ナノセルロースニュース2020年10月

目次

原子力機構、セルロースナノファイバーを使った高強度ハイドロゲル開発(2020.10.31)

カルボキシメチルセルロースナノファイバー(CM-CNF)の水溶液を-20℃で凍結させ、そこへクエン酸を混ぜて、-4℃で溶かすことで、高い強度と成型性を持つハイドロゲルを作成できることを、日本原子力研究開発機構(原子力機構)が同日付のプレスリリースで公表しました。

このゲル材料は2tの圧縮負荷にも耐える強度を持ち、またさまざまな三次元形状に成型できる高い成型性を示すとともに、色素を吸着する性能があることもわかりました。

CM-CNFは分子中に反応性が高いカルボキシル基を持つため、他の物質と反応させてゲルやフィルムを作製することができます。同じくカルボキシル基を持つクエン酸と混ぜ合わせると、水素結合を介してゲルを形成します。しかし室温では、水中で混ざり合ったCM-CNFとクエン酸が反応すると、不均一な構造を形成するため、持ち上げただけでも壊れてしまうほど強度が弱いといった問題がありました。

本研究では、水の凍結時に生じる物質の凝集挙動に着目しました。例えば、砂糖や食塩などの不揮発性物質を含んだ水を冷やすと、0℃でも凍結しないという現象(凝固点降下現象)が見られます。これは氷晶の周りに超濃厚に凝縮した砂糖水が、氷の成長を阻害するために見られる現象です。本研究では、このような凍結時に出現する凝縮構造を利用することで、ゲルのミクロ構造の制御が可能と考えました。CM-CNFを水に分散させた水溶液を凍結させると、一見すると普通の氷ができますが、内部では氷結晶の周りにCM-CNFの凝集体が形成されています。この凝集体は氷が存在している状態でクエン酸と反応します。形成したCMCナノファイバー-クエン酸凝集体は氷が溶けた後もそのまま残り、強固なゲル骨格としてゲルの強度向上に寄与します。

この研究は原子力機構、東京都立産業技術研究センター、東京大学の共同研究によるもので、詳細はACS Applied Polymer Materialsのオンライン公開版に、本日公開されました。

詳細は原子力機構のプレスリリースをご覧ください。

丸富製紙、セルロースナノファイバーを使った超ロングトイレットペーパーを販売開始(2020.10.30)

丸富製紙株式会社は、セルロースナノファイバー(CNF)を活用し、芯孔強度を従来比で20~35%アップした超ロング巻きトイレットペーパーの販売を開始したことを、10月29日付のプレスリリースで発表しました。

商品名は「ペンギン芯なし超ロング5倍巻き」です。一般的な芯なしトイレットペーパーの製法では、鉄の棒に紙を巻き付け、水を吹いて芯孔を固めますが、同社ではCNFを混ぜ合わせた水を使用することで、芯孔強度を約20%増加させ、芯なしトイレットペーパーの弱点である、輸送中の芯孔のつぶれや歪みやすさを改善させています。この技術は、特許を出願中です。

詳しくは同社のホームページをご覧ください。

ブラジルでセルロースナノファイバーから創傷被覆材を製造する研究(2020.10.27)

火傷などの治療に使用する創傷被覆材は、バクテリアナノセルロースから製造したものが市販されています。これを低コスト化するための研究に、ブラジルのパラナ連邦大学(UFPR)の学生が取り組んでいることが、ブラジルのEcoaの活動を紹介するウェブサイトに掲載されています(10月12日付)。Ecoa(EcologiaeAção)は環境保全と持続可能性のための研究者が討論するための非政府組織です。

ブラジルで火災事故にあう人は年間100万人います。1980年から人工皮膚として使用されている、バクテリアナノセルロース(BNC)から作られる創傷被覆材は、1kgあたり250ドル(1380レアル)であるのに対し、マツのパルプから作られるセルロースナノファイバー(CNF)を原料にしたものは、1kgあたり2ドル(11レアル)で作ることができます。マツから作られたものの物理的性質は、BNC由来のものと同じであることを、実験的に証明しています。また将来は、マツから作られる創傷被覆材の製造コストを、1/10まで下げることができるとのことです。

この成果は、BRICSサミットの一部であったBRICSヤングサイエンティストフォーラムにノミネートされ、9月末に発表されたとのことです。また4年以内に販売が見込まれるとのことです。

詳しくは記事(ポルトガル語)をご覧ください。

ナノセルロースを保湿・遮音のための材料として使用するデザイナー(2020.10.24)

北ヨーロッパ最大のデザインイベント、Dutch Design Weekがウクライナのキエフで10月17日~25日に開催されています。ここでは37人の応募者から3つのチームが選ばれましたが、その中の一つが、Nano Retentionプロジェクトです。ウクライナのデザイナーが考案したこのプロジェクトでは、バクテリアナノセルロース(BNC)とコケを使って、外壁材を作っています。BNCには吸水性があり、体積の20倍の水を吸うことができるので、激しい雨の後、水を一時的にためることができます。一方、保水性があるので、干ばつの際にもコケが枯れることがありません。さらにコケは光合成により空気を浄化し、さらに遮音性もあります。このようなBNCとコケでできた材料をコンクリートや金属の代わりに、外壁材として使うというコンセプトで、ナノセルロースの用途としては、極めて斬新です。

詳しい内容は、Dutch Design Weekのウェブサイトをご覧ください。

セルロースナノファイバーから作ったカードの製造・販売を研美社が開始(2020.10.23)

セルロースナノファイバーから作られたバルカナイズドファイバーを使ったオリジナルカードの製造・販売を、株式会社研美社が本日より開始しました。IDカードなどにはプラスチックカードが使われていますが、石油由来のプラスチックを、植物由来のセルロースナノファイバーに置き換えたものです。

企業PRのポータルサイト、Dream Newsに10月22日付で掲載された記事によると、株式会社研美社はもともとプラスチックカードと関連製品、プラスチック製下敷きの製造販売を行う企業ですが、脱プラスチックの社会的ニーズにこたえるべく、バルカナイズドファイバーを使ったオリジナルカードの印刷・製造サービスを開始したとのことです。バルカナイズドファイバーにはプラスチックとは違って、優れた生分解性があります。カードサイズは85.6×54mm、カード厚さは0.8mm、印刷方法はUVインクジェット印刷です。

詳細は、株式会社研美社にお問合せください。

資生堂が新しい化粧品の処方にセルロースナノファイバーを採用(2020.10.20)

資生堂は、使用前に加熱するように設計された新しいカラー化粧品の処方の特許を申請し、その中でセルロースナノファイバー(CNF)が高温安定性ポリマーとして使われていることが、Cosmetics Design Asiaに9月28日に掲載された記事で明らかになりました。

それによると、カラー化粧品は、常温よりも温めた方が、効果が高いことがわかっていましたが、従来の化粧品では、温度が上がると粘度が低下し、液だれや分離などの安定性に問題があるため、加熱することができませんでした。このほど公開された資生堂の国際特許によると、疎水性修飾ポリエーテルウレタン、CNFと水を使用した処方を開発したとのことです。疎水性修飾ポリエーテルウレタンは、増粘剤として機能する温度応答性コポリマーであり、CNFは加熱によっても構造変化を受けず、加熱後に分離することなく安定性を維持する高温安定性ポリマーです。これらを配合することで、加熱による変化を与えながら、高温安定性を確保することができます。またこの処方はオイル、パウダー、ワックスなど、通常化粧品にブレンドされる成分と混合することもできるそうです。

この化粧品を使用するためには、同社が開発した専用の加熱装置でウォームアップする必要があります。この装置にはペルチェ素子を備えた加熱ユニット、スプレー、プローブ、およびフォーミュラ用のタンクが取り付けられています。

詳しくはCosmetics Design Asiaの記事をお読みください。

中国でナノセルロースの需要増?少なくとも14社が製造・販売(2020.10.19)

中国では少なくとも14社がセルロースナノファイバー、セルロースナノクリスタル、バクテリアナノセルロースの製造・販売を行っていることが、ナノセルロース・ドットコムの調査でわかりました。

日本と比べて、次のような特徴があります。

  1. 1社で複数の種類のナノセルロースを扱っています。日本の企業の大半は、セルロースナノファイバー(CNF)のみを扱っていますが、中国の企業の多くは、CNF、セルロースナノクリスタル(CNC)、バクテリアナノセルロース(BNC)のほか、セルロースミクロフィブリル(CMF)やセルロースフィラメント(CF)を扱っているところもあります。顧客のニーズに合わせて、適切なナノセルロースを提供することができます。
  2. ナノマテリアルや機能性化学品を扱っている企業が製造・販売しています。日本の場合は、製紙メーカー、機械メーカー、化学メーカーがナノセルロースを製造・販売していますが、中国ではカーボンナノチューブやグラフェンなどのナノマテリアルや、各種セルロースなどの機能性化学品を扱っている企業が、ナノセルロースの製造・販売をしています。日本ではナノセルロースvs他のナノ材料という関係がありますが、中国の場合は、それぞれの長所を活かして融合する、という傾向があるようです。
  3. 価格を明記して販売しています。日本のメーカーで価格を公表しているケースは少ないですが、中国の場合、価格、スペックとも基本的に公表されています。

なお、これらの14社を含めて、外国の41社がナノセルロースを製造・販売しています。ナノセルロース・ドットコムの海外企業に概要を掲載しています。

セルロスナノファイバー摂取に伴う危険性の研究にや欧州食品安全機関が着手(2020.10.16)

欧州食品安全機関(EFSA)は、セルロースナノファイバー(CNF)の危険性評価のための新しいアプローチ方法論の研究について、研究公募を行っています。法律に関する情報を集めたウェブサイト、The National Law Reviewに9月19日付で掲載された記事によりますと、近年、セルロースをナノスケールで使用するケースが増えていることから、食品を介して消費者が暴露されるCNFについて有害危険性の評価を行い、何らかの規制を行うことが目的です。現在、この部分に関するデータはありません。研究では、①腸内細菌叢によるCNFの消化・分解、②腸上皮細胞におけるCNFの取り込み、③消化管上皮における炎症を含む局所作用、の3つについて、評価を行います。動物実験を使用した評価は対象外となります。提案の締切は11月3日です。

詳細は、EFSAの公募ページをご確認ください。

バクテリアナノセルロースを使ったウエラブルセンサーを米国海軍が試作(2020.10.16)

米国海軍研究所はナノセルロースを使った皮膚に装着するタイプのセンサーの研究を行っており、心拍数と体温のセンサーのプロトタイプをすでに製作しているとのことです。

国防総省の技術移転のための仲介機関、TechLinkのウェブサイトに10月7日に掲載されました。この記事には、バクテリアナノセルロースを使用することのメリットが記載されていますので、整理してお知らせします。

  1. 銅、ニッケル、銀、金、パラジウム、プラチナなど、さまざまな金属が使用できるため、いろいろな種類のセンサーを作ることができる。
  2. ナノセルロースには多孔性があるため、汗や血液などの生物学的分析物を、センサーの一方の側からもう一方の側に吸い上げて分析できる。
  3. 厚さが20µm未満、超軽量で、ほとんど透明。
  4. ナノセルロースの基板には、親水性、生体適合性、多孔性、水素結合性があるため、人の皮膚に直接貼りつけても、かゆみを生じず、誤って洗い流されることはがない。

このバイオセンサーには、ヘルスケア、環境センシング、スマートホーム、スマートリテールなど、さまざまな用途が想定されています。
米国海軍研究所は、このほど関連特許20件を申請しましたが、民間への技術ライセンスも検討されています。

詳細はTechLinkの記事をご覧ください。

ナノセルロースを用いたクーラントをマレーシア・パハン大学が試作(2020.10.15)

ナノセルロースを用いたクーラント(冷却剤)をマレーシア・パハン大学(UMP)が試作しました。大学が最新の教育ニュースを公開するためのプラットフォームであるQS WOW NEWSに10月10日に掲載された記事によると、マレーシアパハン大学(Universiti Malaysia Pahang)の研究グループは、ナノセルロースを入れたクーラントの試作品を製作したとのことです。

ナノセルロースをクーラントに添加することで、伝熱性が向上し、ラジエーターの冷却速度を上げることができるとのことです。また石油由来の物質の使用を減らすことができます。このサイトには概要しか記載してありませんが、研究論文が出ていますので、詳しい内容は論文をご覧ください。

Ihsan Naiman Ibrahim et.al., Effect of Impregnate Nanocellulose With Ethylene Glycol forCar Radiator Application, Journal Advanced Research in Fluid Mechanics and Thermal Sciences,  58(1) 43-50 (2019)

マハトマガンジー大学がナノセルロースの研究施設を拡充(2020.10.14)

マハトマガンジー大学(MGU)は、研究成果を実用化する加速するためのインキュベーション施設を10月27日から運用するとのことです。ヒンズー教徒の新聞、The Hinduの電子版に10月12日に掲載された記事によりますと、このうち、ナノテクノロジーインキュベーターには、ナノセルロース研究のための施設、マイクロセルロースを生産するためのパイロットプラントができます。さらに栄養補助食品や栄養補助食品の分野で、ナノセルロースで修飾された付加価値製品を開発するための施設もあるとのことです。

セルロースナノファイバーは細胞毒性を誘導するため化粧品への使用には濃度設定が必要か(2020.10.9)

セルロースナノファイバー(CNF)には強い親水性と増粘性があるため化粧品に使われますが、アスペクト比が高く繊維状であるため、安全性に懸念があります。韓国の研究者がJournal of Toxicology and Risk Assessmentで発表した研究成果によりますと、ヒト表皮角化細胞(HaCaT細胞)に対しては156µg/ml以上で、ヒト皮膚線維芽細胞(HDF-α細胞)に対しては313µg/ml以上で、有意に細胞毒性を誘導しました。一方、3D表皮モデルを用いた皮膚刺激性、および3D再構成ヒト角膜モデルを用いた眼刺激性の実験では、いずれも非刺激性に分類されました。この論文では、CNFを化粧品に使う場合には、適切な濃度設定が必要であると結論付けています。

参照:Kim SM, Ji Gwak E, Jeong SH, Lee SM, Sim WJ, et al. (2019) Toxicity Evaluation of Cellulose Nanofibers (Cnfs) for Cosmetic Industry Application. J Toxicol Risk Assess 5:029. doi.org/10.23937/2572-4061.1510029

バクテリアナノセルロースを使った男性用フェイスパックをシンクリンクが発売(2020.10.8)

バクテリアナノセルロース(BNC)を使ったメンズフェイスパックを、シンクリンク株式会社が本日から発売することが、企業のニュースリリースを掲載するウェブサイト@Pressに掲載されました。

従来のコットンではなく、BNCを使うことで、肌への密着度をアップし、付け心地がよくなるとのことです。BNCはココナッツ果汁から作られており、径は20nm。吸水性・弾力性・肌への親和性に優れ、化粧品パックとして理想的な保湿力と密着力を持つと記載されています。製品名は、oneMEETsメンズフェイスパックで、価格は1枚770円です。

セルロースナノファイバーを使ったネイルチップをGSアライアンスが発売(2020.10.7)

セルロースナノファイバー(CNF)を使った天然バイオマス系生分解性樹脂によるネイルチップを、GSアライアンス会社が10月12日に発売することが、企業のニュースリリースを掲載するウェブサイト@Pressに掲載されました。

ネイルチップは100%土に還る、自然由来の素材でできており、繰り返し使えるだけでなく、10年ほどで分解されます。CNFを使っているため、酸素や水蒸気が通りやすい多孔質構造になっており、爪が呼吸しやすいのが特徴です。色は半透明なので、ネイルカラーを塗れば何度でも使え、色持ちも持続します。価格は4枚入り400円で、10月12日から楽天市場で発売されるとのことです。

令和3年度経済産業省概算要求の概要が公開(2020.10.6)

令和3年度経済産業省概算要求の概要が、9月30日に経済産業省のホームページで公開されました。ナノセルロース関係では、エネルギー対策特別会計に対し、「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発事業」として6.6億円の概算要求がされています。これは革新的なCNF製造プロセス技術の開発とCNF利用技術の開発によって、令和12年の時点で年間373万トンのCO2の削減を目指すものです。製造プロセスの開発と量産効果が期待されるCNF利用技術の開発は補助事業、有害性評価手法の開発と安全性評価は委託事業となっており、いずれも新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を通じて実施されます。なおこの事業は今年度から令和6年度までの事業となっています。

詳しくは経済産業省ホームページに掲載されたPR資料をご覧ください。

Nanolloseがナノセルースを用いた高度ろ過技術を保有するCelluAirに出資(2020.10.3)

バクテリアナノセルロースの用途開発を進めるNanollose Limitedは、ナノセルロースを用いた高度ろ過技術を保有するCelluAir Pty Ltdの株式の20%を取得するため、20万ドルの投資を行ったと発表したことが、オーストラリアの工業系情報サイトPACEに9月30日に掲載されたニュースで判明しました。

CelluAir Pty Ltdはクイーンズランド工科大学で開発された高度ろ過技術の商業化を進めている企業です。この技術は2020年7月に特許出願されました。Nanolloseは、CelluAirに投資することで、高成長の個人用保護具市場に参入できる可能性があり、その中でフェイスマスクセクターだけでも2020年に110億米ドルの市場があり、今後の成長も期待されています。

詳しくはPACEの記事をご覧ください。

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