セルロースナノファイバーの特性とそれを生かした国内の製品化事例

日本国内では20社以上がセルロースナノファイバー、あるいはセルロースナノファイバーを含んだ樹脂を生産しています。これらを用いた製品も数多く市販されており、バクテリアナノセルロースを除くと、その数は世界で一番多いと思われます。ここでは、日本で市販されているセルロースナノファイバーを用いた製品を、セルロースナノファイバーの特性別に紹介します。

(1) 親水性・保水性、増粘安定性、保形性

日本で最初に市販されたセルロースナノファイバーは、現在はダイセルファインケムから販売されている微小繊維状セルロース「セリッシュTM」(商品名)です。これは食品添加物のうち既存添加物としてリストに載っている唯一のセルロースナノファイバーで、シュークリーム、サンドイッチの卵フィリング、辛子明太子の保水性・保形性向上や、バッター液の増粘性向上に広く使用されています。食品添加物名としては「セルロース」と表示することもできますが、まぎれもなく植物を解繊して得られたセルロースナノファイバーです。

近年、日本製紙がカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを食品への粘性、保水性、保形性の付与、化粧品の増粘性、分散安定性の付与を目的に販売しており、これが入った和菓子や化粧水、乳液が市販されています。

(2) 紙の強度向上

スピーカーの振動板は重低音を出すために強度が必要で、セルロースナノファイバーは高価格帯のスピーカー、ヘッドフォンの振動板に使用されています。また使い捨てトイレクリーナーシート(大王製紙)ですでに使われているほか、芯なしトイレットペーパー(丸富製紙)への適用も検討されています。海外では段ボールの強度向上と軽量化のために、使用が検討されています。

(3) ゴムの強度向上

セルロースナノファイバーをタイヤのゴムの周方向に配列することで、周方向(回転方向)は固く、安定性・耐摩耗性を実現する一方で、径方向(垂直方向)は柔らかく乗り心地がよいという特性が得られます。このタイヤは、住友ゴム工業からダンロップエナセーブ NEXTⅢという商品名で2019年11月から販売されています。

(4) チキソ性

インクにセルロースナノファイバーを添加したゲルインクボールペンが三菱鉛筆から市販されています。これは筆圧がかかったときにインクの流動性が上がり、筆圧が下がったときにインクの流動性が下がることで、滑らかな書き味を実現したものです。また生コンクリートをポンプで圧送する際に用いる先行剤も、セルロースナノファイバーのチキソ性を活用した製品です。

(5) 分散安定性

漆喰は水酸化カルシウム(消石灰)に植物由来の素材を混ぜて練り上げたものですが、施工後、乾燥するときに、水酸化カルシウムの粒子が凝集することで、ひび割れが生じることがありました。漆喰にセルロースナノファイバーを入れることで、水酸化カルシウムの分散安定性が向上し、ひび割れを防ぐことができるようになりました。

(6) 比表面積が大きく官能基が多数

径が小さいセルロースナノファイバーは比表面積が大きく、表面に多数の官能基があります。この性質を利用して、セルロースナノファイバーを化学物質を結合するための担体として利用することが考えられますが、世界で初めてこれを製品化したのが、日本製紙クレシアの紙おむつです。多数のAgイオンをセルロースナノファイバーに担持させ、これを紙おむつに使用することで、有機物の分解を抑え、消臭効果を高めることができたとのことです。

(7) 軽量・高強度

セルロースナノファイバーをフィラーとして加えた樹脂は、従来のものより軽量・高強度になります。星光PMCはセルロースナノファイバーを加えた強化樹脂を生産しているが、これがアシックスのランニングシューズのミッドソール(靴底の中心部分)に採用されています。

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