ナノセルロースニュース2021年8月

ナノセルロースからプラスチック代替材料がジェームスダイソン賞受賞(2021年8月27日)

James Dyson Foundation(ジェームスダイソン財団)は今年のJames Dyson Award(ジェームスダイソン賞)の国内最優秀賞の一つに、イリノイ大学が開発したバクテリアナノセルロース由来のプラスチック代替材料であるPYRUSを選んだことを、発表しました。

James Dyson Foundationのウェブサイトおよびイリノイ大学のプレスリリースによると、PYRUSはコンブチャで使われる菌を使って腐った果物やパンなどの食品廃棄物から作られたバクテリアナノセルロースのゲルが原料です。

ナノセルロースのゲルの濃度を調整し、これを藻類ベースのゲルに埋め込んでゲルを乾燥させると、ゲルは非常に固くなり、機械プレスによってシートに加工することが可能です。この材料には耐水性があり、着色することも可能です。ジュエリーやその他の小さな製品を作り、販売する計画とのことです。

記事とプレスリリースだけからでは、PYRUSの詳しい内容はわかりませんが、藻類ベースのゲルに埋め込むという点が、従来のものと異なるようです。

詳しくはJames Dyson Foundationのウェブサイトをご覧ください。

GEAが新しいホモジナイザーを発表(2021年8月26日)

GEAはArieteシリーズのホモジナイザーとラボ用ホモジナイザーの新製品を発売したことを、8月26日付のプレスリリースで発表しました。

GEA Ariete Homogenizer 3160は、中~大型機種のすき間を埋めるもので、200〜1500barの圧力をかけることができます。また300以上のオプションを使用してカスタマイズできるため、あらゆる滅菌・無菌プロセスラインに簡単に統合できます。利用可能な原料の範囲が広く、研磨剤や粘性のある原料にも、最高のパフォーマンスを発揮します。

特許取得済みの均質化バルブNanoVALVEや凝縮水とオイルを測定するためのOilPure SystemなどのGEAのオプションを追加すると、電力、水、潤滑油の消費量が削減され、生産コストをさらに節約できます。

GEATriplexPandaラボホモジナイザーは、幅広い用途向けのエマルジョン、分散液、ナノ粒子の処理用の3ピストン卓上型ホモジナイザーです。高品質で高性能な超二相ステンレス鋼に加えて、特殊で耐摩耗性の高い材料を使っているため、ざざまな材料に対応できます。

この特別な設計により、製品開発および1時間あたり1~100Lの少量バッチ生産に最適です。GEA TriplexPandaは、粘着性または高粘度のエマルジョン、マイクロファイバーおよびナノファイバーを使用した調製などの困難な製品を処理することもできます。これにより、植物ベースの代替乳製品、食品成分、ナノセルロースの製造などの高度なアプリケーションにも対応します。

これらの製品は、イタリアのパルマにあるGEAプロセステクノロジーセンターでは、購入前にテストをすることが可能で、そのプロセスはビデオ会議システムを通じて、リアルタイムで見ることができます。またGEAの専門家のアドバイスを受けることもできるとのことです。

詳しい内容は、同社のニュースリリースをご覧ください。

ナノセルロースから生物活性物質を保護できる食品添加物を開発へ(2021年8月24日)

メイン大学は研究成果の産業化を支援する2021MIRTAアクセラレータプログラムのテーマとして、食品添加物として添加される物質の寿命と、食品保存期間を延ばすために、ナノセルロースから生物活性物質を保護できる繊維ベースの食品添加物を作る研究を含む複数のテーマを選びました。

8月23日に同大学のプレスリリースにあたるUMaine Newsに掲載された内容によりますと、それはDr. Suriya Prakaash Lakshmi Balasubramaniamをリーダーとする研究チームで、プロジェクト名はNature Nanoです。

もともとはナノセルロースを使った生分解性、抗酸化性、および抗菌性を有するフィルムの開発と商品化を目指してMIRTAに参加しましたが、スケールアップとコストが課題となって方針転換し、今回の課題に変更したそうです。

ナノセルロースを使った食品包装フィルムは、5年以上からさまざまな企業、大学、研究機関が開発に取り組んでいますが、実用化したものはありません。メイン大学での研究テーマ変更は、技術的に成功しても、コスト面で製品化が難しいことを示しています。

詳しい内容はUMaine Newsをご覧ください。

バクテリアナノセルロースを使った生分解性のおむつと包帯(2021年8月19日)

カリフォルニア大学デービス校(UC Davis)のUC Davis Magagine に8月18日付で掲載された記事によると、同校デザイン部門では、生物学とデザインを融合させたバイオデザインの研究に取り組んでいます。バイオデザインとは、デザインにおける生物の使用で、ファッション、テキスタイル、家具、建築において適用され、すでに社会実装が始まっています。

化石燃料由来のプラスチックから作られた製品は、使用後、すべて埋め立て地へ向かいますが、永遠に分解されることはありません。バイオデザインはそれを変えようとしています。

研究室では、すでにいくつかの製品を開発しています。Sorbit Diaper(ソルビットおむつ)は、バイオベースの材料のみで作られた完全に堆肥化可能なおむつです。原料は、

  • バクテリアセルロースシート … オレンジ果汁、レモン果汁と砂糖を原料にバクテリアと酵母によって育てられた。
  • バクテリアセルロースエアロゲル … 吸収層として使われ、化石燃料由来する成分であるポリアクリル酸より32%吸収性が高かった
  • コーンゼイン(とうもろこし由来のたんぱく質)

です。

また別の研究チームが作ったBio Bandage(バイオ包帯)は、包帯の吸収層が細菌性セルロースエアロゲルで、さらにバイオベースの接着剤の成分が使われることでより効果的に皮膚に付着するようになっています。

詳しい内容はUC Davis Magagineの記事をご覧ください。

ナノセルロースからアトランティックサーモン養殖で使うワクチンを開発(2021年8月18日)

アトランティックサーモンの主な伝染病として、「伝染性サケ貧血ウイルス」と「ビブリオ症」があり、どちらも致死率が90%と高く、世界の養殖産業に毎年10億ドル以上の損失をもたらしている可能性があります。サケがこれらの伝染病にかかるのを防ぐために、すでにワクチンを接種していますが、現在のワクチンは、水と油をベースにしたアジュバントで作られているため、製造コストが高く、接種した場所に色素沈着が起きるなどの副作用があります。

そこで米国農務省の国立食品農業研究所は、ナノセルロースをアジュバントのベースとする、効果的、安全、持続可能、手頃な価格のワクチンの開発を目指して、メイン大学に 495,000ドル(=5,500万円)を授与しました。

ナノセルロースは生体適合性があるため、細胞に損傷を与える可能性はほとんどありません。ナノセルロースを含んだワクチンは、油性のものよりも製造コストが安くなる可能性があります。ナノセルロースは化学的性質を簡単に変えることができるため、従来の魚用ワクチンアジュバントに関連する望ましくない副作用なしに、ワクチンの有効性と寿命を延ばすことができると考えられています。

詳しい内容はメイン大学のブレスリリースサイトUMaine Newsをご覧ください。

バクテリアナノセルロースと細胞透過性ペプチドで肌の保水(2021年8月17日)

韓国の成均館大学、アメリカのイリノイ大学、Cosmocos Co. Ltd(韓国・仁川)は共同で “Fabrication of cell penetrating peptide-conjugated bacterial cellulose nanofibrils with remarkable skin adhesion and water retention performance” (優れた皮膚接着性と保水性を備えた細胞透過性ペプチド結合細菌性セルロースナノフィブリルの製造)という論文を発表しました。

その内容はバクテリアナノセルロースをTEMPO酸化したものに細胞透過性ペプチド(CPP)の一種であるBac7を結合させると、その物質は細胞膜との疎水性相互作用と静電相互作用の両方を示し、最終的には皮膚表面へのしっかりと密着するというものです。

Cosmocos Co. Ltdはこの研究成果を皮膚や頭皮の水分を効果的に維持するための製品開発に利用する予定で、すでに特許出願されています(出願番号10-2019-0050272)。

アメリカ議会、メイン大学のナノセルロース研究の費用を予算要求(2021年8月14日)

アメリカ上院の予算委員会は、メイン大学がオークリッジ国立研究所と共同で取り組むナノセルロースを原料として使った新素材である積層造形物の開発に、2,000万ドル(=22億円)の予算を付けていることが明らかとなった。

メイン州選出のSusan Collins上院議員(共和党)がウェブサイトのプレスリースで8月13日に公表したところによると、2022会計年度のエネルギーおよび水資金調達法案が賛成多数で可決され、その中にメイン大学やメイン州に関するものが多数含まれています。ナノセルロースに関連があるものは次の通りです。

  • 風力エネルギーの研究に2億400万ドル。この中に洋上風力発電の材料と製造方法に3,000万ドル、分散型風力発電に1,000万ドルが含まれています。
  • 大型タービンの開発。メイン大学のAquaVentusプロジェクトを含む洋上風力発電プロジェクトのための追加の1,000万ドルが含まれています。
  • ウィンドブレード。大型洋上風力発電ブレードの積層造形のための400万ドルが含まれています。
  • 高度な製造・バイオベースの複合材料。林産物から作られたナノセルロース原料を含む積層造形の開発への2,000万ドルが含まれています。

詳しくはSusan Collins上院議員のウェブサイトをご覧ください。

カナダ政府、カルボキシル化CNC生産設備建設に425万ドルを支援(2021年8月11日)

カナダ天然資源省とCanada Economic Development for Quebec Regions(CED)は、年間250トンのカルボキシル化セルロースナノクリスタル(CNC)を生産するための実証施設建設を支援するために、Anomera Inc. に総額425万ドル(=3億8千万円)の支援を行うことを8月10日付のニュースリリースで発表しました。

カルボキシル化CNCはパーソナルケアや化粧品向けのマイクロプラスチックビーズを置き換える目的で使用されます。この施設の稼働によって、常時20名の雇用が創出されます。

投資の内訳は、カナダ天然資源省が225万ドル、CEDが200万ドルです。カナダ天然資源省の資金は森林産業変革プログラムの一環として投資され、森林セクターが気候変動への取り組みと低炭素経済への移行を進めるための環境に優しいソリューションを提供するためのものです。一方、CEDの資金は貸付で、イノベーションによる地域経済成長プログラムの下で機器を購入するために使用されます。

詳細はカナダ政府のニュースリリースをご覧ください。

韓国経済新聞、ナノセルロースの研究開発を政府主導で行う必要性を訴える(2021年8月10日)

韓国の大手新聞である中央日報が日本語版は8月10日に、韓国経済新聞が掲載した、「木からつくる自動車」公開の日本…「政府主導なければ韓国は遅れる」という韓国語の記事を日本語訳して掲載しました。概要は次の通りです。
  • 京都大が代表事業者のコンソーシアムは2019年の東京モーターショーで、ナノセルロースを使ったNCVプロジェクトの成果として、木からつくる未来の自動車を公開した。現在は自動車の10%軽量化を目標に、骨組みを構成する材料としてナノセルロースを使う形で、研究開発を進化さている。
  • これに対して昨年発足したナノセルロース産業化戦略フォーラムの初代会長で、江原大学校山林環境科学大学の李承桓学長(日本では学部長に相当)は、次のように述べた。
    • 日本がナノセルロース複合素材の商用化を加速化している。
    • NCVは企業、学界、研究団体がすべて参加するが、主導するのは政府。
    • 日本は毎年、予算を企業と省庁に割り当てて技術開発を奨励しており、研究開発から産業化まで幅広く支援するのが特徴。
    • 企業と大学、研究機関だけでは限界があり、日本が政府主導でフォーラムを設立して産業活性化を進めているように、われわれも政府が動いて活発な情報交流と協力の場を設けるべきだ。
    • 2019年に日本の半導体・ディスプレー素材輸出規制で苦労したが、官民が協力して克服した。基礎技術の確保を急いで同じ歴史の反復を防がなければいけない。

記事の内容は、中央日報日本語版のウェブサイトでご覧になれます。

伊藤園と西光エンジニアリングがセルロースナノファイバーと麦茶繊維からパレット製造へ(2021年8月6日)

日刊工業新聞が8月5日と6日の報道した内容によると、静岡県藤枝市の西光エンジニアリングと伊藤園が共同でSI樹脂産業という企業を設立し、CNFと麦茶殻の繊維をポリプロピレンに混ぜ、軽量輸送用パレットの原料を製造するとのことです。

乾燥したCNFを伊藤園が提供し、西光エンジニアリングはCNF粉砕機を担当すると日刊工業新聞は報じていますが、CNFの原料、CNF乾燥品の製造方法などは、わかりません。詳しくは日刊工業新聞の記事をご確認ください。なお西光エンジニアリング、伊藤園とも自社のウェブサイトには、本件に関する発表は出していません。また他メディアからの後追い記事も出ていません。

最新モデルのスニーカーのソールにはセルロースナノファイバーは使用せず(2021年8月6日)

株式会社スピングルカンパニーは天然ラバーの長所である柔らかさ、しなやかさはそのままに、弾力性と耐摩耗性を向上させた新開発の「RUBEAR NR(ナチュラルラバー)ソール」を採用したスニーカーの第2弾を8月21日から発売すると、プレスリリースで発表しました。

「RUBEAR NR ソール」は、同社の新たなソールブランドである「RUBEAR /ルベア」の第2弾とのことですが、6月に発売された第1弾で採用されていた、CNFを添加した「RUBEAR CNFソール」ではなく、天然ゴム樹脂をそのまま時間をかけ固体化・成形して作られた天然ラバーソールが採用されています。

詳しい内容は同社のニュースリースでご確認ください。

セルロースナノクリスタルから形状記憶フォトニック熱可塑性プラスチックを製作(2021年8月3日)

形状記憶フォトニック結晶を使用して応答性材料を作ると、書き換え可能なフォトニックデバイス、セキュリティ機能デバイス、光学コーティングなどに応用できる可能性があります。ブリティッシュコロンビア大学では、キラルネマチックなセルロースナノ結晶(CNC)をポリアクリレートマトリックスに埋め込むことにより、形状記憶フォトニック熱可塑性プラスチックを製作しました。

このプラスチックはさまざまな色の状態を、可逆的に捕捉できます。このシステムでは、温度を変えることで、形状記憶応答をプログラムし、圧力を使ってCNCキラルネマチック組織のらせんピッチを変化させます。圧力が増えると、色は赤色から青色に変化します。またこのプラスチックをガラス転移温度以上に加熱すると、元の状態に戻すことができます。

このサイクルは、形状記憶挙動の損失やサンプルの機械的劣化なしに15回以上実行できます。さらにパターン化された基板を使用してサンプルをプレスすることにより、多色読み出しをキラルネマチック熱可塑性プラスチックにプログラムでき、このプラスチックのガラス転移温度は、使用するモノマーによって変えることができます。

この内容は7月30日に公開された下記の論文誌に掲載されています。

Boott, C. E., et. al., Shape-Memory Photonic Thermoplastics from Cellulose Nanocrystals. Adv. Funct. Mater. 2021, 2103268.

https://doi.org/10.1002/adfm.202103268