ナノセルロース・セルロースナノファイバーに関する世界のニュース 2024年5月~8月

ナノセルロース、セルロースナノファイバー(CNF)、セルロースナノクリスタル(CNC)、バクテリアナノセルロース(BNC)に関する、国内・海外の最新ニュースを掲載しています。こちらは 2024 年 5 月から 8 月に報道されたニュースを、日付が新しいものから順に掲載しています。新たに入手した情報は、随時追加しています。

目次

VTT、ナノセルロースとベリーをベースにした皮膚スプレーを開発(2024 年 8 月 28 日)

フィンランドの国立研究開発機関である VTT は、ナノセルロースと野生のベリーの抗菌化合物をベースにした皮膚スプレーを開発しました。これは、手術前に傷を治療し、MRSA  などの院内感染細菌を除去するために使用できるほか、クリーム、経皮パッチ、または創傷被覆材としても使用できます。

VTT が8月27日に公表したプレスリリースによりますと、VTT は、ナノセルロースゲルとナノセルロースフィルムを、ラボスケール、パイロットスケールで 15 年以上製造してきました。

一方で、ベリーの種子の表面には抗菌化合物が豊富に含まれており、ベリーの抽出物は食品、化粧品、医療用途に有用です。これらの化合物の自然界での役割は、発芽前に種子をカビなどの微生物から保護することですが、人間の皮膚上で危険な微生物の増殖を防ぐのにも役立ちます。ベリーの抽出物はごく少量でも、皮膚の有益な微生物叢に害を与えることなく、MRSA などの病原菌を殺すことができます。

そこで、ナノセルロースフィルムの表面と細孔にベリーのエキスを染み込ませることで、抗菌化合物が繊維ネットワーク内に閉じ込められないようにしたスプレー剤を開発したとのことです。

詳細は VTT のプレスリリースをご覧ください。

NASA、国際宇宙ステーションで BNC の製造に成功(2024 年 8 月 25 日)

アメリカ航空宇宙局(NASA)は、国際宇宙ステーションで 4 週間培養した細菌からバクテリアナノセルロース(BNC)を生成することに成功したことを 8 月 24 日にウェブサイトで発表しました。

使用された細菌は酢酸菌の一種 Komagataeibacter hansenii で、BNC 生合成のモデル生物としてよく使われるものです(日本国内でも入手可能)。

建設、衣類、エネルギー材料など、さまざまな用途で使用が検討されており、微小重力下での大規模生産の可能性を広げるものです。実験はタンパク質結晶化に使用される温度制御モジュールで行われたとのことです。

詳しくはNASA のニュースをご覧ください。

カナダのCNC製造会社が戦略的パートナーを募集中(2024 年 8 月 22 日)

カナダ・サスカチュワン州の Nano-Green Biorefineries Inc.(旧 Blue Goose Biorefineries Inc.)は、リグノセルロースからセルロースナノクリスタル(CNC)を独自のプロセスで製造する技術を保有しています。

同社は YouTube の動画を公開して、製造プロセスの概要を公開するとともに、投資、製造ライセンスの供与、合弁、事業買収までを含めた戦略的パートナーを募集しています。

リグノセルロースを酸化し、アルカリ抽出したのち、過酸化水素と次亜塩素酸ナトリウム、硫酸銅(触媒)を使った酸化反応で製造されるようです。また、このプロセスで製造される CNC の性状は、径:10 nm、長さ:150 nm、結晶化度:80% 以上 です。

同社は、農業残渣からバイオディーゼルとバイオエタノールを製造するプロセスを開発するために 2007 年に設立されましたが、経済的な観点から CNC の製造に転換しました。本社はカナダ・サスカチュワン州・サスカトゥーンにあり、2014 年以降、パイロットプラントを使って CNC の生産を行っています。

興味のある方は、直接お問い合わせください。なお、ナノセルロース・ドットコムを通じて問合せ・取次することもできますので、ページトップの「技術コンサルティング」からご相談ください。

GS アライアンス、CNF から量子ドットを合成(2024 年 8 月 22 日)

先端材料の研究開発を行っている GSアライアンス株式会社は、自社で製造しているセルロースナノファイバー(CNF)から量子ドットを合成したことを、プレスリリース配信サービス @Press を通じて 8 月 21 日に公表しました。

産総研のホームページによると、量子ドットとは、直径 2~10 nm程度の非常に小さい半導体の結晶のことで、この半導体微粒子に紫外光を照射すると発光するほか、この微粒子を大きくしたり小さくしたりすることで、発光する色を変えることができるそうです。

そのため量子ドットは、ディスプレイを高輝度・高精細にするという用途や、人体を透過しやすい近赤外発光を利用することで、病気の診断や薬の効果の有無を調べるなど先端医療分野への貢献が期待されているそうです。

GS アライアンスは、これまでに種々の量子ドット、量子ドット複合材料を合成販売しており、特に、近年は、無機半導体ではなく、有機物やバイオマス材料、バイオマス系廃棄物を原料とした炭素量子ドットの合成にも注力しています。カドミウムや鉛などの毒性のある無機物も使用せず、有機物、天然材料、場合によっては、バイオマス系廃棄物などを原料とするので、毒性もなく、安価になりえます。

GS アライアンスは、セルロースや廃木材などを原料に、CNF やリグノ CNF を作成し、それをさらに原料にして、炭素系量子ドットを合成しました。有機物から量子ドットを合成することは既知ですが、ナノファイバー化して、それを原料にして量子ドットを合成した例は、民間企業では世界でもあまり例がありません。セルロースをそのまま原料として用いるより、ナノファイバー化することにより、より効率良く量子ドットを合成できるメリットがあるそうです。

詳細は @Press の記事をご覧ください。

バージニア大学、CNF で 3D プリントコンクリートの流動性能を改善(2024 年 8 月 5 日)

バージニア大学の研究者は、木材パルプ由来のセルロースナノフィブリル(CNF)を使って、3D 印刷コンクリートの流動性能を大幅に向上させることを明らかにしました。

3D 印刷されたコンクリートの建築物には、迅速で正確に建設できること、リサイクル材料が使用できること、人件費が削減できること、廃棄物が削減できること、といったメリットがあります。またこの方法では、従来の方法では実現が難しい複雑なデザインの建築物を作ることも可能です。一方で、3D 印刷ができる材料は限られており、持続可能性と耐久性に関しては問題点が存在します。

欧米の複数のニュースサイトに掲載された記事によりますと、同大学土木環境工学部の Ozbulut 教授の研究チームは、CNF を 3D 印刷が可能な建設材料に組み込むことで、耐久性があり、環境に優しい建設方法が実現する可能性があると考えました。そしてコンクリートに 0.3 % の CNF を加えると、流動性が大幅に向上することを発見しました。

硬化したサンプルを顕微鏡で分析すると、材料の結合と構造の均一性が向上していることもわかりました。さらにCNF を添加した コンクリートの 3D 印刷部品は、引っ張り、曲げ、圧縮に耐えられることも示されました。

 

写真は Space Dailyのウェブサイトから引用

詳細は、英国のVoxel Mattersのウェブサイトをご覧ください。

また、研究結果は、2024年9月発行の論文誌 Cement and Concrete Composites に掲載されるとのことです。

スイス連邦工科大学、BNC の生産効率の高い細菌株を 4 万種から選抜(2024 年 8 月 1 日)

スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH, Zurich)の研究チームは、バクテリアナノセルロース(BNC)の生産能力に優れた細菌である Komagataeibacter sucrofermentans の変異株を 4 万種作り出し、その中から BNC の生産能力が特に高い株を選抜しました。その結果、選抜された 4 株は、変異前の株に比べて BNC の生産能力が 1.7倍 であったことが、ETH Zurich のウェブサイトで公表されました。

セルロースは、食品、繊維、バイオメディカル用途などで需要が高い原材料で、細菌で生産することが可能です。細菌を使ってセルロースを生産するメリットは、常温の水中で行われ、持続可能であることです。一方で生産速度が遅く、工業化が難しいというデメリットもあります。

Komagataeibacter sucrofermentans は、バイオメディカル用途や包装材、繊維製品の製造で需要の高い高純度セルロースを生産します。このタイプのセルロースは、創傷治癒を促進し、感染を防ぐためによく用いられます。

研究チームはまず、自然界に存在する元の細菌(野生型)の新しい変異体を作成しました。そのために細菌細胞に UV-C 光を照射し、細菌 DNA のランダムな箇所に損傷を与えました。次に、細菌を暗室に置き、DNA 損傷の修復を防ぎ、突然変異を誘発しました。

次に、小型装置を使用して、各細菌細胞を栄養液の小さな液滴に包み、特定の時間、細胞にセルロースを生成させました。培養期間後、蛍光顕微鏡を使用して、どの細胞がセルロースを大量に生成し、どの細胞がまったく、またはほとんど生成しなかったかを分析しました。

この過程で使用されたのが、ETHで開発された選別システムです。この選別システムはわずか数分で 50 万個の液滴をレーザーでスキャンし、最も多くのセルロースを含む細胞を選別することができます。野生型よりも 50~70%多くのセルロースを生成する細胞は 4 株だけでした。

選抜された Komagataeibacter sucrofermentans の株は、空気と水の境界面にあるガラス瓶の中で成長し、マット状にセルロースを生産することができます。このようなマットは、本来は 2~3 mg、厚さは 1.5 mm です。選抜株のセルロースマットは、野生型のほぼ 2 倍の重さと厚さがあります(下写真)。

研究チームは、これらの 4 つの変異体を遺伝学的に分析し、どの遺伝子が UV-C 光によって変化したか、またこれらの変化がどのようにしてセルロースの過剰生産につながったかを調べました。4 つの変異体はすべて、同じ遺伝子に同じ変異がありました。この遺伝子は、タンパク質分解酵素 (プロテアーゼ) の設計図です。しかし、セルロース生産を直接制御する遺伝子は変化していませんでした。

この新しいアプローチは汎用性が高く、他の物質を生成する細菌にも応用できるため、特許を出額しています。

詳しくはETHのウェブサイトをご覧ください。

写真はZTHのウェブサイトより引用

九州大学、CNFを基材にヒト幹細胞の制御培養に成功(2024 年 7 月 25 日)

九州大学大学院農学研究院の北岡卓也教授らの研究グループは、樹木由来のセルロースナノファイバー(CNF)の表面に生体官能基を導入することで、動物由来成分を全く使うことなく、ヒトの腸骨骨髄から採取した間葉系幹細胞の培養に成功したことを 7 月 24 日に大学のホームページで公表しました。

再生医療は、病気やけがなどで機能が損なわれた組織や臓器を修復・再生する医療技術で、からだの外でヒトの細胞を効率的かつ適切に培養する必要があります。
しかしこれまでは、ヒト以外の動物のコラーゲンや生体成分を抽出して培養基材に使う必要があり、免疫拒絶や感染リスクがありました。

今回新たに開発された方法は、動物成分を全く使っていません(Xeno-free,ゼノフリー)。それにもかかわらず、従来の動物由来コラーゲンを使った場合に匹敵する培養効率を達成しています。

詳細は九州大学のホームページおよび論文誌Carbohydrate Polymersをご覧ください。

TAPPI Nano 2025 の開催地が スペイン・ジローナに決定(2024 年 7 月 14 日)

ナノセルロース分野で世界最大規模の国際会議である International Conference on Nanotechnology for Renewable Materials (TAPPI Nano) の次年度の開催地が、スペイン・カタルーニャ州のジローナ(Girona)であることがわかりました。

TAPPI Nano 2024 のConference Co-Chair として、スペインの森林科学研究所(Institute of Forest Science (ICIFOR))の Dr. Raquel Martín-Sampedro が入っていたので、スペインでの開催は予想されていました。

なお、ジローナ大学ではスペイン政府の資金によって、ArtInNanoプロジェクト( Accelerating the industrial deployment of nanocellulose production processes through the use of artificial intelligence algorithms、人工知能アルゴリズムを用いたナノセルロース生産プロセスの産業展開の加速)が2023 年~2025 年に行われています。

 

ナノセルロース・ドットコム コメント

スペインでのナノセルロース研究は、ほとんどがバクテリアナノセルロースを対象としたもので、植物由来のナノセルロースに関する研究はほとんど行われていませんでした。したがって、紙・パルプ産業が開催主体である TAPPI Nano へのスペインからの参加者は非常に少なく、2024 年も、スペインの森林科学研究所からの発表 1 件にとどまっています。

一方で TAPPI Nano は退潮傾向にあり、2022年 のヘルシンキ(アールト大学とVTTがホスト)、2023 年のバンクーバー(ブリティッシュ・コロンビア大学がホスト)、2024 年のアトランタ(ジョージア工科大学がホスト)とも、地元の学生の発表によって講演枠を埋める傾向が顕著でした。スペインにはナノセルロースを研究対象としている研究者・学生が少なく、しかも地方都市であるジローナ(バルセロナから1 時間 30 分)での開催なので、どのような規模で開催されるのか、注目したいと思います。

米メイン大学、CNFの新たな脱水・乾燥技術を開発(2024 年 7 月 10 日)

包装関連のニュースサイト Packaging Europe に、米国のメイン大学の研究者が、セルロースナノファイバー(CNF)の静電接触脱水技術を開発し、CNFの乾燥プロセスをスピードアップすることを目指しているとの記事が掲載されました。

7 月 10 日付で掲載された記事によりますと、同大学の Pradnya D. Rao 博士らが開発した静電接触脱水プロセスは、負に帯電したセルロースナノファイバーと、正に帯電したカチオン沈殿炭酸カルシウム粒子間の静電引力を利用するものです。このプロセスにより、乾燥時間が  5  倍短縮され、CNF フィルムのコスト効率が向上すると考えられています。

現在、CNF の高固形分スラリーはより効率的に製造できると考えられており、コーティング、食品包装、バイオメディカルデバイス、化粧品、電子機器など、さまざまな業界での利用が期待されています。

とりわけ CNF は、デンプン、ポリ乳酸 (PLA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート (PBAT) とともに、化石由来のプラスチックをバイオポリマー代替品に置き換えるためによく使用されます。しかし、水分含有量が多く、固形分が少ないと粘度が高くなるため、乾燥時間が長くなる可能性があります。

同大学では、乾燥プロセスをスピードアップすることで、包装材料としてのセルロースナノファイバーの商業的導入を効率化することを目指しています。

その他の情報については、Packaging Europe のウェブサイトをご覧ください。

横国大、コーヒー粕からホロセルロースナノファイバーを得たことを発表(2024 年 6 月 29 日)

植物は主として、セルロース、ヘミセルロース、リグニンの 3 成分から構成されていますが、セルロースとヘミセルロースをあわせて、ホロセルロースと呼びます。

横浜国立大学は 6 月 28 日付のプレスリリースで、大学院工学研究院の川村 出 教授、大学院環境情報研究院の金井 典子 助教らの研究グループが、コーヒー粕からホロセルロースナノファイバーを得ることに成功したことを発表しました。これは高圧下物理的衝撃によって微細化することで得られたもので、コーヒー粕から 52 % の高収率で 2~3 nm 繊維幅のホロセルロースナノファイバーを分離したとのことです。

食品添加物としての利用に適しているとのことで、凍結乾燥させたホロセルロースナノファイバーは、ハンドシェイクのみで水への部分的な再分散性が確認され、輸送コストの削減が期待されるとのことです。

なお、分離したホロセルロースナノファイバーのその他の性状については、プレスリリースでは触れられていませんが、研究成果は論文誌 Carbohydrate Polymer Technologies and Applications のオンライン版に公表されているとのことです。

その他の情報については、同大学のプレスリリースをご覧ください。

GANNI、Polybion の BNC を使った新作コレクションを発表(2024 年 6 月 20 日)

スペインのバクテリアナノセルロース(BNC)メーカーの Polybion は、同社が製造する持続可能なプレミアム培養 BNC である Celium ® を、デンマーク・コペンハーゲンを拠点に誕生したファッションブランド GANNI の2025年コレクションで採用したことを発表しました。

GANNI は、カラフルなコレクション、サステナブルな背景、手に取りやすい価格帯で注目される人気の北欧ブランドのひとつで、日本でも販売されています。

GANNI は、 2025 年のコレクションで Polybion の Celium ® を使用した製品の提供を開始すると発表しました。この出来事は、ファッション業界が変革する可能性を秘めています。

GANNI は 2019 年に「未来の生地」イニシアチブを立ち上げて以来、ファッションの未来を形作る素材の研究開発の最前線に立ってきました。Pitch Studios ®および 3D アーティストの Berenice Golmann 氏と連携して、GANNI は生地のイノベーションとデジタルリアリティが出会うビジョンを概念化しました。このイニシアチブの重要な部分である Celium ®は、果物の廃棄物をバクテリアに与えて栽培され、既存のインフラストラクチャを使用して染色、エンボス加工、なめし加工できるため、従来の生地に比べて環境への影響が少なくなります。

詳細は Polybion のウェブサイトをご覧ください。

北京師範大学、マイクロ波吸収と熱管理にBNCエアロゲルベースの複合 PCM(2024 年 6 月 9 日)

多機能複合相変化材料(PCM)は、さまざまな要素を組み合わせて、熱管理、太陽熱変換、マイクロ波吸収を改善することを目的とした材料です。北京師範大学の研究グループは、バクテリアナノセルロース(BNC)のエアロゲルベースの複合  PCM を開発したことを、米国のインターネットメディア List23 が、6 月 7 日に報じました。

それによると、寒冷条件下で太陽エネルギーを捕捉してデバイスを加熱する能力を評価するために、太陽熱変換をテストしたところ、90 % を超える有効変換率が示されました。エアロゲルベースの  PCM は、122.19 J/g の有効蓄熱容量を示し、93.5 %  の蓄熱を示しました。さらに、エアロゲルベースの複合 PCM は、入射する電磁波を効率的に吸収しました。

電子機器には過熱やマイクロ波の放出などの問題があり、これが他の機器のパフォーマンスにも悪影響を及ぼし、効率の低下につながる可能性があります。開発されたPCMは、先進的なシールド材料として役立つ可能性があります。

この成果は、4 月 3 日に学術雑誌 Nano Research Energy に公開されています。

GSアライアンス、CNF複合樹脂フィラメントを3Dプリンター用に販売(2024 年 5 月 29 日)

GSアライアンスは、セルロースナノファイバー(CNF)複合生分解性樹脂フィラメントを3Dプリンター用に開発し、6 月 3 日から販売することを発表しました。

プレスリリース配信サービスの @Press で同日発表された内容によりますと、同社は CNF 複合ポリ乳酸製の  3D プリンター用フィラメントを開発し、販売を開始します。材質は、ポリ乳酸に CNF を複合化した素材となっており、CNF の濃度が高いときには、生分解性が通常の PLA より向上することも見出しています。

詳しくは@Pressの記事をご覧ください。
下記の写真は@Pressの記事より転載しました。

 

ベトナムで製紙スラッジからナノセルロースを作る研究が注目(2024 年 5 月 19 日)

5 月 16 日にベトナムで行われた VnEpress(現地新聞社)主催の 2024 年科学イノベーションコンテストで、国立ホーチミン工科大学のグエン・ディン・クアン准教授のグループによる、製紙スラッジからバクテリアナノセルロース(BNC)を作る研究が最優秀賞を受賞しました。

製紙工場では毎日膨大な量の廃棄物と廃水が出ており、製紙スラッジの多くはボイラで焼却されています。製紙スラッジの 40~60 %は、製紙工程で洗い流されるセルロースパルプであることから、これを有効利用する研究を行いました。

研究グループは、製紙スラッジのスラリーに含まれるセルロースを、少量の酸で加水分解してグルコース溶液にし、その後アセトバクター・キシリナム属細菌の使って、BNC の膜(下写真)を作る方法を採用しました。BNC 膜は発酵後の混合物から簡単かつ簡単に除去できます。BNC はナノサイズのセルロース繊維が三次元網目状に織り込まれた構造をしており、、優れた機械的特性を有する生体材料です。

研究グループによれば、BNC 膜のバイオマス形成率は非常に大きく、このプロセスのコストは高くなく、製紙スラッジのセルロース変換効率は最大 70 %とのことです。

現在、研究グループはトゥアンアン製紙工場(ビンズオン)とコイグエン製紙工場(ビンフック)でラボレベルでこの技術をテストしています。

貴重な生物学的材料である BNC は、バイオプラスチック、繊維、ナノ濾過膜、人工皮革、防弾防具、紙製造の分野で広く使用されています。

 

静岡県、セルロース循環経済ビジネスモデルで実証事業(2024年5月17日)

静岡県は、CNF などのセルロース素材を使用した製品の製造、使用、回収、再生産(マテリアルリサイクル)を実証し、そのビジネスモデルを県内に普及させることを目的としたビジネス実証事業の企画提案を募集を行うことを、同日発表しました。

内容は、
・セルロース素材を使用した製品の製造、使用、回収、再生産(マテリアルリサイクル)を実施
・製品を実際に使用及び回収する実証フィールドを用意
・採算性・製品の付加価値向上、環境負荷の低減、製品の性能評価等を実施し成果報告
・製造、評価、使用、回収、再生産、再評価のマテリアルリサイクル
となっています。

委託契約上限額は 500 万円で、同日から 6 月 28 日まで募集されますが、参加表明の締め切りは 6 月 20 日です。

詳細は静岡県のホームページをご覧ください。

韓国 SK Leaveo、ベトナムにナノセルロース配合生分解性プラ工場着工(2024 年 5 月 16 日)

韓国の大手化学企業 SKC の子会社で、化学素材事業への投資を行う SK Leaveo (SKリビオ)は、ベトナム北部のハイフォン市にあるディンブー工業団地で、生分解性プラスチックの一種である PBAT(ポリブチレンアジペートテレフタレート)の生産工場を着工しました。

5 月 15 日に韓国、ベトナムなどの複数のメディアが伝えたところによりますと、この工場では木から抽出したナノセルロースを充填した独自の高強度 PBAT を製造します。延床面積 22,389 m2 で、単一工場としては世界最大の年間 7 万トン生産能力があります。5 月 11 日に現地で着工式が開催され、量産開始は 2025 年 7~9 月となります。投資額は、1 億USDとのことです。

親会社である SKC は、2020 年に韓国化学研究院からナノセルロースを配合した高強度PBAT製造技術の移転を受けており、それ以降、これに関する技術開発を行ってきました。

SKC は、高強度 PBAT 素材事業のため、韓国の大手総合食品メーカーの Daesang(大象)と総合商社の LX インターナショナルと合弁で、2022 年に Ecovance を設立しましたが、2024 年 4 に社名を SK Leaveo へと変更し、5月に SKC は LX インターナショナルが保有する SK Leaveo の持ち分を買い入れ、持ち分比率を 57.8 %から 77.8 %へと高めています。

また SK Leaveoは、ベトナム最大のプラスチックメーカー An Phat(アンポット)と提携し、アンファントは SK Leaveo のベトナム法人の持ち分を保有すると同時に、PBAT の長期購入契約も結ぶことで、関連製品を製造し、ベトナム国外への輸出を進める計画になっているそうです。

詳細はSKCのプレスリリースをご覧ください。

王子、CNF/天然ゴム複合材の量産試作設備を導入(2024 年 5 月 13 日)

王子ホールディングスは、セルロースナノファイバー(CNF)と天然ゴムとの複合材の量産試作設備を導入したことを発表しました。

同日付のプレスリリースによりますと、同社では 2022 年に CNF と天然ゴムとの複合材を開発し、サンプル提供を行ってきましたが、このほど同社の CNF 創造センター内に、年間生産能力 100 トンのマスターバッチ製造設備を導入したそうです。

詳細は同社のプレスリリースをご覧ください。

大王製紙、CNF複合樹脂の商用プラント設置へ(2024 年 5 月 8 日)

大王製紙はセルロースナノファイバー(CNF)複合樹脂の商用プラントを、基幹工場である三島工場(愛媛県四国中央市)に設置し、2005 年度以降に年産 2,000 トンの生産を目指すことを、同日、ニュースリリースで発表しました。

同社では CNF 複合樹脂 の技術開発を行っており、2022 年 10 月には CNF  複合樹脂中のセルロース比率を 55 % から 67 %に高めた ELLEX-R67 を開発し、11 月からサンプル供給を行っていました。
そしてこのほど、約 40 億円の設備投資を行い、年産 2,000 トンの生産能力を持つ ELLEX-R67 の商用プラントを建設し、2025 年度中の営業運転開始を目指すことになりました。

CNF複合樹脂の製造プロセス開発には、2020 ~ 2022 年度に実施した NEDO 助成事業の成果が生かされています。CNF 前処理プロセスでは、大王製紙がこれまで培ってきた抄紙技術を駆使した尿素によるカルバメート化セルロースの量産技術を確立し、複合樹脂の生産性改善では、芝浦機械と共同で高効率な CNF と樹脂の複合化技術を開発しています。

CNF 複合樹脂は、CNF の軽くて強い特長を活かし、自動車部材、家電製品、建材、日用品、容器・包装等の分野への用途展開が期待されています。ELLEX-R67 は、品質とコストの観点から解繊度について検討を深め、部分的に CNF 化したセルロースを 67 %含む高濃度ペレットであり、樹脂材料設計の自由度が高く、ユーザーが混練・成形加工しやすい仕様です。また、CNF が植物由来であることや繊維が破断しにくいことから、減プラスチックやマテリアルリサイクルも期待できる素材です。

詳しくは同社のニュースリリースをご覧ください。

スペインPolybion、バクテリアナノセルロースの生地を世界販売(2024 年 5 月 8 日)

果物廃棄物を原料にバクテリアナノセルロース(BNC)を製造するスペインの企業 Polybion は、メキシコ中部の製造施設が順調に稼働したことから、同社の BNC であるプレミアム培養セルロース Celium® を世界販売することを、5 月 7 日に発表しました。

Celium® は、農業残渣のひとつである果物廃棄物をバクテリアに与えることで、製造します。この材料は、デザイナーや材料エンジニアに持続可能なアプローチと先進的な美学を提供します。既存のインフラを使用してクロムフリー配合で染色、エンボス加工、なめしを行うことができるため、従来の生地よりも環境への悪影響を軽減できます。
またCelium® には独自の特性を備えており、革のような感触を提供し、ファッション、スポーツウェア、自動車内装材などに使用することができます。

Celium®は、 2024 年 5 月から一般向けに正式に発売されます。すでに市場に出回っている革の代替品と同様、革や別の形式のプラスチックの代替品として機能するだけでなく、まったく新しいカテゴリを作ることが予想されます。この材料の可能性を探求できるようにするため、Celium® Swatch Sampler が導入されます。これはこの素材の多用途性を示し、さまざまな可能性を示しています。BNCでのみ実現できる鮮やかな大理石模様から、時代を超えたクラシックな色調まで、この素材がさまざまな用途に適応できることが証明されています。

下の写真は PR Newswire に掲載されたプレスリリースから転載しました。

 

 

詳細はPR Newswire のプレスリリースをご覧ください。