熱伝導率は低いのか、高いのか、断熱性はあるのか

ナノセルロースの熱伝導率は低いのか高いのか、どちらでしょうか。木質繊維を固めて板状にしたファイバーボードは断熱材としても使われていますので、セルロースは熱伝導率が低いと思われがちです。環境省では、セルロースナノファイバーを利用した住宅部品高断熱化によるCO2 削減プロジェクトを進めており、そこでは既存断熱素材をセルロースナノファイバーの活用により高断熱化すると言っています。

実はナノセルロースは熱伝導率が高い材料なのです。まずナノセルロースの熱伝導率の測定値を見てみましょう。ホヤのセルロースから得られたセルロースナノファイバーで薄膜を作り、それを積層してシート状にし、シートの面方向と断面方向の熱伝導率を測定した結果が、論文として報告されています1)。それによると、面方向、すなわちセルロースナノファイバーの繊維が並んでいる方向の熱伝導率が2.5W / mKであったのに対し、積層した断面方向の熱伝導率は0.3W / mKでした。

ナノセルロースは低熱膨張であるため、プリント基板の材料として有望視されています。ナノセルロースがプリント基板に適しているもう一つの理由が、熱伝導性の高さなのです。電子機器の小型化、高密度化、高周波化により、機器内部の発熱密度が上がり、放熱が必要となっていますが、現在プリント基板の材料として使われている物質は熱伝導性が必ずしも高くなく(下表)、放熱性のよい金属ベースの基盤が使われています。一方で金属ベース基板は多層化に適していません。コストが合えば、熱伝導性に優れたナノセルロースが基板材料として使われる可能性は大いにあります。

材料名 熱伝導率(W / mK) 材料名 熱伝導率(W / mK)
ガラス布 1.0 エポキシ樹脂 0.2
FR-4(Flame Retardant Type 4) 0.2~0.3 ポリイミド樹脂 0.28~0.34

株式会社KRIでは、セルロースナノファイバーに製膜性があり、熱伝導率が高いことに注目して、熱伝導率が高い絶縁性の放熱シートを開発しています。セルロースナノファイバー(熱伝導率2W / mK)に窒化ホウ素を複合化して作った膜の熱伝導率は5~6W / m Kと、汎用プラスチックの10倍以上で、折り曲げることも可能です。

木質繊維やセルロース繊維を固めて作ったボードの熱伝導性が低いのは、空気層を含んでいるからであり、セルロースそのものの熱伝導性が低いからではありません。環境省のプロジェクトでも、発泡断熱材にセルロースナノファイバーを添加して、空隙の微細化等の空気層を制御することにより、熱伝導率を下げるとのことで、セルロースナノファイバーの熱伝導性とは関係ないようです。

さらにセルロースナノファイバーの多孔質体であるナノセルロースエアロゲルも、空隙がひじょうに多いため。熱伝導度は0.02W / m Kで、空気と同等かそれ以下となっています。

1) Kojiro Uetani, Takumi Okada and Hideko T. Oyama, Crystallite Size Effect on Thermal Conductive Properties of Nonwoven Nanocellulose Sheets, Biomacromolecules, 16 (7) 2220-2227 (2015)

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