指す Azolla が紹介されています。

2020 年に設立された Azolla は、細菌を使って CO2 と光から繊維用の BNC を生産します。この技術は、CO2 を主原料として使うため、その排出量の削減と、炭素隔離に貢献します。合成生物学ツールを活用して、自然の生態系を乱すことなく、包装材料、建築材料、家庭用家具の工業規模生産するための細菌の効率を高める研究を行っているとのことです。

エコシステムを目指すスタートアップは、サンフランシスコに 8,953 社あり、各社の平均従業員数は 16 人です。このエコシステムは、情報技術、ヘルスケア、フィンテック、電子商取引、教育などの分野に重点を置いています。これらの分野は、エコシステムが現在の技術の進歩と市場の需要に合致していることを反映しています。

詳細は StartUS Insights の記事をご覧ください。

大王製紙の CNF 水分散液が抗菌等空気改善塗料に採用(2024 年 9 月 26 日)

大王製紙が開発し、販売中のセルロースナノファイバー(CNF)水分散液 ELLEX-S が、ハードプロテクト株式会社(横浜市中区)が開発した室内の抗菌等空気改善塗料 Satoyama Coat(サトヤマコート) の添加剤として採用されました。

大王製紙の同日付のプレスリリースによりますと、Satoyama Coat は、空気をキレイにする見えない壁紙をコンセプトとする室内の抗菌等空気改善塗料で、ポリフェノール(いたどり、よもぎ、柿の葉、茶の木由来)成分が入った塗料を壁・天井に塗布することで自然界と同じような環境を人工的に作り出し、空気中に含まれる有害物質の吸着・分解を行う効果があります。

Satoyama Coat はこれまで主に壁・天井のクロスに塗布、使用されてきましたが、CNF 水分散液 ELLEX-S  を配合することで塗料の粘度が増し、化粧板や塗装面などの滑らかな面にも塗布できるようになりました。これまで使用が難しかった箇所にも塗布可能となったことに加え、塗料の定着性向上にもつながったとの評価を得たとのことです。

Satoyama Coatについては、こちらをご覧ください。

また、詳しくは、大王製紙のプレスリリースをご参照ください。

下の写真は大王製紙のプレスリリースから借用しました。

王子HD、トヨタ自動車東日本、CNF を活用したロボット部材開発(2024 年 9 月 26 日)

王子ホールディングス(王子HD) と トヨタ自動車東日本(本社:宮城県大衡村)は、高透明、高剛性のセルロースナノファイバー(CNF)を用いた部材を共同で開発し、9 月 29 日に宮城県利府町で開催される「TOYOTA GAZOO Racing Rally Challenge 第 10 戦 利府」 会場で走行展示される、自律走行型ロボットに搭載することを 9 月 26 日に発表しました。

王子HDは世界で初めて CNF の透明シートを製造する技術を確立し、この CNF シートを複合したポリカーボネート樹脂を、自動車窓ガラス等へ適用すべく、開発を行っています。

今回、この CNF シートを複合したポリカーボネート樹脂を用いて、トヨタ自動車東日本が、自律走行型ロボットの天蓋を製作しました。従来の天蓋は不透明であり、剛性確保のため背面に補強部材を設けていました。これに対して、高透明、高剛性であるこの部材で製作した天蓋は、内部を視認できる新たな意匠性を実現し、また補強部材が不要となり、組立工程の簡略化や積載容積の拡大に寄与します。車体の軽量化にも繋がり、走行時の省電力化も期待できるとのことです。

写真は王子HD のウェブサイトに掲載された自律走行型ロボットとその天蓋です。

詳細は、王子HDのニュースリリースをご覧ください。

なお、トヨタ自動車東日本は、本件に関する発表は行っていない模様です。

ナノセルロース・ドットコム コメント

王子HDが開発したCNFシートを複合したポリカーボネート樹脂が、トヨタの生産子会社が試作したロボットに採用されたというだけのニュースです。トヨタ側は本件について、特に発表は行っていません。この部材は開発されてから数年経過していますが、量産品の部材として採用されたというニュースはないようです。

イリノイ大学とパーデュー大学、CNC の新たな乾燥技術を開発(2024 年 9 月 25 日)

セルロースナノクリスタル(CNC)は、複合材料、バイオメディカル材料、パッケージングの原材料として期待されていますが、製造する際に、低濃度の懸濁液から大量の水を除去する必要があり、この乾燥プロセスで使用される大量のエネルギーが課題となっています。

これに対し、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校とパデュー大学の研究チームは、多周波超音波乾燥技術を発表しました。この技術は乾燥プロセスを迅速化するだけでなく、熱風乾燥、スプレー乾燥、凍結乾燥などの従来の乾燥技術と比較してエネルギー消費を大幅に削減します。

この記事は複数の科学技術サイトで紹介されています。
詳細は下記の論文をお読みください。

Junli Liu, Amir Malvandi, Hao Feng. Comprehensive comparison of cellulose nanocrystal (CNC) drying using multi-frequency ultrasonic technology with selected conventional drying technologies. Journal of Bioresources and Bioproducts, 2024; DOI: 10.1016/j.jobab.2024.07.003

スギノマシン、CNF の食品への添加効果に関する技術資料を公開(2024 年 9 月 24 日)

スギノマシンは、自社で製造・販売するセルロースナノファイバー(CNF)BiNFi-s ® を食品に転嫁した場合の効果についてまとめた技術資料を公開することを。同日、プレスリリース配信サービス PR Times  を通じて公表しました。

技術資料では、① オーツ麦由来のプラントベースフードへの添加効果、② 米粉を使ったシフォンケーキの釜落ち防止、③ プリンでの保水性効果 について解説しています。

技術資料は同社のダウンロードサイトで、ユーザー登録をしたうえで入手してください。

大王製紙、意匠性がある CNF  複合樹脂原料を販売開始(2024 年 9 月 18 日)

大王製紙は意匠性がある(ストーン調)セルロース ナノファイバー(CNF)複合樹脂原料 ELLEX-R10 を開発し、2024 年 11  月より販売を開始することを、同日、ニュースリリースで発表しました。

このCNF 複合樹脂原料は、

  • 商品名:ELLEX-R10
  • セルロース濃度:10%
  • 樹脂母材:ポリプロピレン

で、独特な風合い・粒感を持ち、剛性と耐衝撃のバランスを原料配合により調整可能とのことです。
また、

  • 剛性(曲げ弾性率): 1.9GPa
  • 耐衝撃性(シャルピー衝撃強さ):3.8kJ/m2
  • 色調:白

ですが、今後ラインナップが増えるとのことです。

まずは、大王グループが販売する「エリエール ディスペンサー 卓上ペーパータオル 中判・小判兼用」の本体にも採用されました(下写真、大王製紙のウェブサイトから借用)。

 

 

詳しくは大王製紙のニュースリリースをご覧ください。

カナダ・マギル大学、BNC に化学修飾した CNC を組み込み高機能化(2024 年 9 月 17 日)

セルロースナノファイバー(CNF)やセルロースナノクリスタル(CNC)は、生物によって作られたセルロースを含む原材料を分解・精製して作るため、原材料にもともと含まれていたセルロース以外の成分が混入したり、ナノセルロースの繊維の大きさ(径と長さ)が不揃いになったり、さらに分解・精製に用いる薬品や金属微粒子が混入する可能性があります。

これに対して、糖を原材料として微生物が生合成するバクテリアナノセルロース(BNC、バクテリアセルロース(BC)と呼ぶ場合もある)は、不純物が含まれず、繊維の径と長さが揃っていることが特徴で、バイオメディカル用途を中心に、さまざまなアプリケーション開発が進められています。

CNC の研究で数多くの実績を残してきたマギル大学(McGill University、カナダ・モントリオール)は、近年 BNC の研究にも力を入れており、微生物が BNC を生合成する段階で、化学修飾した CNC を組み込むことで、物理化学的特性を向上させたナノセルロースを製造する手法を見出したことを、9 月 12 日に大学のウェブサイトで発表しました。

Van de Ven 教授らの研究グループは、カルボキシル基、アルデヒド基、カルボキシルアルデヒド基などのさまざまな化学官能基を含む CNC を作り、これを BNC が生合成される段階で加えることで、BNC 単独の場合と比べて、物理化学的特性が向上したナノ複合材料を生み出しました。

このナノ複合材料には天然の抗菌剤が含まれており、細菌細胞に対する強力な抗菌作用とヒト細胞との生体適合性が実証されており、バイオメディカル材料の有望な候補となっています。さらに、さまざまな孔サイズがあるため、これらのナノ複合材料は、水ろ過用の膜材料としても有望です。

下の図は、マギル大学のウェブサイトから引用したもので、ENCC は electrosterically stabilized nanocrystalline celluloses、BNCC は bifunctional nanocrystalline celluloses の意味です。ちなみにカナダでは CNC のことを、nanocrystalline celluloses と呼びます。

 

詳しくはマギル大学のウェブサイトをご覧ください。

英国 Ingenza、BNC の生産技術開発でデンマーク Cellugy と連携(2024 年 9 月 9 日)

英国のバイオ企業 Ingenza は、バクテリアナノセルロース(BNC) を生産するための革新的なプラットフォームの開発を加速するために、デンマークの Cellugy と提携することを発表しました。

8 月 22 日に Ingenza  のウェブサイトで公表されたプレスリリースによりますと、BNC はパーソナルケアをはじめ、さまざまな産業用途で、化石由来の石油化学製品に代わる持続可能な代替品を提供します。この新規プロジェクトでは、BNC 生産の最適化を加速すると考えられています。

デンマークを拠点とするスタートアップ企業である Cellugy は 2018 年に設立され、セルロース生成微生物を使って、高性能で完全にバイオベースの生分解性原料を生産し、石油化学製品への依存を減らすことを目指しています。今回の連携によって、Cellugy は微生物の研究における Ingenza の豊富な経験を利用でき、セルロース生産経路に影響する要因を特定するためのさまざまな技術の実装にフォーカスできます。

詳細は Ingenza のプレスリリースをご覧ください。

米国 ORNL、ナノセルロースの製造に要するエネルギーを 21 %削減(2024 年 9 月 8 日)

米国エネルギー省傘下の ORNL(Oak Ridge National Laboratory、オークリッジ国立研究所、テネシー州)は、スーパーコンピューターを用いた分子シミュレーションにより、ナノセルロースの製造に要するエネルギーを 21 %削減することができる画期的なプロセスを開発しました。

米国カリフォルニア州に本拠を置くニュースメディア hoodline のウェブサイトに 9 月 7 日に掲載された記事によりますと、開発されたプロセスでは、水酸化ナトリウムと尿素の水溶性混合物を使用します。

シミュレーションでは、原子間の力を調べることで、プロセスが機能するかどうかだけでなく、なぜ機能するのかということも解明されました。基礎実験からパイロットスケールに移行し、水だけを使用した場合に比べて、所要エネルギーが 21 %削減されたことを確認しています。

ナノセルロースには強度があり、軽量で、持続可能な住宅や自動車部品の 3D 印刷に実用的と考えられています。一方で従来の製造方法では、エネルギーを大量に消費します。ORNL、テネシー大学ノックスビル校、メイン大学の研究チームは、この課題を解決しました。

この研究は、米国エネルギー省のエネルギー効率・再生可能エネルギー局の先端材料・製造技術局 (AMMTO) と、再生可能技術のためのハブ & スポーク持続可能材料・製造アライアンス プログラム (SM2ART) 内の ORNL-U-Maine パートナーシップによってサポートされています。

詳しくは hoodline の記事をご覧ください。